議員主導の国際世論づくり~ジュネーブで核実験非難宣言採択を提案へ

2006-10-14

ジュネーブの列国議会同盟本部

北朝鮮の核実験宣言に対する国連安保理決議は、10月14日にも採択される方向で、現在、関係国の調整が行われている。
これと時を同じくして、10月15日から18日までの間行われるのが、列国議会同盟(IPU)のジュネーブ総会だ。
IPUは、国際連盟よりもはるかに早い1889年に設立された、世界146カ国の議会が加盟する国際機関(本部ジュネーブ)だ。
毎年秋の総会では、平和及び安全保障、開発及び貿易、民主主義及び人権の3つの委員会が、具体的なテーマを決めて加盟国議会に対する宣言(アピール)を採択する。
このうち、民主主義及び人権委員会では、本年は、「行方不明者及び強制失踪者」に関する宣言がなされる予定で、私は、拉致問題について訴えるため、派遣メンバーに指名されていた。
しかし、いうまでもなく、北朝鮮の核実験宣言は、拉致問題とは別に、緊急に国際世論を喚起しなければならない問題だ。
そこで、玉沢徳一郎団長(元防衛庁長官・農相)の決断で、わが国として、緊急に、追加的な宣言案をIPU総会に提起することとなり、私には、代表団の中で、特に、その宣言の起草を担当して欲しいということになった。私自身は、10月14日の午前中は地元日程があるため、その日の午後の便でジュネーブに発つ。到着は現地時間の深夜だ。

翌朝には、多分前日までに採択されているはずの安保理決議の内容を精査した上、代表団の中で、提起すべき宣言の内容や、総会における支持獲得のための戦略を練らなければならない。
そして、15日は、各地域ブロック(わが国は、アジア・太平洋地域に属する。)ごとの会合が開かれるため、緊急の追加宣言を行うべきことについて、アジア・太平洋地域のみならず、他の地域の国々に対しても、ロビー活動を行う必要がある。
その際には、私が前回のコラムで書いたように、国際テロ時代においては、「北の核」の問題は、単に北東アジアの安全の問題のみならず、全世界の人類に対する脅威であるということが、キーワードになってくるはずだ。

16日にIPUの総会が開かれる。
開会式の後、私は、まず、当初予定されていたように、「民主主義及び人権委員会」の、「行方不明者及び強制失踪」の討議に参加、これが夕方までかかることになる。
そして、夕方の総会で、追加かつ緊急の宣言を行うか否かが審議される予定だ。
そこで追加議題として承認されれば、代表団からは私のみが、翌日からの起草委員会に出席、主体的立場で宣言案の起草に当たることになる。

だから、うまくいけば、17日は、丸1日、宣言案について、丁々発止のやりとりをしなければならない。
中韓露だけでなく、核不拡散条約に加わらず、核保有国となってしまった印・パキ、核開発疑惑が取りざたされるイラン、イスラエルが核開発を行っていると疑いの目を持つアラブ諸国など、うるさ型が意見を言ってくることは必至で、日本側としては、宣言が余りぼけたものとならないよう、主張すべきことは主張しなければならない。
また、仮に、16日の総会で、わが国の追加宣言を行うべきという提案が否決されてしまった場合でも、代理の参加者にお任せするつもりだった「行方不明者及び強制失踪」の宣言案の起草委員(これも代表団から1人)に復帰するように言われているので、いずれにせよヒマにはなりそうにない。

18日は、午前中、予定では、追加・緊急宣言案の起草委員会が継続、午後は、5時までIPU総会、宣言案の討議・採択。
そして、私は、20日に日本での予定があるため、他の代表団よりも1日早く、午後6時半の飛行機でジュネーブを発ち、帰路につく。成田着は19日夜だ。

土産物を買う時間もない日程ではあるが、私は、このような作業が、わが国の独立の保持と国民の安全の確保ため、決して無駄ではないと思っている。
もとより安保理の決議の内容にもよるが、安保理決議に基づく具体的な制裁措置は、基本的には各国政府に委ねられる。
この場合、もしも各国政府が、議会の反対を口実に(実際に良くあることではある。)、北朝鮮に対する制裁に参加しなかったら、国際社会の足並みは乱れ、制裁が有名無実化しかねない。
このような動きに、IPUの側から、一定の歯止めをかけることは、国際社会の結束を効果的なものとするため、極めて有効ではなかろうか。
だからこそ、ジュネーブで、しっかりと仕事をしてきたいと思う。