「真の与党力」が試される自民党~「信用力」、「説明力」、「攻撃力」

2007-8-7

参院選街頭演説(in広島)

7月29日投開票の第21回参議院議員選挙は、与党の惨敗、自民党は、改選前議席を27議席も下回る37議席と、大敗北だった。
この結果は重く受け止めなければならない。
今回の選挙では、年初来議論となっていた憲法・教育といった問題はかすんでしまい、選挙直前に、全ての国民のフトコロに関係のある、「宙に浮いた年金問題」がクローズアップされてきた。
そこで、与党としても、年金問題等への包括的対策を決定し、7月始め、いよいよ反転攻勢を試みた矢先に、一部閣僚による、原爆「しょうがない」発言や絆創膏「なんでもない」発言などが重なり、攻守ところを代えることなく投票日を迎えたという印象がある。
ただ私は、こういった個別事情よりも、今回の選挙結果は、自民党の「与党力」に対し、疑問を突きつけられたものと、極めて真剣に考えていかなければならないと思う。
多くの国民は、最近どうもだらしない自民党に、「しっかりしろ」という、叱責を与えたわけだ。
だからこそ我々は、原点に立ち帰り、「真の与党力」を培い、国民の信頼を勝ち得ていかなければ、党の再生はあり得ない。「与党力」として回復しなければならないのが「信用力」だ。
わが国の国民は賢明だ。今や、国も、地方も、極めて財政が厳しいことは、誰もが知っている。

だから、民主党さんがいうように、年金も、農業も、児童福祉にもバラマキ的政策を講じ、それで新たな負担はないですよと言っても、信じる人はそれほど多くはないし、事実、本年5月までは、民主党の支持率も、必ずしも上昇していなかった。
これに対抗して、かつての自民党には、まあ格好良いバラマキは言わないが、「オヤジ」の目で皆に気配りしつつ、「それなりに」救ってくれるという、ある意味での安心感があったような気がする。
その自民党が今回、国民の目に、頼りなく映った。
矢継ぎ早の年金不安解消策は、「泥縄」と受け取られ、政府がいくら、「1年で必ず解決」と言っても、折からの閣僚の問題等も重なり、「あの内閣で本当にできるの」となってしまった。
さらに、赤城前農相の事務所費の問題は、6月6日の国会でも取り上げられていたのだから、何故7月7日の報道以前に、官邸・党執行部一丸となり、前農相の他の政治団体について精査し、万全の対策を講じておかなかったのか、ここら辺の危機意識・危機管理の欠如が、自民党を頼りなく見せ、「信用力」低下の一因ともなった。
そして、いくら、「年金不安解消」、「地方重視」、「農業は安心」と叫んでも、「本当かね」という反応。これでは選挙は戦えない。
「信用力」の回復のためには、この政権が、まず国民に約束した、1年間での年金不安の解消を、石にかじりついてもやり遂げることが重要だ。そして、問題が生じたときに、経験と政治的な勘に裏打ちされた反射神経を持つ体制をつくることも大切だ。

「与党力」として強化しなければならないのが、「説明力」だ。
昨年9月の安倍内閣発足後、政府・与党は、矢継ぎ早に、数多くの、「歴史的」とも言える実績を積み上げてきた。
教育基本法の抜本改正、防衛庁の省昇格、憲法改正国民投票法の制定、押しつけ的天下りあっせん禁止法の制定、社会保険庁解体法の制定などなど、玄人的に見れば、普通の内閣の3つ分位の仕事を、たった10ヶ月で成し遂げたと言って良い。
安倍総理は、「戦後レジームからの脱却のため、実績を残せば必ず国民は評価してくれる」と思っていたフシがあるが、その真面目さが裏目に出た。
それでも、前政権時代から取り組んできた教育基本法や国民投票法については、世論調査を見ても、国民のかなりの理解を得ていた。ただ、各種の改革法案については、多くの場合、率直に言って、説明力不足だったという面は否めない。
例えば、社保庁改革法などは、この法律こそが国民の年金不安を解消するために必要な外科手術だということが、どこまで国民に理解していただけたのか、実は大いに疑問だ。
そして、「歴史的で必要な法案だからこそ成立させなければ」という「意気込み」が、野党の国会対策の罠にはまり、与党が数の力で「強行採決」を繰り返すという印象を与えてしまった。
私は、これらの改革は、その順序や時期はおくとして、方向としては正しかったと思う。それだけに、党の再生のためには、何としても、「説明力」の徹底的な強化に配慮した布陣が必要だ。

「与党力」として身につけなければならないのが「攻撃力」だ。
例えば今回の選挙、民主党は、「練りに練った年金救済法案を衆院に提出したにもかかわらず、与党は審議もせずに廃案にした。」と喧伝して回った。
私から言わせれば、その中身は、看板に偽りありの「ミートホープ法案」というべきもので、今までの社保庁職員への責任追及を棚上げにし、しかも、年金不正受給のモラルハザードを促進するものでしかない。
たがらこそ、本来なら、国会の場で、与党の側が、民主党提出者に対し、その矛盾をえぐり出すような質疑を行うことが重要だったはずだ。でもこれが全然できていなかった。
だから選挙戦では、「民主党案は非現実的」、「そんなことはない」という、単なる言い合いに終わってしまい、国民の前に判断材料を与えることができなかった。
私ごとで恐縮だが、例えば昨年は、姉歯事件に絡み、民主党の長妻昭衆院議員らが提出してきた建築基準法改正案等について、正面から論争を挑み、長妻氏の詭弁を明らかにすることで、耐震偽装問題等の解決は、野党でなく、責任ある与党に任せて頂くこととなる素地を作った経験もある。我々は、こういった質疑にこそ力を入れていかなければならない。
そして、真の「与党力」を国民に理解していただくためにも、我々は、「攻撃力」を身につけていくことが必要だ。

今、自民党には、「真の与党力」が試されている。
でも、わが国の将来を担うことができるのは、やっぱり自民党しかないわけで、「真の与党力」を確立するため、私自身は、命がけで取り組んでいく。
そして、今試練に立たされている安倍政権も、単なる「続投のための続投」ではすまされない。やはり、国民に対し、「真の与党力」確立をアピールする明確なメッセージとビジョンを提示することが、絶対に必要なことと思う。