北朝鮮人権法案の検討に着手~明確なメッセージの必要性
2005-12-22
12月16日の国連総会において、「北朝鮮の人権状況に関する決議」が、圧倒的多数により採択された。
実は、「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」でも、先月から、私が中心となって、北朝鮮に対し、「拉致問題を含む人権問題の解決がない限り、何事も先に進まない」という強いメッセージを発信するため、「北朝鮮人権法案(仮称)」の検討を進めてきた。
歴史的な国連決議を受け、国会が、北朝鮮に対する明確な意思を示す必要性は、ますます高まっている。
12月21日の「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」の会合では、私のとりまとめた「北朝鮮人権法案(仮称)」骨子案を諮り、時期通常国会提出に向け検討を進めることについての了承を得た。12月16日の国連総会決議は、拉致問題を、「強制的失踪の形態における外国人の拉致に関する未解決の問題」として、「北朝鮮における人権侵害」の1形態として明確に位置づけ、国際社会として、北朝鮮の人権状況の改善に乗り出していこうとするものだ。
そして、人権国家・国際貢献国家を標榜するわが国としても、当然のことながら、
○(わが国の国民も被害者となっている)北朝鮮における人権侵害の問題を、風化させることなく、国民的課題として捉えていくこと。
○わが国政府として可能な範囲内で、北朝鮮の人権状況に関する実態の解明や国際的理解を深めるための施策を行うこと。
などの施策を進めていくことが必要だ。
今回の「北朝鮮人権法案(仮称)」の立法化の検討は、このような問題意識から始まった。
法案の具体的内容としては、現在、
○北朝鮮における人権侵害を日本国民全体の問題として捉えるため、「北朝鮮の人権状況について考える日」(仮称)を制定すること
○北朝鮮における人権侵害に関する教育啓発に関する国及び地方公共団体の施策を定めること
○拉致問題が解決されるまでの間、政府に、北朝鮮の人権状況に関する必要な調査を求め、その結果を、「北朝鮮における人権状況に関する年次報告」として公表することを求めること
○国際的な捜査協力や、拉致被害者や脱北者支援のNGOとの連携についての規定を設けること
などを検討しており、今後さらに細部をつめていく予定だ。
これらの諸施策については、わが国としてできる範囲のものに限られてくるため、どうしても、「北朝鮮に対するストレートな制裁」というよりも、どちらかというと観念的という批判もあろう。
しかし、わが国が法律のレベルで、特定の国(北朝鮮)を「人権侵害国家」と認定するのは、もちろん歴史上初めてだ。
このことは、対外的には、「拉致も含む人権問題の解決なくして国交正常化はあり得ない」という強い国民の意思を、改めて北朝鮮政府に示すことになる。
さらに、対内的には、拉致問題を風化させないという国家としての決意を示すことで、拉致被害者・特定失踪者及びその関係者を、大いに勇気づけることができると思う。
ただ何分にも、このようなスキームの法案は、わが国にとっては前代未聞、外交上のフリーハンドを重視する方々からは、「ありがた迷惑」と忌避される可能性もないではない。
それでも、私自身は、「北朝鮮の拉致問題・核問題の解決のために進展が見られなければ、経済制裁も辞さない」というわが国の姿勢の本気さを相手方に示すとともに、経済制裁を行った場合の国際社会の理解を得やすくする意味からも、12月16日の国連総会決議を受け、このような法案を検討し、成立させていくことは、極めて大切なことと考えている。
年明けから本格的な作業に入っていこう。