人口減社会に対処した公務員純減を~公務員定員削減の3つの方向性を初めて提唱

2005-10-27

今、公務員数の「純減」の議論がホットな話題になっている。

純減目標を決めた行革本部総会

10月26日の自民党の行政改革本部の総会は、約40万人の一般職国家公務員総数を10年間で2割減らすこととし、地方にも、同様の努力を求めることを決めた。
従来の公務員の定員管理が、「公務員数を減らすこと」よりも、「公務員数を増やさないこと」に重点を置いてきたのと比べると、大転換だ。
また、与党だけでなく、政府の経済財政諮問会議でも、11月をメドに公務員総数の純減目標を設定していくこととしている(数字的には、5年で5%、10年で20%程度になると考えられ、ほぼ党と同水準が見込まれている。)。
もっとも、「ホントにできるの?」という声も確かにある。
逆に、政府与党が、「現在の公務員の2割は、無駄な人員である」と宣言するにも等しい目標を掲げることで、逆に、真面目な公務員の志気が落ちてしまうのではという懸念があるのも事実。
私個人としては、ちょっと種明かしめいてくるが、10年で2割減という数字は、真面目な公務員の役割を十分評価しつつ、十分に実現可能なものと思う。
今日はそのへんを書いて見よう。 公務員の定員削減は、3つの方向性に分けて考えるべきだ。
1つは、今まで「官」がやっていた仕事を「民」にやらせること。郵政民営化などがその典型だ。
例えば、郵政民営化により、26万人の公務員が民間人になる。実はこれだけで、国家公務員総数を3割削減する効果があった。
そして、郵政以外にも、公務員型の独立行政法人(国立研究所など、約7万人)や、独立採算の現業公務員(公立病院など)の業務を民間に委ね、公務員の身分を民間人としていけば、公務員の数自体を、相当削減していくことができる。

実際、県レベルではあるが、「構想日本」代表の加藤秀樹氏のチームで、新潟県などの8県が現実に行っている事業を精査したところ(ちなみに、構想日本では、「事業仕分け」と言っている。)、「民間で行うべき」とされた事業が、歳出ベースで、7~8%あった。
だから、この「民営化ベクトル」の方向で努力をすれば、10年で10%程度の公務員の民間人化という目標をたてることは十分根拠のあることだ。

でもこれだけでは、ある意味で、公務員の身分を民間人に移し換えただけだ。やはり、これに加えて、2つ目の、「不要なものをカットする」という「ムダ排除ベクトル」の方向性が必要だ。

先の加藤秀樹氏による「事業仕分け」では、新潟県をはじめとした8県で、「不要」と格付けされた事業が、歳出ベースで4%に上る。
その伝で行くと、やはり、国の業務でも、5%程度のムダがあるのではということを念頭に、しっかりと精査を行い、定員の縮減を図っていくべきであろう。

以上の、「民営化ベクトル」と「ムダ排除ベクトル」の方向性に基づけば、国・地方通じて、15%程度の総定員削減の目標数値設定ができる。

ただ、私は、これだけでは、「人口減社会」、「労働人口減少社会」という、わが国が直面する未曾有の状況に対する対応としては、不十分ではと思う。

実は、「民営化ベクトル」と「ムダ排除ベクトル」は、今までの行政改革でも既に用いられてきた手法だ。
加えて(私が日本で初めて言い出したこととのことだが)、「人口減社会=労働人口減社会への対処ベクトル」というものがあるはずだ。
これが第3の方向性だ。

わが国の労働人口は、今年、2005年の約6800万人をピークに、高齢者率が安定すると言われる2030年までに、約1000万人減少する。25年間で約15%、年率にならすと、0.59%の減少だ。
私は、たとえ官がやる仕事として必要なものであっても、「小さな政府」を掲げ、「民間の創意工夫を引き出すこと」を目指す以上、労働人口の中に占める公務員の比率は、現在よりも上げることがあってはならないと考えている。
警察でも、消防でも、教育といった、明らかに官が仕事をしなければならない分野でも、国民の数も減り、労働人口も減る中で、間尺に合わせた規模というのがあるのではないか。

そして、このようなタガをはめなければ、高齢化社会が進む中、「福祉・防犯などの公的仕事が多くなる」という主張がまかり通ってしまう。
そして、「役人の数は自己増殖する」という「パーキンソンの法則」の究極の姿として、わが国が、高齢者と役人だけの社会となり、民間企業は海外に逃げるという悪夢が現実にのものとなりかねない、私はそんな危機感を持っている。

そして、この思想は、今真面目に働いている公務員を問議するものでも何でもない。これからの人口減社会の中で、パブリックセクターの比率を大きくしないために、必要なことだと説けば、いかが労働組合とはいえ、分かってくれるはずではと、私は思っている。

このような、「人口減社会対処ベクトル」に基づけば、10年で6%程度の公務員総数純減は十分に可能だ。

このように、「民営化ベクトル」(10%程度寄与)と「ムダ排除ベクトル」(5%程度寄与)、さらに「人口減社会対処ベクトル」(6%程度寄与)をしっかり機能させれば、現在の行政サービスを維持しつつも、10年で2割以上という、相当な公務員総数の削減は、決して無理な数字ではない。

ただ、今日までは、あくまで目標をどう作るかという話。
実際に実現に移していくのが、私たちの責任だと思う。