衆院予算委質疑が全国にTV中継(2)~「定額給付金」はセオリー通りの景気・生活対策

2009-2-8

衆議院予算委員会での質疑の模様

国会は、1月下旬から、麻生総理の施政方針演説、本会議での代表質問、さらに、平成21年度予算の審議に入った。
国会対策副委員長(予算委・国土交通委担当)であり、予算委員である私は、連日委員会室等に缶詰状態。
おかげで、ホームページのコラムの更新が遅れてしまったことをお詫びしたい。
さて、今回は、私が1月8日の予算委員会質疑で取り上げたもう一つのテーマである「定額給付金」について述べてみよう。
国民1人当たり1万2千円が支給される定額給付金は、平成20年度第2次補正予算に計上されたが、その本質は、「減税」にほかならない。
1月8日の質疑では、そこら辺のところに触れた。

(「減税」メニューを織り込んだ景気対策は国際的な常識)
さて、定額給付金について、良く、「2兆円のお金があれば、他の使途に使うべき」というような意見を聴くが、今回の対策で、「他の使途」にも、相当な予算を投じていることが、忘れられているきらいがある。
例えば、予算委員会の質疑でも、野党委員から、「それだけのお金があれば、地方公共団体に配り、その使途を首長に考えてもらった方が良い」といった意見も出されたが、この点については、平成20年度補正及び平成21年度予算で、地方公共団体に対し、新たに約1兆6千億円の交付金を配ることとしている。
また、「学校の耐震化」や災害対策についても、約9千億円、介護・出産・高齢者医療等支援のため約7千億円と、こちらの方にも相当な手当を行っている。

そもそも、景気対策・生活対策と言った場合、
○公共事業(今回は耐震化等に重点)による総需要拡大
○社会保障の充実(今回は、介護・出産・高齢者医療等)
○減税による個人消費の拡大
をバランス良く組み合わせていく必要がある。
すなわち、公共事業は、直接総需要の拡大に効果があるが、その恩恵を受けるのは、主として、建設事業者のみだ。
さらに、社会保障の充実による弱者対策も勿論必要だが、公共事業と社会保障のみでは、額に汗して働く一般の勤労者には、恩恵が行き渡らない。

だからこそ、今回の世界同時不況に当たり、各国は、「グリーンニューディール」などの政府支出の増加(財政出動)に加え、
○米国では、ブッシュ政権下で小切手を給付することによる戻し減税を実施、オバマ政権でも時限的な減税を実施予定
○英国では、消費税の一時的引き下げを実施
○ドイツでは、所得税減税を実施
といったように、「減税政策」を組み合わせているわけだ。

(「定額給付金」は「減税+非納税者への給付」)
そして、定額給付金は、その内容を見ると、「減税+非納税者への給付」にほかならない。

まず「減税」の部分。
わが国の所得税納税人口は、約6千万人だ。
彼らに対する減税措置として、1999年の自自公連立政権下、「定率減税」といって、所得税の2割を減税する措置がとられた。
ただこれだと、100万円納税する方は20万円の減税を受けられるが、5万円納税する方は1万円の減税ということになり、「金持ち優遇」という批判もあった(当時、25万円が減税限度額とされていたが、それでも、「金持ち優遇」の面はあったと思う。)。
このため、今回、まず考え出されたのが「定額減税」。
これは、所得の多い方も、少ない方も、一定額を減税しようというもので、いわば、所得の少ない方に対する優遇措置をビルトインした減税で、今回、定額給付金には頑強に反対している社民党も、「定額減税」には賛成していた。

次に、「非納税者への給付」の部分。
ただ、減税だけでは、所得が課税限度額を下回っている勤労者(約1千万人)の方やその家族は、恩恵を受けることができない。
そこで、このような非納税者に対しても、一定額を給付しようということになったわけだ。

このように、「定額給付金」は、「定額減税」に、「非納税者への給付」が加わったものにほかならず、もともと「定額減税」に賛成していた社民党が、何故「定額給付金」に反対するのか、理解に苦しむところだ。

(「定額給付金」は「将来の消費税上げ」とセットではない)
その社民党が、「定額給付金」に反対している大きな論拠は、「『将来の消費税上げ』とセットだからダメ」というものだ。
もっとも、「将来の消費税上げとセット」などということは、有り得ない話だし、そんなことは誰も言っていない。
将来の社会保障財源の確保ということを考えた場合、定額給付金があろうがなかろうが、消費税の議論は、避けて通れない課題だ。
そして、結果に責任を持つ政党である以上、「景気が回復した後には、消費税をお願いする」ことは隠さずに言うべきだとは思う。
ただ、税制の抜本改革や増税の実施の前提は、やはり、「行政改革の徹底」と「景気回復」であり、景気の悪いときに増税などとてもできないし、定額給付金があったからといって、税制改革の時期が早まると邪推するのは、全くナンセンスだ。

我々が今なすべきことは、公共投資・社会保障・減税などをバランス良く組み合わせた景気・生活対策だと思う。

1月8日の質疑では、
○社民党も、「定額減税」に賛成していたこと。
○「定額減税」は、そもそも「低所得者に有利な減税」であること。
○「定額給付金」は、「定額減税+非納税者への給付」であること。
○「定額給付金」と「消費税上げ」がバーターであることは有り得ないこと。
などを、社民党の委員や麻生総理への質疑を通じ、明らかにすることができたと思う。
定額給付金は、民主党の参議院におけるサボタージュで実施のための法律が成立していないため、その支給時期が遅れる可能性もあるが、一般の勤労者向けの景気・生活対策として、民主党には無駄なサボタージュ(国会を空転させることこそ「税金のムダ遣い」だと思う。)をヤメて頂き、一刻も早い支給を望みたい。