私が提案してきた「儲かる」コメ政策と民主党農政~今よりも手取りの減る民主党農政

2009-7-23

コメ政策の最前線・事故米横流し現場視察

7月21日、衆議院が解散、今回の選挙の争点は、農村部では、やはりコメ政策の方向性だ。
私は、平成15年の初当選後、農業問題を集中的に勉強、平成17年から20年まで、党の畜産酪農対策小委員長を務め、平成21年から、農業基本政策委員会主査として、コメ政策を担当している。
そして、つぶさに今までの農政を検証すると、やはり問題があったことは否めない。
当時の農政の責任者の本意ではないにせよ、「小規模農家切り捨て」と受け取られたのは、説明不足も重なり、ある意味で致し方ないことだった。
このような真摯な反省に立ち、これまで3年間、私は、コメ政策のあるべき方向への転換に取り組んできた。
今日は、その取り組みについて述べるとともに、民主党農政の問題点について記す。

1村人の仲を悪くした2つのトゲ
私が農政に携わり、現場の声を聴くようになって、何か村人の間に、ギクシャクした感じを感じたのは、当選して間もない頃だった。
そして、どうも、2つの要素があるようだ。1つは、「担い手」と「非担い手」の対立というトゲだ。
当時、「担い手」(大規模農家)に対する政策手段(補助金)の集中が始まっていた。
「非担い手」(小規模農家)にすれば、「俺たちは切り捨てられるのか」という不満、「担い手」にすれば、「とてもこの補助金では足りない」という不満を、それぞれが持ちながら、「対立」するという悲しむべき状況があった。

2つは、「生産調整(転作)協力者」と「転作非協力者」の対立というトゲだ。
なお、「減反」という用語は、少し不正確だ。現在休耕田に補助金は出ず、転作者にのみ補助金が支出されるため、「水田の転作」の方が正しい。私は、「減反」でなく「転作」という言葉を使う。
「転作協力者」にしてみれば、転作しても何のメリットもないという不満、「転作非協力者」にしてみれば、「湿田」は「畑」にできないのに、転作をしたくてもできないという不満等々、それぞれが不満を抱えながら、「対立」するという悲しむべき状況があった。

2トゲを解消するために私が主張し、実現してきたこと

私も、農政に携わるようになって、これらのトゲを除く政策を採っていかなければならないと考えるようになった。

まず第1に、転作非協力者も、無理なく転作に協力できる作物と補助金体系を整備し、転作協力者に転換させることだ。
畜産・酪農委員長であった私は、需要のある(毎年1200万㌧輸入しているトウモロコシに代替可)エサ用の多収穫米に注目した。反収800㌔~1㌧のエサ用米は、㌔40円程度なら大いに需要がある。反収800㌔として、1反8万円の補助金を交付すれば、反収11万2千円が見込め、反収を伸ばせばさらに儲かる。
しかも、エサ用米ならば、同じ稲であるため、主食用米と出穂の時期をずらせば、水田を畑にするのでなく、水田として活用できるため、「湿田」でも栽培可能だ。
私は、平成18年来このことを主張、平成19年に、反5万円の補助金を実現、ただこれでは少なすぎたため、農業基本政策委員会主査として、平成21年、補正も含め、反8万円という思い切った補助金を実現した。

第2に、転作協力者に、転作に協力して良かったと思ってもらううことだ。
平成20年8月、私は、党内で初めて、転作協力者に対する協力金の創設を提唱。当初、米作付け面積当たり5千円を主張したが、折衝の過程で、3千円になってしまった。でも大変喜ばれた。
平成21年には、主査の立場で、さらなる協力金を創設、今度は、転作面積当たり1万5千円を獲得、転作協力者の労に報いることができたと思う。

第3に、「非担い手」も、農家の一員としてしっかり位置づけることだ。
平成18年、私は、「農地スタディチーム」において、「『非担い手』という言い方はむごい。たとえ1町5反の小規模農家であっても、5反を『担い手』に貸し、転作してもらうなら、立派な『担い手協力者』であり、『転作協力者』だ。残り1町でおいしいお米を作ってもらえばよい」と発言した。
平成21年、この発想の1部が実り、小規模農家が『担い手』に農地を貸す場合、一反当たり1万5千円の協力金を支払う制度を構築できた。

3コメ農家の安心確保のためこれからなすべきこと

2に述べた施策を推し進め、コメの国境措置(高関税)を守ることにより、国内への主食用米の供給を750万㌧程度に調整できるはずだ。これにより、米価は、60㌔1万7千円程度が確保される。

このような試算を裏付けに、転作協力者については、来年以降、豊作などにより、おおむね1万7千円以下に米価が下がった場合に減収補填ができるよう、しっかりした改革を行い、安心を確保しなければならない(現行の減収補填策は、本年度で期限が切れるため、丁度良いタイミングだ。)。
これは、小規模農家も含めての話だ。
農業基本政策委員会主査として、実は内々下打ち合わせは行っており、実現に向けた確かな歩みを進めている。

このように、私は、税金の投入を最小化しつつ、米価を安定させ、農家の安心を確保する施策を、今、コツコツと積み上げている。

4農家の儲けにならない民主党農政

民主党の「農業者戸別補償政策」について少し触れる。
良く分からないが、少なくとも民主党の鳩山代表は、農産物の自由化論者のようだ。その証左に、昨年5月も、豪州外相との会談で、「民主党は農業者戸別補償を実施するから、自由貿易協定はすぐにできる」と発言している。
コメの自由化により、日本米の相場は、ジャポニカ種の国際価格である60㌔6千円に下がることになる。
でも、「戸別補償」があるから本当に大丈夫なのだろうか。
民主党は、(財源もデタラメなのだが)農業者戸別補償のために使おうとしている予算は、最大1兆円と言っている。
これを、全てコメへの補償に使ったとしても、昨年並みの800万㌧の生産なら、60㌔当たり7500円に過ぎない。
そうすると、農家の手取りは、(米価)6000円+(戸別補償)7500円-(流通経費)2000円で、計11500円。
これでは農家は儲からない。今よりも損をすることになる(平成20年産米の農家手取りは12500円超)。
民主党農政は、結局は、多額の税金を投入しながら、外国に良い顔をするだけの、デタラメ政策と言うことが分かる。

私たちは、名前だけが踊る「戸別補償」に惑わされてはならない。
本当に現場のことを考え、農村を守ってきたかつての自民党の情熱を大切にし、新しいセンスで、若い人には儲かる農業、おじいちゃん・おばあちゃんは小遣いの稼げる農業を実現していきたいと考えている。