戦略産業としての畜産・酪農(1)~平成19年度の畜酪政策を決定

2007-3-18

H19年度畜産・酪農対策を報告

3月8日の、畜産酪農対策小委員会。
畜産・酪農関係対策は、一般会計とは別に、毎年この時期に決定する。自民党では、3月2日来、私が委員長を務めるこの小委員会を連日開催、侃々諤々の議論を繰り広げてきた。
この日は、決定すべき施策につき、全会一致で了承を得た。
さて、我々が日々口にする、肉、ミルク、卵を生産するわが国の畜産・酪農業は、今、内外に大きな課題を抱えている。
この中で、対外的には、昨年交渉入りに合意した日豪EPA(経済連携協定)の問題などがある。
仮に、畜酪産品関税の完全撤廃などということになれば、わが国の畜産・酪農農家は壊滅してしまう。何としても避けねばならない。
政府には、断固たる立場で交渉に臨むことを望みたいが、併せて、わが国の畜産・酪農業を、国として何故守らなければならないか、国民(消費者)の理解を得ていく努力こそが大切だ。

なぜならば、これは、決して生産者の利益の問題だけではないからだ。まず、今我々自民党が、畜産・酪農業も含めたわが国農業の分野で、待ったなしの構造改革を進めていることを消費者の方にも伝えていかなければならない。
現在民主党が主張しているように、高齢・小規模・兼業形態の農家にお金をバラまいて現状を固定化してしまったら、高コスト構造だけが残り、後継者は勿論育たない。
我々は、目先の有権者の歓心を買うため、10数年たったら、農村に耕す人がいなくなってしまうような無責任な政策を、真顔で主張するほど人が悪くない。
額に汗して、農業で生きていこうという、より若い世代の農家を育て、応援しようとするのが現在の構造改革で、我々は、この政策を、現場での消化不良が心配される位の早いスピードで進めている。
そして、この改革は、安全・安心でリーゾナブルな価格の農産品を提供することに通じ、消費者の利益ともマッチする。
ところが、このような改革を施しても、相手が豪州となると、対等に競争できるまでに日本農業の基盤を強化することは不可能だ。
何せ今、彼我の農家一戸当たりの耕作面積の差は1900倍、とても太刀打ちできない。
関税撤廃となると、畜産・酪農業等が壊滅的打撃を受ける所以だ。

それでも、安い肉やミルクが手に入ればそれはそれという考え方もあるかも知れない。何故、わが国は、国内の畜産・酪農業を育てていかなければならないのだろうか。

第1は、「食の安全・安心の確保」という観点。
畜産物には、どうしても、全世界的に、動物の疾病の問題がつきまとう。鳥インフルエンザ、豚コレラ、BSE等々、食肉等は、消費者の口に入るものだけに、細心の注意を払わねばならない。
また、新鮮なミルクは、遠方から輸入するわけにもいかない。
このため、わが国の消費者に、安全で安心な動物性タンパクを提供するという観点から、わが国の消費者に見える形で、必要な生産基盤を確保しておくことが大切になる。
そして、併せて、肉用に改良が加えられてきた日本独自の種である和牛資源は、わが国の知的財産としても、大事にしていかなければなるまい。

第2は、「地域の活力のために必要」という観点。
畜産・酪農業の場合、肉にしても、ミルクにしても、コメや野菜と異なり、食肉処理場や乳業メーカーの工場を通さなければ、消費者の手元に届かない。これは全世界共通のシステムだ。
このことは、純然たる農家以外にも、より多くの雇用が創出されていることを意味する。だから、主産地である北海道や南九州などでは、畜産・酪農業の将来は、地域の雇用・活力の問題に直結する。
また、家畜は、スイスなどの山岳地帯でも草を喰んでくれる。同じように、日本の家畜も、冷涼な原野でも、高齢化の進む国境の離島でも、草を喰んでくれる。
畜産・酪農業は、このような条件不利地で、産業を成り立たせ、人の生活を維持するためには、やはり重要な産業だ。

第3は、「国土・農地の保全のために必須」という観点。
家畜の中でも、牛の場合、豚や鶏と異なり、草を喰み、稲わらを食べても、これを栄養にしてしまうという身体構造を持っている。
時折、「日本産の肉やミルクの消費を拡大しても、エサを外国からの輸入に頼っているから、食糧自給率が向上しない。」とか、「それなら外国から、安い産品を輸入しても同じ。」という声も聞く。
食の安全安心の項でも述べたように、牛だけでなく豚・鶏を含め、肉を全て輸入せよというのは、いかにも暴論だ。そして、それに加えて、例えば牛の場合は、勿論輸入飼料もあるものの、わが国の牧草、わが国の稲わらなどを飼料にしていること、豚・鶏の場合は、現在残飯の飼料化に力を入れていることを、もっと国民に知ってもらうべきと思う。
現に、例えば北海道においては、輸入に頼らない飼料基盤確立への努力が、着々と進んでいる。
農業の構造改革を進めているといっても、農民は高齢化、条件不利地を中心に、離農・耕作放棄は趨勢としては増えてこよう。ただ、それでは、日本の国土・農地保全が心配だ。
そんなときは、私は、先の「地域活力」の項でも述べたように、特に条件不利地でこそ「家畜に頑張ってもらう」ことが必要と思う。
日本の国土・農地の保全のためにも、これからの畜産・酪農業には、もっと頑張っていただくことが大切なのではないか。

以上のようなことを、より多くの国民に理解して欲しい。
ただ、そのためには、私は、畜産・酪農政策自体も、畜産・酪農業が、国民に支持される戦略産業として明確に位置づけられるように組み立てていくことが大切だと考えている。