振り込め詐欺被害者救済法成立へ~「被害者救済よりもパフォーマンス」の民主党に辟易しつつ

2007-12-11

振り込め詐欺被害者救済法の趣旨説明

平成19年12月4日の衆議院財務金融委員会。
自民党内の「振り込め詐欺撲滅ワーキングチーム」を中心に作成した「振り込め詐欺被害者救済法案」が、6月7日の提出から半年たって、ようやく審議入り、私が趣旨説明を行った。
振り込め詐欺の被害者が銀行に振り込んだお金は、現行法制上、口座名義人(犯罪者)のみに払い戻し請求権があるため、被害者に返還することができない。
こうして金融機関の預金口座に滞留したお金は、約80億円も上っており、早期に被害者を救済する必要があった。
そこで、平成18年9月、自民党内の検討を開始、議員自身の発案により、1年間をかけ、遺失物法などの手続を参考に、まず口座名義人の払い戻し請求権を消滅させ、その後被害者に対してお金を返還することを内容とする「振り込め詐欺被害者救済法案」(議員立法)を、練り上げ、平成19年6月7日、衆議院に提出したわけだ(私が提出者代表)。
それが、なぜ半年も、たな晒しにされていたのか。理由は簡単。
民主党が審議入りを拒否していたからだ。

先の通常国会は、6月7日の法案提出後、7月12日の会期末まで、1月以上の期間があった。
我々提出者からも、民主党の窓口(担当理事)に、「いつでも説明に上がります」とアプローチしたが、向こうからはなしのつぶて。
国会という世界は、多数党による横暴を避けるため、「慣例」を重視している。
私自身は不本意だが、その「慣例」によれば、議員立法については、与野党が合意しなければ審議入りができないこととされている。
このように、民主党のサボタージュで、被害者救済法案は審議入りもできずたな晒し、この臨時国会を迎えたわけだ。

私は、この臨時国会から、自民党の国会対策副委員長に就任。
法案提出者代表の立場からも、関係先に、審議入りを促してきた。

ところが、10月末から、民主党の方では、私達の知らないところで、非公式な動きがあった。
まず、民主党のT議員が、「弁護士仲間」との個人的な理由で、法案提出者の1人であるわが党のM議員に接触してきたらしい。
さらに民主党は、なぜか法案を企画立案した我々でなく、事務的作業のみを担当した衆議院の法制局を呼びつけ、自公両党が提出した法案の内容について、根掘り葉掘りの説明を求めたようだ(もっとも、衆議院法制局の側も問題だ。私を初め、自公の法案提出責任者に何の連絡も、承諾を得るでもなく、与党の議員自身が考えた法案の神髄を、彼らが説明するのは、大変なルール違反。やはり、この種の説明は、法案の企画立案をした私達自身が行うべきだし、もしも法案提出責任者の私に相談があったら、機械的作業を担当した法制局職員だけに説明させるという愚(民主党は、私達でなく、あえて、機械的作業を行った事務方からの説明を求めたふしもあるが。)は、絶対に犯させなかったろう。)。
そうしたところ、11月に入り、民主党のT議員が、わが党のM議員に、「この点を修正しては」という、多分個人的見解と思われるメモを持ってきた。M議員もびっくりし、この段階で初めて、私も含め、他の法案提出者も、民主党の良く分からないが「こそこそした」動きを察知するところとなった。

それでも、我々は、ようやく民主党が関心を持ったことを歓迎し、民主党の窓口に対し、「そういうことであれば、自公の法案提出者が、正式に、与党の法案を説明に伺いたい。」と申し入れた。
ところが、なぜか、民主党はその提案を拒否。

いぶかしく思っているうちに、11月15日になって、民主党窓口から、私のところに、突然、「与党は修正に応じる用意はあるのか。わが方は対案もある。」という電話があり、「正式に修正案の内容も見てないので、考え方をご呈示願いたい。」と答えておいた。
その後、民主党から、簡単な「修正意見」が手元に届き、提出者内で検討したが、「運用上の留意事項」程度の修正には応じられるが、制度の内容を若干変更する民主党の修正案は、かえって現場を混乱させ、制度を動かなくさせてしまう可能性があると思われた。

読み飛ばして頂いて結構だが、ちょっと内容を述べる。
実は、与党案では、預金債権消滅のインターネットでの公告を行い、60日後にその権利が消滅することとしている。
もっとも、この期間中に、被害者が裁判に訴えるたりした場合は、この手続は中断することになる(注)。

注)法案では、被害金の分配は、全ての被害者に比例按分される。例えば、1年前に被害金が引きおろされた残額0円の口座に、被害者のAさんが千万円振り込んで、残額千万円の場合、Aさんは当然千万円返してくれると思う。しかし、犯罪者がお金を引きおろす数年前に、3千万ずつ振り込んだ被害者Bさん、Cさん、Dさんの3人が名乗りを上げた場合、Aさんは、比例按分では百万円しか得られない。しかし、この法案の仕組みでなく、裁判手続きに訴えれば、Aさんは、Bさん達の過失を主張し、千万円を返してもらえる可能性がある。このような場合は結構多いと思われる。

さて、振り込め詐欺の被害者にはご高齢の方も多く、インターネットの公告を皆が見るとは限らないため、銀行の方から、記録のある振込人に通知することを考えなければならない。
しかし、(注)のように、Aさんが裁判に訴える可能性がある場合、銀行は、他の振込人に、敢えて情報提供を行うことができるだろうか。実務的な答えは否だ。
そこで、私達は、銀行からの情報提供を円滑に行わせ、被害者保護の万全を期するため、情報提供と被害金の分配を、預金債権消滅確定後30日で行うこととしたわけだ。

ところが、民主党の「修正案」は、失権と分配という2つの手続きを同時に行い、その期間を60日としてほしいとのことだった。
実は、この手の案は、今年初頭、自民党内ではすでに俎上に上げ、全銀協とも協議の上、被害者の救済にはならないとして、没にしたもので、既に検討済みの案だった。
私達は、民主党案では、銀行からの情報提供を行うことができないため、ご高齢の被害者の多くが救われないことになどの弊害ありとして、「ご提案はお受けできない」との回答を行った。

何回かの協議の末、最終的に、11月27日、私から、民主党のT議員にその旨を説明、先方も納得した。ただ彼らは、「すぐに引っ込めるから、『対案』を出させてくれ。」という。
引っ込めるのに対案を出すとは変な話だが、そこはこらえて、被害者救済を第1に、私は、自民党の国会対策委員会筋、公明党とも、「まあしょうがない」ということで調整に入った。
そして、その調整に汗をかいている最中の11月29日、何の相談も連絡もなく、民主党が、「振り込め詐欺被害者救済法」の対案なるものを、衆議院に提出してきた。「自分勝手」もここに極まれりだ。

さんざん法案審議を引き延ばした上、日弁連や全銀協と調整するでもなく、我々のオリジナルのアイディアをなぞった「対案」なるものを作り、しかも、与党案との相違部分は、我々が、「既に検討済みで、結局、高齢被害者の救済とならない」ことを指摘し、「すぐに引っ込める」ことを了解しつつ、あえて『対案』なるものを出してくる民主党という党って、いったい何なのだろう。
まあ、「私たちも被害者のために熱心にやっている」、「返還までの期間は、(実は逆効果で、撤回することは承知済みだが)与党案の90日でなく、我々は60日とした」と言いたいだけのために、被害者の苦しみを顧みることなく、半年間も法案の成立を遅らせたということなのだろうか。

この法案、最終的には、与党・野党の両案を撤回、与党案と殆ど変わらない法案を委員長提案の法案とし、12月11日の衆議院本会議で可決、今国会成立の目途がついた。
まあ、振り込め詐欺被害者救済のためには仕方なかったとはいえ、正直、「被害者救済」よりも「パフォーマンス」を重視する民主党の「自分勝手」に辟易した仕事だった。