対北朝鮮経済制裁は是か非か~シミュレーションチームで発表

2005-4-15

今日は対北朝鮮経済制裁の話題。

北朝鮮制裁効果の取りまとめ役に

昨年11月9日からの実務者協議で、北朝鮮側が日本政府に提供した横田めぐみさんの遺骨が偽物と分かり、俄然わが国の世論は沸騰、経済制裁必至という声が高まりつつある。

実は、自民党拉致問題対策本部(本部長 安倍晋三衆院議員)では、実務者協議に先立つ10月19日、10人のメンバーからなる「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」(座長 菅義偉衆院議員、事務局長 山本一太参院議員)を発足させた。

そして、チームの中で、警察庁や外務省勤務の経験をもとに色々発言していたら、お前詳しいようだから、では現実に制裁を行う場合の政治的効果の検証を、葉梨君、やってみろということになった。
よく言われるように、経済制裁には、国際社会によるマルチの制裁と、1国による単独制裁との2つの類型がある。
戦後は、前者のような国連安保理決議に基づく制裁が主流で、後者の単独制裁は、専ら、最終的な武力を背景とした超大国(米ソ)によるものだった。

その中で、今話題となっているのは、日本による単独制裁。

戦後政治の中ではレアなケースである。ただ一方で、拉致という国家的犯罪行為も前代未聞であることも事実。いずれにせよ私たちは、新しいコンセプトを作っていかなければならない。

また、単独制裁であっても、友好国や関係国の理解が必要なことはいうまでもない。
ところが、現状を見ると、米国はまあ理解を示してくれるかも知れないが、韓国は竹島問題で日本に突っかかり、中国は、明らかな不法行為にわたる反日暴動すら容認する始末。

そして、将来的にそんなことはないとは思うが、中・韓が経済的に北朝鮮側につけば、たとえわが国単独で経済制裁を課したとしても、抜け道ができてしまう可能性もある。
単独制裁という新しいコンセプトで、しかも隣国がこんな状況、では手詰まりか、私はそんなことはないと思う。古来、しっかりとしたメッセージを相手方に伝えないで生き延びた国はない。

それでも、チーム責任者として、経済制裁の政治的効果を検証して欲しいというマンデート(任務付与事項)は、ある意味でとんでもなく重く難しい。
そこで、菅座長らにお願いしたのは、制裁措置を何も経済制裁のみに限らず、例えば、人権法の制定、チャーター便の凍結等広く捉え、過去の国際政治史に照らして検証させて欲しいということ。ちょっと自由度を持たせてもらった。

私は、北朝鮮の国家や国民は、わが国の出方に、以外と直截に反応しているのではと思っている。
例えば、平成10年から平成14年までは、わが国に対する覚せい剤の密輸は、約3分の1が北朝鮮由来であったが、小泉総理の訪朝後、なぜか押収が皆無となった(これについては、米国務省レポートは、北朝鮮による覚せい剤密輸に、高い蓋然性による国家的関与を指摘している。)。

マンデートの手始めに、覚せい剤密輸の件は、4月13日の会合で発表させてもらったが、作業はこれからだ。

私は、しっかりとメッセージを伝える制裁措置が、政策として成り立ち得ると考えるし、これを今後、着実に、検証・立証していきたいと考えている。

大変な作業をお引き受けしたと思っている。