特別会計改革~「官僚の便利なポケット」からの脱却

2005-12-26

12月24日に閣議決定された平成18年度予算は、小泉内閣最後の予算となる「財政再建予算」。

関係全省の官房長に特別会計改革への協力を要請

そして、同じ閣議で、私が党の行政改革本部幹事として取り組んできた「特別会計改革」を盛り込んだ「行政改革の重要方針」も決定された。
国の予算には、「一般会計」のほかに、「特別会計」というものがある。
実は、マスコミで報道される「予算」は、「一般会計」のみだ。
ところが、「一般会計」の歳出・歳入総額が約80兆円(税収+新規国債)なのに対し、予算規模では、31個もある「特別会計」の歳出総額は、約400兆円。何と「一般会計」の5倍だ!
こんな数字を見せられれば、「特別会計って一体何をやっているんだ」、「官僚の便利なポケットではないか」という疑問が出るのも当然のことだ。
塩川正十郎元財務大臣も、「特別会計」のことを、「母屋(一般会計)は雑炊でがまんしているの離れですきやき」と評している。党の行政改革本部では、11月来、数名の同僚とともにチームを組み、私自身も、公共事業関係特会(道路、治水、港湾及び空港整備の4特会)の責任者として、特別会計改革に取り組んできた。
ところで、冒頭「特別会計の歳出合計額400兆円」と述べたが、これには特別会計同士の繰り入れ(書類上のやりくり)など、いわゆる「重複分」も計上されており、これを除いた純歳出額は約200兆円となる。しかし、それでも巨大だ。

なぜこんな多額の「特別会計」が必要かというと、行政府の名誉のために敢えて言うと、やはり主に技術的理由による。

例えば、年間約30兆円強発行される新規国債は、新たな国民負担であるため、「本予算」とも言うべき「一般会計」に計上される。
しかし、700兆円に上る既発行国債(主力は10年もの)の償還の方はどうなっているのか、考える人は案外少ない。
今の仕組みでは、既発国債の満期ごとに、満期償還額に見合う「借り換え債」という国債が発行され、その売り上げ金が、払い戻しに支出される。議論はあろうが、ここで新たな国民負担は発生しない。
これが、平成17年度は約75兆円の、「借換債・債務償還費」。このような収支は、新たな国民負担分を計上する「本予算」と区分けしないと、数字がごっちゃになってしまう。

そのほか、今、年金保険料や健康保険料を原資に、年金を給付し、診療報酬を支払っているが、これも保険料支払い者との関係で、本予算との区分が必要だろう。この規模も年間45兆円。
個々に論じればきりはないが、「特別会計」が置かれた当時は、区分会計にする、それなりの理由はあった(もっとも、明らかに「各省の官僚が良い思いをしたい」からできたのではと疑われるものもあるし、そもそも31とは、数が多すぎる。)。

でも、塩川元大臣の、「母屋」と「離れ」とのたとえはよく言ったもの。
そういう面は大いにある。
実は、各省庁がある程度自前の財源を調達してくれる「特別会計」は、徴税に頭を悩ます財務省にとっては、有り難い面もある。だから、財務省段階での支出「査定」は、どうしても甘くなり勝ちで、例えば保養施設など、余計な事業にお金が支出されてもきた。
さらに、毎年暮れの次年度予算閣議決定時に、新聞記事に踊るのは、「本予算」である「一般会計」ばかり。「特別会計」の中では、せいぜい「財政投融資」と「地方交付税」が記事になる程度で、国民の関心も低く、余り文句も来ない。
そして、国会審議でも、「特別会計予算書」なるものが、各議員に配付されるが、分かりにくいため、与野党議員からほとんど質疑されることなく、いつの間にか国会で予算が成立してしまう。
だから、「特別会計」を「官僚の便利なポケット」にしてしまった責任は、当事者たる各省官僚だけでなく、財務省・マスコミ・国会議員にもある。ともに責任を自覚しなければなるまい。

もっとも、私は、良くマスコミが言うように、「離れ」すなわち「特別会計」を廃止すればそれですむという乱暴な改革論は唱えない。しかし、今後、「離れですきやき」問題が起きないよう、現実的、かつ、徹底的な改革が必須だ。
そのためには、まず、「隠れ家」的な「離れ」をなくすため、特別会計の数を大幅に整理合理化することが大切だ。
次に、「母屋」と「離れ」の間の廊下の見通しを良くするため、「一般会計予算」による財政規律を強くし、マスコミ報道や国会審議を活発化することも必要だ。
そして、「離れ」を独立王国としないため、その造作、すなわち、予算の説明の仕方や事務事業への支出の仕方に、しっかりとした統一基準を持たせ、透明性や一覧性を確保することも重要だ。
私も、このような考え方に基づき、今回の改革の議論に加わり、24日の閣議決定となったわけだ。
来年以降は、いよいよ実施計画のつめに入っていく。