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改正入管法が成立

2018-12-30

私は、平成30年10月26日に召集された臨時国会で、衆議院法務委員長に選任された。
実は平成28年の通常国会でも同じく法務委員長を務めているので、2年振り、2回目の登板となる。これは、異例のことだ。
今回の臨時国会では、新たに、即戦力となる外国人材を受け入れることを内容とする改正入管法が法務委員会で審議されることとなっており、マスコミなど世間の関心も高く、臨時国会の会期(12月10日まで)内成立を危ぶむ声もあった。
私は、この法案の審理の責任者として汗をかくこととなったが、国会での審理のみならず、法案の与党審査、さらにその後の政府基本方針等の与党審査でも議論をリードしていかなければならず、かなりの労力と時間を割くこととなった。

(人手不足の深刻化)
さて、現在我が国は、本格的な人口減少社会を迎えている。
それに伴い、各地で、人手不足が深刻化し、仕事はあっても、人手不足ゆえの企業倒産が多発している。
15歳から64歳までの、いわゆる生産年齢人口は、1990年代半ばまでは、全人口の70%以上を占めていたが、2018(平成30)年には、60%を割り込むまで減少してしまった。
このため、政府においても、女性の社会進出を促したり、高齢者の方々にも生涯現役として働いて頂く施策を講じたり、AIやロボットなどのイノベーションに取り組んでいるわけだが、それでもなお、特に地方を中心に、仕事の担い手がいない現状は解消していない。
改正入管法は、外国人材の受け入れ枠を多少広げ、深刻化する人手不足に対応していこうとするものだ。
すなわち、我が国では既に、専門性の高い人材や、技能実習生、留学生などの形で、約130万人の外国人の方が活動しているが、これに、今後5年間で最大30万人程度の外国人材の受け入れ拡大を図ることを内容としている。

(「単純労働者」でも「移民」でもない)
私は、今回の外国人材受け入れ枠の拡大だけで、現在の人手不足の状況を全て解消できるとは考えていない。
また、今回の改正が、我が国の入国管理政策の根幹を変えるものとも思っていない。
その理由は2つある。

第1に、今回の改正は、いわゆる「単純労働者」の受け入れではないと言うことだ。
「単純労働」の定義はなかなか難しいが、まあ、「その国における義務教育を修了した者がすぐに従事できる労働」といったイメージで考えてみよう。
今回の外国人材には、日常生活に不自由がない程度の日本語能力が求められ、試験にも合格しなければならない。「日本語」は多分その国では第2外国語程度の位置づけだろうから、義務教育終了後何らかのトレーニングを受けなければ合格は無理だろう。
これに加えて、一定の技能・経験を有することについての試験に合格することが必要で、技能実習生の場合は3年間のその分野における実務を無事に済ませていることが求められる。
それだけの人材が本当に集まるかどうかは別として、結構ハードルは高い。

第2は、「移民政策」とは異なると言うことだ。
「移民」の定義も、非常に多義的だが、私自身は、家族で暮らすことが1つの大きな要素であると思う。
在留期間に制限を設けたとしても、家族での移住の場合、「不法移民」が多く発生しやすくなる。
今回の制度では、最長5年の在留期間を設定し、基本的に家族帯同は認めないこととなっており、いわゆる「移民政策」とは趣きを異にする。
もっとも、家族帯同を認めないことについては、賛否両論あることは承知している。

以上2つの問題については、さらに国民的議論が必要と思う。
ただ、今回の改正法は、深刻化する人手不足の問題に一定の対処を行うものであり、緊急の対処で必要ということで提案されたもので、外国人労働者やその家族にどう向き合うかという国民的議論は、別途進めていくことが必要と思う。

(国会審議)
入管法の改正については、マスコミでも、「今国会の目玉」、「国の形が変わる」等々、大きく報道されたこともあって、野党の皆さんは、早々と、「臨時国会での成立阻止」という方針を打ち出した。
それでも、11月2日の改正法案の国会提出後、11月13日の火曜日には、衆議院本会議で安倍総理出席の下、趣旨説明質疑が行われ、ようやく審議入りということになった。
通常、本会議での質疑後は、速やかに委員会での審議が行われるが、野党の皆さんとなかなか合意できなかったため、さすがに、本会議質疑の翌週に審議入りではまずかろうと、私が、委員長職権により、11月16日の金曜日に審議入りを決定した。
しかし、11月16日の審議入りの直前、私に対する委員長解任決議案が提出され、11月16日と20日の定例日(法務委員会の定例日は火水金)の委員会審議ができなくなってしまった。
11月20日の本会議で私の解任決議案が否決された後、委員会での審議入りができたのが、ようやく11月21日だった。
そして、解任決議処理で定例日審議が2日間できなくなっていたため、やむを得ず、定例日外ではあるが、11月22日と26日にも、委員会を開会した。

委員会の審議内容は、私のホームページにもアップしてあるが、野党の皆さんの質問は、失踪した技能実習生の失踪動機について法務省の集計ミスが明らかになったこともあり、例えば、「失踪した技能実習生の多くが、劣悪な環境の下に置かれているのではないか。」「3年間の技能実習を終えた方に新たな在留資格を与える今回の法案は、崩れた土台の上に家を建てるものではないか。」等々の内容だった。

確かに、不当な取り扱いを受けた失踪技能実習生の問題は大きな問題だし、法務省の集計ミスも重大な問題だ。このことの分析は、今後の技能実習制度の改善に役立てていかなければならない。
ただ、今回の制度で新たな在留資格を得ることができる技能実習生は、3年間無事に技能実習を修了し、その後も日本での就労を希望する方に限定され、失踪技能実習生は対象にはなり得ない。
しかも、新たな在留資格は、同じ業種であれば雇い主を変えることも可能で、実習場所が固定され、従って「失踪」という概念がある技能実習とは、全く別のものだ。

以上のような質疑の方向性を見極め、採決の環境は整ったと判断できたので、11月27日、委員会採決を行い、法案は衆議院を通過した。

これまで大まかに、改正法の内容と国会審議の概要を述べたが、さらに詳細な内容については、今後、このコラムでも、折に触れて述べてみようと思う。

農村の疲弊にどう対処するか~水田農業を中心として

2018-8-23

 

注)このコラムは、平成28年、国政報告用冊子のために作成した小文の1部を、今回改めて、ホームページにアップするものです。

この数十年の間、「東京一極集中」は著しく進み、最近では、地方都市を中心に、「消滅可能性」が語られるようになっています。そして、地方の主力産業である農業は、就業者の高齢化(平均年齢68歳)が進み、TPP協定の交渉が大筋合意を見たこともあり、先行きへの不安が広がっています(その後、トランプ政権の誕生で米国が離脱、TPP協定は、米国を除く11カ国で再締結。)。
私は、自由民主党の畜産酪農対策小委員長や農林水産戦略調査会副会長などを歴任し、長く農政問題に携わってきましたが、水田農業の問題を中心に、農業の将来について、私のこれまでの取り組みと今後なすべきことについて述べてみたいと思います。

1 TPP協定の発効は米農家にほとんど影響はない

平成27年のTPP(環太平洋パートナーシップ)協定の大筋合意により、一部に、「米国や豪州から安いコメが自由に入ってくるようになり、日本の米作は壊滅する」といった不安があるようですが、この認識は、正確ではありません。
確かに、TPP協定の完全発効後、わが国には、10数万トンを限度として、米国産や豪州産の主食用米が入ってくることとなりますが、これにより、米価が下落するわけではありません。
現在政府は、輸入された米国・豪州産米と同量の日本産の主食用米を備蓄米として買い付け、3年間備蓄した後、家畜の餌となる飼料用米として処理することとしています。
このような措置により、主食用米としてわが国の市場に出回るコメの総量は、TPP協定発効前と変わらないことになります。
もっとも問題は、TPP協定があろうがなかろうが、米価が下落基調にあり、米作農家の体力が、既に相当弱ってきているということです。

2 日本のコメは余っているのか足りないのか
私は、平成19年、自民党の畜産・酪農対策小委員長当時、飼料用米の転作作物としての普及を提唱しました。
その後平成26年から、その政策が漸く本格化し、現在に至っていますが、当時私が考えたことは、いったい日本のコメは、余っているのか、足りないのかということでした。

(コメは余っている~需給バランスの観点)

需給バランスの上では、日本のコメは、余っています。

長期低落傾向にある米価

昨年、日本人のコメ消費量は1人一俵(60 ㎏)弱の約750万トンでした(一日換算で一合弱)。
これに対し、わが国の水田面積は、あぜ道や水路を除くと約240万ヘクタールで、その水田で全て主食用米を生産すれば、10アール500㎏計算で、約1200万トンの生産が見込まれます。
750万トンの消費に対し1200万トンの生産ですから、当然市場価格は暴落します。
このため、従来、計画生産すなわち減反政策がとられてきたわけですが、過剰作付けの問題を決することができず、米価は長期下落傾向で推移し、流通経費約2千円を引くと、農家の手取りが1俵1万円を割り込む年も出てきました。

(コメは足りない~安全保障の観点)

しかし、世界の人口増や異常気象で、海外からの食料が確保しにくくなった場合、日本のコメは、圧倒的に足りません。
明治時代、わが国は、コメを主食とし、ほぼ、食糧自給率100%(カロリーベース)を達成していました。この時代(1890年頃)の1人当たりのコメの消費量は約1石(150kg)で、一日約1500㎉の熱量をコメから摂取していました。
すなわち、食料自給率100%達成のためには、1億2000万人の人口に対し、約1800万トンのコメが必要という計算になります。わが国のコメの生産力は1200万トンですから、これではとても足りません。

3 多収穫米での転作~飼料用米などの本格普及へ
そこで私が提唱したのは、飼料用米(多収穫米)の普及という政策でした。

(「需要」はある)
先述のように、主食用米の需要は、減少傾向にあります。ただ、わが国は、世界有数の穀物輸入国でもあります。
すなわち、わが国は、製パン用の小麦を約600万トン、家畜の餌用のトウモロコシを約1000万トン輸入しています。コメをこれに代替できれば、「需要」はあるわけです。

(多収穫米の研究は進んでいる)                                                      
さらに、多収穫米の研究も、実用レベルまで進んでいます。品種によっては、10アール当たり1トン収穫可能ということです。
現実的には、種籾の直蒔きで10アール700~800㎏の収量というところでしょうか。そして、この種の種籾の確保ができれば、わが国のコメの潜在生産力は、一挙に1800万トン程度をクリアーすることとなります。

 

 

(水田の畑地化には限界がある)
さらに、今までの転作では、水田を畑地化し、麦や大豆を作付けしてきましたが、畑地化が向かない水田もあります。

 

 茨城県南に広がる広大な水田は、かつては香取の海と言われた海跡湖と、それを取り巻く沼沢地でした(上が約千年前の茨城・千葉県境付近の地図)。
これを、江戸時代初期の利根川東遷の大土木工事や新田開発等により水田としたわけですが、いかんせん水はけが悪く、しかも麦(乾燥地帯の植物)などは収穫時期が梅雨と重なります。水田を畑地化せず、水田として多収穫米を作付けすれば、このようなミスマッチから解放されることになります。
ここまで述べると、飼料用米(多収穫米)の普及は良いことずくめのように見えますが、問題もあります。
多額の補助金(税金)が必要になるということです。

4 飼料用米による米価安定の仕組みと今後
(多額の補助金)
飼料用米は、海外からのトウモロコシの代替ですので、現在、トウモロコシと同額の1㎏20円で引き取られています。
ですから、10アール当たり800㎏を収穫しても、売り上げは16000円にしかなりません。その普及を図るため、私たちは、最大10万5千円の補助金を支払うことにしました。

(米価安定の仕組み)
飼料用米は、わが国が毎年1000万トン輸入しているトウモロコシの代替ですから、需要はいくらでもあります。このため、10アール当たりの売り上げは、補助金も込みで約12万1000円です。
農家は、その年主食用米を栽培した場合の売り上げが、飼料用米のそれを上回ると考えれば主食用米を、下回ると考えれば飼料用米を栽培しますから、コメ農家の10アール当たりの売り上げは、11万6000円に収れんしてきます。
主食用米は10アールあたり8~9俵とれますから、主食用米の米価は、一俵約1万3500円(9俵とれた場合)が基準となってきます。

(補助金を合理化する工夫が必要)
ただ、1アール当たり10万円という補助金は、他の転作作物(最高でも8万円)に比べても高すぎると指摘されています。
将来補助金が8万円になっても、同じ売り上げを確保するためには、1kg20円の品代を、50円程度(補助金8万円の場合、10アール当たりの売り上げは12万円)に上げていくことが必要です。
そこで、私は、コメを豚に給餌した場合、脂の融点が人間の体温以下に下がることに着目しました。豚肉を口に入れた場合、とろけるような食感になるそうです。
平成28年の予算で、飼料用米を与えた豚のブランド化を図る事業が始まりました。このようなブランド豚が高く売れれば、品代を上げていくことが可能になります。
このほか、多収穫米をアミロース化すれば、グルテンを加えなくても製パンように使用可能な技術を活用し、1kg50円程度で製パン会社に引き取ってもらう方策についても検討しています。

5 農村の活性化をどのように図っていくか
このように、飼料用米を初めとした多収穫米普及の政策が確立されれば、食糧安全保障の問題をクリアーできるだけでなく、米価をリーズナブルなラインで安定させ、農家の安心を確保することが可能となります。
コメ農家が、将来にわたってやっていけるという見通しが立てば、後継者の確保もしやすくなるでしょう。
ただ、問題もあります。
先に、10アール当たり12万円の売上と述べましたが、物材費のコストを除くと、所得は2万円程度です。ですから、農業所得で年400万円の所得を確保するためには、20ヘクタールの水田を耕作しなければなりません。
戦後の農地解放当時、農家一戸当たりの耕地面積は1ヘクタールで、40ヘクタールの水田に対応して、40戸の集落がありました。
でも今や、水田農業に携わるのは2戸のみで良い時代となりました。後の38戸はどうすれば良いのか、これが現在喫緊の課題です。
地方の活性化、農村の活性化のためには、産業政策としての農業政策以外の政策が求められます。
それが、「一億総活躍社会の実現」と並ぶ大きな柱である「地方創生」です。
新たな起業を後押しし、地方においてもIoT(モノのインターネット)等のインフラを整備するなどして、地方における雇用を創出していかなければなりません。
私は、平成29年、自民党の総務部会長(地方の活性化や情報通信を担当)に就任しました。
この経験をいかし、今後更に、地方創生の施策にも積極的に関与していく考えです。