地方の自立力を強化するために~総務部会長としての取り組み

2016-12-31

来年度予算の大臣折衝へ高市大臣を送り出す総務部会

先のコラムでも述べたが、私は、平成28年8月、自由民主党総務部会長に就任した。
総務部会長は、旧自治省、郵政省及び総務庁が担当していた政策分野の責任者となる。
そして、毎年11月から12月にかけ、自民党では、翌年度の税制や予算について、税制調査会や政調全体会議の場で、活発な議論が繰り広げられることとなるが、この時期、総務部会長は、各部会長の中でも、最も忙しい部会長の1人となる。
すなわち、税制では、地方の税財源を確保する立場から、各部会の税制改正(減税)要望に対抗する論陣を張ったり、ICTや郵政事業を活性化する立場から、国税についての減税をお願いしたりする。
また、予算では、約30兆円の社会保障費に次ぐ規模となる約16兆円の地方交付税交付金の確保が、重要な課題になる。
そして、このような年末の業務を終え、年を越した後は、将来に向け、どうやって地方の自立力を強化するかという仕事が待っている。

(自民党税制調査会における議論)

自民党では、毎年、11月下旬から12月半ばにかけて、ほぼ連日、税制調査会の会議が催され、翌年の税制を決定していく。
地方の税財源を確保するために私が行った議論を2つほど紹介しよう。
まず、ゴルフ場利用税という税金がある。ゴルファーがゴルフ場を利用する際、1人平均700円弱を徴収するものだ。年間500億円弱の7割がゴルフ場所在の市町村に交付され、その貴重な財源となっている。
この税金について、文部科学部会長から、「ゴルフはオリンピック種目でもあり、スポーツに課税するのはおかしい。」という廃止要望が出された。
これに対しては、「まず、ゴルフ練習場には課税されておらず、スポーツに対する課税ではない。そして、もしもゴルフ場の利用を所在市町村民のみに限定するという法律を文部科学部会が成立させるなら(そんなことはできるはずがない。)、廃止要望は理解できないでもないが、他の市町村の方がプレーされることに伴う、道路の維持、廃棄物処理、防火防災などの行政コストを、ゴルフ場所在の市町村民の住民税でまかなうのは不合理である。」などと反論する。

また、固定資産税という税金がある。土地、家屋や一定の資産に課されるもので、同じく市町村の貴重な財源だ。
これについて、農林部会長から、「TPP関連対策の一環で、農業の資材価格などのコスト縮減に、国を挙げて取り組んでいる。合併するなどして合理的な経営を行う資材メーカー等について、固定資産税を減免してほしい。」という要望が出される。
これに対しては、「国の主導で合意したTPPへの対策の一環で、そのような資材メーカーの法人税などの国税を減免することには私も賛成だ。しかし、なぜ地方の固有の税財源を削ろうとするのか。また、固定資産税は行政コストに対する正当な対価であり、これを支払わないようなコスト意識の低い企業が、本気でコスト縮減に取り組むとは思えない。さらに、先の予算委員会で、農林水産大臣も、企業がリベートを受け取る場合、一般的には、価格を下げるよりも自らポケットしてしまうのではと答弁されているではないか。毎年の固定資産税を減免しても、価格下げに反映される保証はどこにもない。」などと反論するといった具合だ。

これでも相当省略して紹介したわけだが、それぞれの税金については、当然、数次にわたり論陣を張った。
そして、このほかにも、自動車取得税、郵政事業に係る消費税、研究投資減税、酒税、配偶者控除の見直しなどについて、丁々発止の議論を行い、自民党の税制改正大綱がとりまとめらた。

(地方財政と糸魚川大火)

本年の税制改正大綱は、12月8日にとりまとめられたが、それに続くのが、平成29年度当初予算の編成だ。
平成28年は、税収実績が、当初見通しよりも1.7兆円下回ることとなった。これは、今年前半の円高による企業収益の悪化が響いたものだ。
そんな中、約62兆円に上る地方の一般財源総額を確保するのは、結構至難の業だ。しかも、一般財源総額を前年と同額確保できたとしても、地方における社会保障費の当然増が4000億円ほどあり、結果として、地方の活性化のために効果がある地方単独事業費が減少してしまうこととなってしまう。
それでも、財政当局との折衝を繰り返し、特別会計からの自助努力による財源の捻出も工夫したことに加え、いわゆるトランプ相場で、年末に向け、為替は円安に振れ、来年度の税収見通しが本年を上回ったことも幸いし、昨年を上回る一般財源総額を確保することができ、ようやくほっとした。
大臣折衝が12月19日、政府予算案の閣議決定が22日、これでようやく年末かと思ったら、22日には、糸魚川市大火の一報が入った。
折からのフェーン現象による強風にあおられ、火災はごく短時間で延焼、糸魚川市の中心市街地の144棟が全焼するという大災害となった。
年末を控え、被災された皆様に、心からお見舞いを申し上げたい。
火災ということもあり、政務調査会では、総務部会がこの件を担当、二階幹事長も出席され、党の災害対策特別委員会との合同会議を27日と30日の2回にわたり開催した。
これを受け、政府においても、被災者生活支援法の適用を決定、正月を控え、被災者の皆様に、いささかなりとも朗報を届けることができたのは、良かったと思う。

(地方の自立力を強化するために)

以上のように、総務部会長としては、何かと慌ただしい年末を過ごしたが、税制や予算を通じて感じたことは、地方財政が、極めて厳しい状況にあるということだ。
本年こそ、特別会計からの自助努力による捻出や、トランプ効果による年末の円安に助けられ、地方の税財源を確保することができたが、自助努力はもう限界に近づいているし、英国のEU離脱や中国経済の動向など、世界経済の先行きは依然として不透明だ。

実際私も、地方の安定的な税財源を確保するためには、平成30年の消費税率の引き上げは、避けて通れないということを痛感させられた。
そのためにも、来年は、地方の行政経費を無理のない形で、どのように縮減していくかという課題に取り組まなければならない。
例えば、現在、各自治体ごとに、住民票の様式も異なるし、法律で定められた定型的な行政事務のやり方も異なっている。
アナログで行政を行っていた時代はそれでも良いが、データをクラウド化して、全国どこでもワンストップのサービスを受けられるようにしたり、窓口業務を独立行政法人などに委託しようとする場合には、このことが意外と障害になっていたりする。

このほかにも、いくつか暖めている項目があるが、来年は、地方の自立力を強化するため、積極的な取り組みを進めていきたい。