住宅政策の大転換~社会政策・経済政策・都市政策の全ての面で転機に

2006-4-22

衆院国土交通委員会(4月21日)

4月21日の衆議院国土交通委員会。
私は、「住宅の量から質への転換」をうたう、政府提案の「住生活基本法案」について、参考人質疑を行った。
戦後わが国の住宅政策は、圧倒的な住宅不足と人口増圧力を背景に、住宅の「量的拡大」を至上命題としてきた。
ところが、わが国の人口は、既に減少期に入っている。
だから、住宅政策には、抜本的な大転換が不可欠だ。
今回の法案は、その転換の理念を示すものといえる。
ただ、従来の住宅政策の主要な行政ツールであった「公営住宅・金融公庫・公団住宅」の3点セットは、いずれも、量的拡大路線に対応したスキームだったと言って良い。
その意味で、このような基本法の策定以降も、しっかりした具体的施策体系を構築していくことが必要だ。

この日の質疑では、住宅政策の基本について、いくつかの問題提起を行ったつもり。私は、住宅政策には、次の三つの政策の側面があると考えている。
○社会政策(福祉政策)の側面社会的弱者の住宅の確保
○経済政策(景気政策)の側面住宅市況活性化による景気刺激
○都市政策(環境政策)の側面環境・防災面等に優れた都市の形成

このうち、政府の「住宅政策」は、もともと、「社会政策」の側面から始まった。
これは、戦前の住宅政策が、建設省(国土交通省)の前進である内務省土木局でなく、厚生労働省の前進である内務省社会局の担当だったことからも伺える。
戦後も、住宅公社などによる低所得者向けの「公営住宅供給」は、住宅政策の大きな柱であった。
この「柱」は、やはり堅持されなければならない。
しかし今、「社会政策としての住宅政策」にも、手法の見直しが必要だ。
かつての「公営住宅」は老朽化が進んでいる上、入居者は長く居住する傾向があるため、新たに発生した低所得者層の需要をなかなかまかなえない。
今後は、「住宅のセフティネットの確立」を住宅政策の基本に据えつつ、従来型の公営住宅建設一辺倒でなく、例えば、定期借家権を活用した民間空き家の活用など、多様な行政ツールの創造と活用が大切だ。

経済政策としての住宅政策にも転機が訪れている。
戦後の住宅不足の中、中流層の庶民が、新規着工の持ち家を購入することは、景気刺激策としても大きな効果を発揮した。
なぜなら、新規住宅購入は、電化製品、自動車など、他の関連製品の需要を喚起するからだ。
そして、これを支えたのが、住宅金融公庫による長期低利融資だった。
ところが、この面でも転機が訪れている。
住宅のストックは、量的にすでに充足され、しかも、わが国はすでに人口減社会に突入、長期的には住宅需要の減少が必至だ。
だから、これからは、従来型の公庫融資よりも、既存の中古住宅を流通しやすくする工夫が必要ということになる。
具体的には、中古住宅が、安全性や間取りの面でも、市場の評価に耐えられるよう、改修の促進を図ることが大切だし、ローン税制などで、中古住宅市況の活性化策を講じていくことが重要になる。

都市政策としての住宅政策にも転換が必要だ。
従来都市政策の面を担ってきたのは、やはり「公団」。そして、民間では、各種の「デベロッパー」だった。
高度成長期、各地にニュータウンが誕生し、公団等は、主として中流層をターゲットに、文化的、かつ、新たなライフスタイルを提供する役割を担った。
ところが、戦後に開発された「ニュータウン」などにおける住宅は、耐震性などの安全性、省エネ性能等環境への配慮という面で、性能的に劣るものが多い。
しかも、街は、急速に高齢化が進み、「空き屋」も増えている。
平成10年から15年までの5年間で、全国の空き家は、14.4%も増加、660万戸と、全住宅の12.24%に達しており、うち半数は、賃貸・売却用以外の、本物の「空き家」だ。
これは、防犯上も防災上も大問題。

住宅はもとより個人の資産だ。
しかしながら、今大切なことは、防災等の都市政策、環境政策の面から、既存の住宅群に対し、どのような手当や法的措置が必要かを考えていくことではないか。

住宅金融公庫改革、都市再生機構改革などの今までの改革は、どちらかというと、「官から民へ」という「小泉構造改革」の一環として語られることが多いが、私は、今述べたような住宅政策の転換という文脈でも、その必要性を語ることができると思う。
でも、住宅政策改革は、公庫・公団の改革だけではない。
我々もしっかり知恵を出しながら、国民のための施策体系を構築していかなければなるまい。