農産品に関する放射能暫定規制値のドタバタ~「風評被害」を自ら拡大する菅民主党政権

2011-5-3

地元JAで風評被害対策の問題点を指摘

○準備不足の規制値発表
地震発生から1週間も経ない3月17日、厚生労働省は、今まで定められていなかった「農産品に関する放射能の暫定規制値」を、急遽発表しました。
少し気になったため、旧知の農水省幹部に問い合わせたところ、案の定、農水省との連携は全くなく、どのように検査するか、基準値超えの農産品の扱いをどうするか、全く決まっていないで、暫定規制値だけが、WHOの厳しい基準を参考に公表されたとのことでした。○いかされなかったJCO事故の教訓
その2日後に福島産の原乳・一部野菜などから規制値を超える放射能が検出され、現場は大騒ぎになりました。
政府は、「食べても直接は健康に影響ない」としながらも、福島・茨城産の一部農畜産品について直ちに出荷禁止を命令、このため、一時、茨城産の農産品は、ほとんどといって良いほど売れなくなってしまいました。いわゆる「風評被害」です。
茨城県は、既に12年前、東海村でのJCO臨界事故を経験、そのときの農産品の風評被害は、数ヶ月続きました。
実は3月末になって、茨城県のJAに、政府から、そのときの記録を見せてくれという依頼があったそうですが、余りに遅すぎます。

JCO事故のときは、出荷禁止命令は行わず、「茨城県産品」だけで消費されないという被害を避けるため、地域ごとに徹底した検査を行い、消費者に安全性をアピールすることの重要性が関係種の間に語り継がれました。
実際、福島でも会津と浜通りでは違います。原発近くの村の原乳で放射能が検出されたから、会津の原乳まで出荷禁止にしてしまうのは余りに行き過ぎで、政府が、「福島・茨城産品は買うな」と言っているようなものです。
しかも、報道によれば、当初は、「直ちに健康被害はない」とのコメントのみとする方向だったのに、菅総理の強い指示で出荷禁止に踏み切ったとのことですから、これでは、菅直人氏が、「歩く風評被害」と評されるのもなるほどと思います。
○バランスと連携を確保するのが本来の「政治主導」
「政治主導」とは、思いつきでトンチンカンな指示を出すことではありません。
今回の場合、農水・厚労両省の連携を確保し、検査体制を整え、規制値超の場合の対処方針をマニュアル化し、関係者で議論の上迅速に規制値を発表、「全て補償」という口先だけでなく、バランス感覚をもって補償に当たることが必要です。
今、その全てが欠けています。現在必要なのは、本当の「政治主導」なのです。