「水際対策」の現場から~東京入国管理局成田空港支局を視察・督励

2015-2-8

成田空港入管視察~自動化ゲートで指紋を登録

2月6日、私は、法務省の公務で、東京入国管理局成田空港支局を視察・督励した。
ISIL(いわゆる「イスラム国」)による日本人殺害などのテロ行為は、まさに言語道断であり、強く非難されるべきものだ。
我が国も、国際社会の一員として、このような卑劣なテロ行為には、断固たる姿勢を貫かなければなるまい。
そして、その一方で、ISILが、今後も日本や日本人に対するテロ行為を継続することを宣言した以上、万全の警戒態勢をとっていく必要がある。
このようなテロリスト等の入国を水際で阻止する役割を担うのが、入国管理行政とりわけ、入国審査だ。入国審査の現場は、常に緊張感が求められる。
あらかじめ入国拒否のリストに載せられた人物を的確にチェックすることはもちろん、挙動不審等の兆候を発見し、旅券の偽造や入国目的の偽変の可能性も念頭に必要な質問をしていかなければならない。

また、同時に、「観光立国」の観点から、審査の迅速化も同時に求められる。
我が国を訪問する外国人の数は、昨年、史上初めて、1300万人を突破した。
これを2000万人超にするため、今、政府を挙げての取り組みが進められている。
その一環として、入国審査の待ち時間をできるだけ短くすることが求められている。
このように、入国審査の現場は、「厳正な審査」と「迅速な審査」の2つの命題を同時に達成していくことが必要だ。
特に、今回のように、ISILによるテロ予告宣言が発せられているような状況下では、相当の緊張感をもって、水際対策を徹底していくことが重要だ。
法務省では、既に厳正な水際対策を求める旨指示したところだが、2月3日には、総理官邸で、官房長官を本部長とし、私もメンバーとなっている国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部が開催され、政府あげてのテロ対策の推進を申し合わせた。
そして、2月6日の、成田空港支局の視察・督励となった。

東京入国管理局成田空港支局は、訪日外国人の約3分の1の入国審査に当たり、入国審査官・入国警備官あわせて約700人の職員を擁する。
それでも、近年の訪日外国人の増加で、業務量は増加傾向にあり多忙を極めている。
もっとも現在は、ISILによるテロ予告宣言という非常事態であり、当面は現有体制、設備を活用して、職員一人一人が一層の緊張感を持って仕事に当たっていただくことが大切だ。
この日の視察では、これに加えて、「厳正な審査」と「迅速な審査」の2つの命題を同時に達成するためには、体制面、情報管理面などで、不断の改善を行っていくことが必要なことを痛感した。

第一に、入国管理職員の体制の充実が大切だ。この点については、平成27年度当初予算案においても、増員について相当の配慮を頂いたところだが、円滑な業務遂行のためには、具体的にどれくらいの人員が必要かということを、さらにつめていくことが重要と思う。

第二に、情報の整備充実が肝要だ。入国拒否やテロリストのリストに登載されていれば、氏名、顔写真等の個人識別情報により選別することが可能だ。疑わしいものまでも含めて、このリスト等を充実させていかなければならない。そのためには、国内の関係機関との情報交換に加え、航空機会社との情報交換などの努力を行っていかなければならない。
また、入国管理行政は、各国とも、「入国には厳正な審査を行うが、出国はあまり見ない」という建付けの仕組みになっているようだが、今後は、海外の入国管理部門との情報交換を行うことについても、検討してもよいかもしれない。

第三に、設備・装備の充実強化も必要だ。個人識別情報の認証についても、機械でできるものは機械にやらせるという観点から、入国審査の現場では、すでに相当な機械化が図られているが、使い勝手の良いシステム構成を不断に追及していかなければなるまい。

他にもいろいろな問題はあろうが、水際対策の徹底も、あくまで現場あってのこと、法務本省としては、現場の兵站をいかに確保していくか、今後も意を用いていくことが重要と思う。