第2波の流行に打ち勝つ強靱な政策こそ必要~政治は、「給付」、「給付」の次にある我が国の姿を国民に示さなければならない

2020-5-29

5月27日、歳出規模32兆円に上る、極めて大型の、令和2年度第2次補正予算が閣議決定され、6月8日からの週の予算委員会で審議の後、今国会中にも成立する見込みとなった。
内容は、6月30日までとされていた雇用調整助成金の限度額引き上げと支給期限の延長、事業者の固定費である家賃の補助、資金繰り対応の強化、地方創生臨時交付金の大幅拡充、持続化給付金の拡充など、新型コロナ

10万の病床準備と抗原検査の活用を提案した5月7日の会議。この時点では、その重要性を理解する方は余りいなかった。

との戦いが長期化することに備え、第1次補正予算での措置を強化するものとなっている。これらは、今回のコロナ禍で痛んだ方々に対する給付措置が中心となっている(バラマキという意見もある。)。
もっとも、新型コロナとの共生がさらに長期化し、売れ上げの減少や休業が例えば最悪2年間続いても、その穴埋めをしなければならないのかという疑問は残る。

これでは、まともに経済活動を回復させ、税金も納めている方から、「1億総公務員化政策」であると批判する場面も出てこよう。

やはり、第2波、第3波の流行があろうとも、経済の回復を止めず、一部の本当に大変な方には、適切な措置を講ずることは必要としても、多くの国民の1人1人が、自律的に豊かさを追求できるようにしていく政策こそが、政治に求められているのではないか。
その意味で、今回の補正予算には、今述べた給付措置等以外に、医療提供体制の大幅な充実や新たな生活様式への対応、予備費の積み増し等、新たな施策を講じるための予算も組まれている。
政府には、この予算を利用して、秋冬にも予想される第2波の流行があった場合でも、経済を縮小させなくても良い政策を大胆に進めていただくことを期待したい。
私は、5月14日の党政務調査会への意見具申や5月7日及び20日の新型コロナ対策本部会合において、累次にわたって具体的な意見を申し上げてきた。以下その一端を述べよう。

1 何故日本国民はコロナを恐れるのか

政府の施策の効果か、あるいは衛生面に気を配る国民性によるものか、その理由は今後検証してみる必要があるとしても、我が国は、今のところ、新型コロナ感染症による感染者数・死者数とも、諸外国と比べれば少ない水準で推移している。
しかし、国民が新型コロナ感染症に対して抱く恐怖感は、諸外国の水準よりもはるかに高いように思うのは、私だけではあるまい。
実際、発熱や咳の症状のある方とは、一定の距離を置く防衛策も取り得ようが、今回の新型コロナ感染症は、無症状の陽性者の中に、感染力を持つ方がいることが明らかになっており、防衛策がとれない現状にある。
このため、私たちは、家族、同僚、友人、その他の方々等々、家庭や職場、街頭や通勤、あるいは飲食店や繁華街で接触する全ての人たちを、「もしかしたら新型コロナ感染症に感染しているの」と疑って、恐れざるを得ない。だから8割の接触削減とか、営業自粛ということになる。
ここで、「無症状の陽性者」を判別することができれば、このような恐怖感は大いに減殺されるわけだ。
しかしながら現状では、「無症状の陽性者」に対するPCR検査は、症状のある陽性者の濃厚接触者以外はできない仕組みになっており、今後、もしも第2波の流行が訪れたときには、現行検査・医療の仕組みを維持すれば、再び経済が萎縮してしまうのは必至だ。

2 まずは医療提供体制の異次元の拡充が必要

それならば、国民全部がPCR検査を受けられるようにすれば良いという意見もある。
ただ、ことはそれほど単純ではない。
5月21日現在の数字だが、我が国には、新型コロナ感染症に対応する病床の数は、17,698しかない。ちなみに軽症者の入所を想定した、借り上げの宿泊施設の受け入れ可能室数は、19,430だが、これには289人しか収容されていない。
5月下旬には、感染者数の増加が大分落ち着いてきていたため、病床数の余裕が出てきたが、一時期は、逼迫一歩手前の状況になってしまったのはご案内のとおりだ。
4月並、あるいはそれ以上の第2波の流行が到来した場合に、PCR検査を希望者全員に行って、陽性者を病院ないし宿泊施設に収容させることとなれば、上の数字では足りないのは明らかだ。

だからこれまでのPCR検査を、症状があり医師が必要と認めた方に絞ってきたことにいて、私はことさらそれを非難するつもりはない。要は、これからが大切だ。そして、今後の検査の拡充のために重要なのは、まずは医療提供体制、わけても収容病床の異次元の拡充だ。

その中で、軽症者を収容するための宿泊施設をさらに確保しておけば良いという意見がある。ただ、私は反対だ。理由は大きく2つある。
第1に、宿泊施設は、陰圧換気等、感染者の滞在を前提として作られていない。また、医療機関ではないため感染者に措置入院を命ずることができず、自宅に帰ってしまう感染者もいると聞く。
第2に、第2波がきても、経済の回復を持続させることが政治の責任とすれば、当然、宿泊施設はしっかりと本業で稼働していただいていなければならない。宿泊施設に閑古鳥が鳴く状況が継続し、経済の萎縮が継続している状況を想定して、宿泊施設を想定した軽症者収容施設の確保を図るべきではない。

そこで私が、5月7日の新型コロナ感染症対策本部会合で提案したのが、「野戦病院」方式だ。その後もいろいろなとこで提案している。
すなわち、大型のテント、簡易の病床、医療機器を、少なくとも10万床確保(現状は1万8千)し、医療従事者の手当もしておけば、本年4月並、あるいはそれ以上の流行が我が国を襲ったとしても、十分な病床の確保ができ、PCR検査の数を増やしいていくことが可能になる。
設置場所は、国公立の都市公園等を想定すれば、いくらでもある。 現実に、米中は、野戦病院方式を実行に移した。

3 検査、特に「抗原検査」の抜本的拡充

このような病床数の確保(あるいは備蓄と言っても良いかも知れない。)を行えば、PCR検査数の数を、大幅に拡大することができる。
ただ、5月15日現在、PCR検査の可能数は1日2万2千件だ。これを10万件に拡大したとしても、日本人全員を検査するには、約4年弱かかってしまう。
PCR検査は、遺伝子検査であり時間も手間もかかるため、現実的には、まずは発熱や咳の症状が少しでもある方が検査を受けられるようにするということが基本だろう。
特に、秋冬には、普通の風邪や、インフルエンザも蔓延しやすいため、発熱や咳の症状が少しでもある方の数は極めて多くなり、PCR検査体制を抜本的に拡充したとしても、症状のある方だけで手一杯となる可能性があるからだ。

しかしそれだと、無症状の方、特に、無症状の陽性者を発見するすべがなくなってしまう。
そこで私が着目しているのは、5月に薬事承認された「抗原検査」だ(私たちが受けるインフルエンザの検査は、この抗原検査で、採血後15分程度での簡易の判定が可能)。
PCR検査、抗原検査のいずれも、「偽陰性」(実は陽性なのに陰性と判定されること)が検出されることが知られている。
巷間言われているのは、この偽陰性が、PCR検査の場合は5パーセント程度、抗原検査の場合は2割から1割程度検出されるそうで、抗原検査の方が精度が良くない。

それでも、効果がないかというと、全くそうではないようだ。
5月20日の予算委員会で、政府の専門家会議座長で、国立感染症研究所の脇田隆字所長が、次のような陳述を行っている。少し長くなるが、正確を期すため、引用してみよう。
「 PCRにつきましても、長所と短所があって、抗原検査についても、勿論そのようになります。
ですから、抗原検査の利点といいますのは、非常に短時間で診断ができるということですから、患者さんが検査のところにいらっしゃって、その場で検査ができる。これはインフルエンザの迅速診断と同じになります。
ですから、その方はすぐに診断されて、もし陽性であれば入院されるということになります。
一方で、感度がPCR検査ほど高くありませんので、陰性になった場合でも、その方が新型コロナに感染していないという証明にはなりませんので、PCR検査を実施するということになろうかと思います。
で、もう一つ抗原検査のよろしいところ、利点といいますと、やはり感度がPCRよりは低いわけですけれども、どうやらウィルス量の多い人が検出されますので、感染性が強い人が検出いると(ママ)、そういう方が早く診断されて病院に入院していただくと。それから濃厚接触者の探索につきましても、より感染性の高い方を早期に隔離ができる。
ですから、そういったところでの使い分けをしていくことになろうかと思います。」
この陳述は、主として症状のある方について、抗原検査とPCR検査をどのように使い分けるかという文脈で語られたわけだが、この陳述に基づけば、無症状の方に抗原検査を実施すれば、少なくとも感染性の強い無症状の陽性者を特定できるということになる。

現在抗原検査については、症状のある方について行い、その限りで保険適用となっている。だから、無症状の方が検査を受けることは、基本的にできない。

そこで、無症状の方については、保険適用を外して、一般の健康診断と同様に、希望する方全てが検査を受けられるようにすべきというのが私の意見だ。(発熱や咳などの症状のある方は、全てPCR検査に回っていることが前提だが。)量産化すれば1回千~2千円程度で検査が可能になるのではないか。それこそ国の支援次第だ。

このような政策を推進すれば、例えばある会社の社員全員(無症状)が抗原検査を受けるというケースが多くなると思う。
そして、無症状の陽性判定者に一定期間の自宅待機(健康状態によっては一定期間の入院。陽性判明後保険適用となるのは、健康診断や人間ドックと同じ。)をお願いすれば、出勤する社員の方々は、基本的には感染力が低いと推定できるわけで、具体的には、建設現場の肉体労働で、ことさらマスクをつける必要性が少なくなるなど、仕事での安心感は格段に高まる。
このように、PCR検査の抜本的拡充と並行して、抗原検査キットの量産化は、経済活動を行う上での安心を確保するために、極めて重要だ。
そして、第2次補正予算は、こういった前向きの施策に活用されるべきだし、このような、保険適用のない簡易検査の拡充については、よもや医師会も反対しずらいのではないかと思う。

4 おわりに

ところで、私の弟は、現在、都内のとある医大で、感染症(呼吸器内科)の教授を務め、新型コロナ感染症と、最前線で戦っている。
私は、党の会議等で発言をする前には、弟に、現場の実情を聞くようにしている。ただ彼は、エビデンスに基づく事実以外は、それほど多くは語らない。ある意味でプロの矜恃だろう。
今回のコラムで申し上げたことは、私が素人として考えたことで、弟の意見ではないことを断っておきたいが、医療現場の実情とかけ離れたことを申し上げているわけでもないと考えている。

さて私は、5月7日の党の新型コロナ対策会議で初めて、①「野戦病院備蓄」10万床構想、②「抗原検査」の積極活用を提案した。ただ、そんな意見を言ったのは私1人だった。
その他の議員は、「もっと給付を増やせ」、「百兆円ばらまけ」などの大合唱。

 

彼らの意見を否定するわけではないが、今私は、自民党の若手と称する人たちが、自分の選挙だけでなく、本当に日本の将来を考えているのか、いささか複雑な気持ちになっている。「売り上げが減れば粗利保証」を叫べは選挙には有利だろう。でも、第2波、第3波の流行が来たときも、同じようにできるのか。冒頭述べたように、私たちは、「1億総公務員化」の道を歩いてはいけないのだ。災害に強いだけでなく感染症にも強い強靱な日本を創るという気概こそが、政治に求められているのではないか。

いずれにせよ、新型コロナ感染症の新規感染者数がある程度落ち着いている今という時期が大切だ。それでも救いなのは、最初は突拍子もないとみられていた私のアイディアが、5月下旬の最近になって、財務省や厚労省の役人の中で、ようやく理解が広まりつつあることだ。捨てたのではない。私は、あきらめずに、引き続き活動を続けていく。

その上で、たとえ秋口に第2波の流行が訪れたとしても、緊急事態宣言を発しなくても良いようにするためには何をすべきか、さらに、経済を萎縮させず、その回復基調を継続させるためには何をすべきかを真剣に考え、大胆に実行に移していくこと。このことこそが、政治の責任だと思う。