戦略産業としての畜産・酪農(2)~責任をもち議論し行動する自民党

2007-3-19

畜・酪小委員会の模様

先のコラムでは、畜産・酪農業の戦略的重要性についてマクロ的に述べた。
今回は、平成19年度の畜産・酪農政策を決定するに当たって考慮しなければならなかった諸課題のうち、大きく3点について触れてみたい。
第1は、この数ヶ月間の飼料(エサ)価格の急騰の問題。
そして第2は、飲用乳等の消費落ち込みによる生乳の需要・供給のミスマッチの問題。
さらに第3は、宮崎・岡山でも発生を見た鳥インフルエンザなどの家畜の疾病対策をはじめとした食の安全・安心の問題だ。
これらは、いずれも複雑に絡み合った根の深いもので、本年の畜産・酪農政策の議論では、これらの諸課題が一挙に噴出した観があった。
だからこそ、この小委員会、「小」と名は付いているが、毎回50人を超える国会議員の参加を得、熱心、かつ、責任ある議論を繰り広げられてきた。

そして、今回の対策の決定に至ったわけだ。まず、飼料価格の高騰の問題。
配合飼料の主原料である輸入トウモロコシは、昨年秋口から高騰、本年初めには、昨年夏と比べ、2倍もの水準になった。
これは、豪州の干ばつや投機筋資金の影響も取りざたされているが、気がかりなのは、トウモロコシの相当量が、ガソリン代替燃料であるバイオエタノールの原料に使用され始めたということだ。
バイオエタノール需要が伸びれば、トウモロコシの価格が高止まりする可能性も否定できず、この場合、配合飼料価格も高止まりするおそれもあり、今、農家の間に、将来への不安が高まっている。
この問題については、前回コラムで述べたように、やはり、「畜産・酪農が国土・農地保全のために必須」ということを国民に分かっていただくためにも、配合飼料だけに頼るのでなく、土地に根ざした自給飼料の増産や残飯の飼料化を、徹底して進める必要がある。
これが本年措置した飼料自給率向上対策(約320億円)だ。
ただ、飼料自給率の向上は、どうしても何年かの時間がかかる。
その間に赤字を抱えての離農が発生し、生産手段である生き物がいなくなってしまったら、とりかえしのつかないことになる。
だから、緊急・当面の措置として、飼料価格高騰で赤字が発生した場合、一定額の資金を低利融資する制度も、今回新設することとした。
もっとも、飼料価格については、下落する要素もないではない。ただ、高止まりの可能性も否定できない以上、状況に応じた対策を講じることが必要だ。
このため、畜産・酪農対策小委員会を、6月を目途に再び開催、フォローアップを行い、必要に応じ、総合的な対策の検討を進めることとした。

次に、生乳需給のミスマッチの問題。
現在、飲用乳・加工乳(脱脂粉乳・バター)の需要が低迷、国産の生乳はだぶつき気味だが、その一方、わが国は、チーズなどの乳製品を外国から大量に輸入している。
このため、現在、乳業メーカー各社は、国産生乳を原料とした新規のチーズ工場の設備投資に乗り出している。
ここまで読めば、飲用乳・加工乳向けの生乳をチーズ向けに振り向ければ良いだけに思えるが、ことは必ずしも単純でない。
輸入品との競合の影響(品目によって関税率が異なる)などで、メーカーの買い入れ価格は、飲用乳向け、加工乳向け、チーズ向けの順で高く、このうち、加工乳向けやチーズ向けの世界は、コスト割れの懸念もあるぐらい安い。
このうち、加工乳向けの生乳には、従来、一定の生産量について補給金を支給し、コスト割れを防いできた。
その一方、チーズ向け生乳にも、奨励金を交付しているが、これを加算した乳価でも、加工乳向けよりもさらに低いのが現状だ。
それでも私は、将来の需給を考えると、飲用乳・加工乳の消費拡大に全力で取り組む一方、やはり、チーズ向けへの増産を促進し、今よりも低い乳価での出荷に耐えられる酪農家を育てる構造改革を進めることが必要と考えている。
ただ、現在の酪農家の生産意欲を損なわない配慮も大切だ。
このため、加工乳向けの補給金については、直近の飼料価格の高騰を反映して増額するとともに、補給金を支給する加工乳の総量については、前年度の203万トンから、198万トンと、減産基調ではあるが微減に止め、生産意欲に水を差さなぬよう配慮した。
さらに、チーズ対策については、3年後のチーズ工場本格稼働時には、現在よりも42万トン多い生乳がチーズ向けに向けられることを見込み、これに対応した奨励金の所要額を確保、チーズ向け増産に向けた経営構造改革推進への下地を作った。
私は、酪農家の皆さんが、構造改革に努力するのは勿論、今後是非、乳業メーカーとも協力して、地域の活力を担う存在となることを強く望みたい。

最後は、食の安全・安心確保の問題。
今回の畜産・酪農対策小委員会では、飼料対策・生乳需給対策などについて、今後とも適切な時期に検討を加える旨の異例の決議を行ったが、その中に、家畜の疾病対策も盛り込むこととした。
畜産・酪農業を戦略産業として育てる以上、「食の安全・安心の確保」は、避けて通れない課題だからだ。
また併せて、BSE関連で、と畜場において、牛のせき柱を適切に除去するための対策も講じさせていただいた。

以上、本年の畜産・酪農政策の一端を書いてきたが、役所の方々にも本当に頑張ってもらったおかげで、良い対策となったと思う。
しかし、畜産・酪農を巡る情勢の厳しさを考えると、これからの方がむしろ大変だ。
生産者の方にも改革を進めていただかなければならないが、我々自民党も、責任をもって対応しなければならない。だからこそ、本年は、小委員会を、適切な時期に開催すべきことを決議したわけだ。
そして、対策の報告の最後を、私は、次の言葉で締めくくった。
「今回の決定を受け、生産者の皆さんには、さらに構造改革に取り組んでいただきたい。
そして、是非一線の農家の方々に伝え、分かって欲しいことがある。
我々自民党は、野党の方のように、選挙目当ての、できもしないことを主張することはできない。しかし、この数日の議論でもおわかりのように、私達は、責任をもって議論し、責任をもって行動していくということだ。
生産者の皆さん、私達と一緒に、消費者の理解を得つつ、しっかりした改革を進めて参りましょう。」