視聴覚障害者への大学教育を充実するために~「福祉」と「教育」

2005-4-18

今日は視聴覚障害者への大学教育の話題。

手話通訳スタジオ(筑波技術短期大HPより)

実は、わが国にただ一つの視聴覚障害者専門短期大学(国立)が、私たちの茨城県つくば市にある。その名も、筑波技術短期大学。

私も実は知らなかった。不勉強を恥じている。

今期の通常国会で、この短期大学を4年生の大学に改組する法案が上程されることになり、茨城県唯一の衆院文部科学委員である私の所に、大沼学長があいさつに来られ、そのとき初めて知った次第。

4月18日は、法案審査前に、衆院文部科学委員会による同大学への視察が行われ、私も生まれて初めて、視聴覚障害者に対する大学教育の現場を見させていただいた。
200人の学生に対し、270人の教職員。まあ恵まれている。
視覚障害・聴覚障害各部の下に、情報工学の学科等、主に理工系の学科を持つ。
現地では、いろいろな苦労を目の当たりにしつつ、話を聞きながら、「大学って何だろう」と、大いに考えさせられた。質疑応答の時間は限られている。
だから私は、歩きながら、立ち止まりながら、不躾とは思いつつも、いろいろな質問を教授陣にぶつけた。

Q「『大学』を名乗る以上、研究が必要と思うが、4年生大学となると何を研究するのか。学生を研究対象として、障害者に対する教育方法について研究していくのか。」

A「障害者に対する教育方法の研究は付属機関が行っているが、大学本体は、4年生大学。目標としては、学生を、他の健常者の学士と同じレベルに持っていき、さらにその上を目指して欲しいと思う。私も、前職は、一般大学の情報工学の教授だった。」

Q「現実問題としてそれは可能か。」

A「仕方ない面もあるが、健常者の高校に当たる盲学校や聾学校が、生徒に(学力
的に)高いレベルを要求していない傾向があり、難しい面もある。特に、聴覚障害者教育は遅れているかも知れない。
このように、入り口が低くても、出口(卒業時)には高いレベルが要求されるから、今でも、留年は、学年全体の2割強と多い。」

Q「そこまで厳しくする理由は何か。」

A「障害者に対する高等教育を続けていくためには、学生が、高等教育を受ける誇りと責任を持って欲しい。
できれば博士課程に行く学生を育てたい。既に修士課程修了の学生は多々いる。
そして、本学で大学教育を受けた学生は、少なくとも、障害者年金に頼らなくても、社会において仕事をし、自立できるようにしていきたい。本学は、授業料の約10倍の税金を頂いているのだから。」

Q「なるほど、教育と福祉は違うということか。自立のためにお金をかけることは必要。しかし、障害者に優しくすることが、健常者のマスターベーションとなってはいけないと思うがどうか。」

A「教育はほめることというが、障害者だからといってほめ過ぎるのは、かえって自立の妨げとなる面もある。
障害者が真に自立できる教育が必要だし、しかも、(今までの短期大学でなく)大学教育である以上、大学としてのレベルも重要。
そしてこれが、結果として視聴覚障害者の自信につながる。

今度また、是非、議論いたしましょう。」

他にも多々紹介したいこともあるが、極めて得ることの多い視察だった。この視察を計画された、斉藤委員長、稲葉筆頭理事に感謝。

そして、がんばれ、新生筑波技術大学(現筑波技術短期大学)。