偽造・盗難キャッシュカード対策法案を提案~衆議院財務金融委員会で答弁

2005-7-19

偽造・盗難キャッシュカードの被害が拡大している。
今回はこの問題についての議員立法の話題。

提案者として衆院財務金融委で答弁

ゴルフ場などの貴重品入れに入れておいた財布の中のキャッシュカードが、プレー中に、何者かに磁気データがコピーされ、また貴重品入れに戻される。
暗証番号は大抵貴重品入れの暗証番号と一緒。
プレーから帰ってきた当人には何も分からない。
ところが、磁気データと暗証番号が一致しているものだから、銀行ATMから、何千万円もの預金が引き出されてしまう。
そんな事件が続発している。
平成16年ど、このような偽造キャッシュカードを利用した不正引き出し総額は9億7千万円。盗難カードについては、約24億円となっている。
ところが、勝手に預金を引き出された預金者をどう保護していくか、今までそのルールが明確でなかった。
やはり基本的には、預金者の保護を第1義に考えるのが筋。

しかし、民法第478条は、銀行が、偽造等が行われたという事情を知らないで、「債権の準占有者(カードを外形的に管理し、暗証番号を知っている者)」に対する払い戻しを行った場合、その取引を、「有効」なものとしている。
だから、法的には、預金を勝手に引き出された預金者は泣き寝入りになってしまう。
勿論これでは常識に反する。
このような場合は、法律で、民法の原則を修正し、払い戻し自体を無効とするか、不正に引き出された預金を、銀行の側で補填してあげるなどの措置をとっていくことが必要だ。

そこで、この2月、自民党内に、「偽造・盗難キャッシュカード問題に関する小委員会」(江崎洋一郎委員長)が設けられ、私も、警察庁刑事企画課時代、カード犯罪対策を担当していた経験が買われ、メンバーに加わった。
そして、自民・公明両党の党内手続きを経て、6月22日、自公両党の6名の議員が提案者となって、衆院事務総長に議員立法案を提出。この日の財務金融委員会での答弁となったわけだ。

法案の内容は、まず偽造カードについては、ほとんどの場合、預金者には防ぎようがなく、また、預金者に事情を聞きようもない。
だから、預金者がわざとやったか、それと同視できる場合以外は、偽造カードを見ぬけずに払い戻しをするようなATMシステムを構築した金融機関の問題が大きく、預金者を無条件で保護するというもの。

次に盗難カード。
盗品とはいえ、カード自体は真正。また、本当に悪いのは窃盗犯人であり、被害回復の観点から、預金者自身に対しても、盗難の状況等について聞いていくことが必要になる。
このため、預金者に対し、盗難時の状況等について説明を求めた上、暗証番号の管理等について、相当なうっかり(過失)がない限り、不正に払い出されたほぼ全額を補填するという構成をとった。

偽造・盗難カードの被害者の会などからは、盗難カードについても、偽造カードと同様の扱いとすべきという意見もあったが、窃盗犯人だけに得をさせないためにも、払い戻しを一律無効とし、預金者は関係ないという構成をとるよりも、預金者に協力してもらう仕組みも必要だ。
私は、与党案は、モラルハザードを防止しつつ、最大限の預金者の保護を図るという観点から、妥当な制度になっていると考えている。
そして、国会答弁でも、何故このような仕組みをとることになったか、私からも、できるだけ丁寧に答弁させて頂いたつもりだ。

さらに、今後の課題としては、盗難通帳等の問題もある。その被害の救済も急務だ。
引き続き、いろいろなケースを考えながら、預金支払い時の本人確認などの義務づけのあり方を考え、現実的な仕組みがまとまり次第、立法化する意気込みが必要。

現実に被害を受けられた方の気持ちは良くわかる。あるいは隔靴掻痒の感を持たれるかも知れない。
ただ、特にこの手の立法、犯罪者の頭が良すぎるだけに、また、お金が絡むだけに、ある意味で後手も致し方ない部分もある。
その中で、我々国会議員には、「ワーク(機能)する仕組み」を、いかに「スピード感をもって」作っていくかが求められていると思う。
このことを、今回の立法を通じ、痛感させられた。
まだ参議院審議もある。気持ちを引き締めていこう。