国家公務員のボーナスをこの夏から減額へ~与党プロジェクトチームで合意

2009-4-3

与党国家公務員給与PTを主宰

4月2日、私が座長を務める「国家公務員の給与に関する検討PT」が開催された。
先のコラムでも述べたが、私は、従来から、官民の給与格差は、可及的速やかに是正すべきという立場をとっており、もしも人事院勧告が間に合わない場合には、議員立法によって、概算的に国家公務員の給与を減額し、格差を是正すべきということを主張してきた。
このよう主張が認められ、与党政策責任者会議において、正式にプロジェクトチームの設置が決定し、私が、自民・公明の両党を代表して、座長に就任した。
さし当たり、今年の春期労使交渉の結果を踏まえ、国家公務員の給与水準をどのようにしていくかを検討していくわけだが、いわゆる「春闘」の妥結額は、正直言って、思っていた以上に厳しい結果となっている。
例えば、わが国を代表する企業であるトヨタ自動車は、賃金体系こそ維持、賃下げは回避されたものの、ベースアップはゼロ、ボーナスについては、前年比26.5%減と、大幅な減額となっている。自動車産業は、輸出依存率が高く、今回の経済危機の影響をモロに受けたため、軒並み20%減から30%減という特に厳しい状況になっているが、3月25日現在の妥結状況(大企業の半分程度が既に妥結)を見ると、全業種平均でも13.9%の減と、これもかなり厳しい結果だ。
今後、4月中には主要企業、5月半ばまでには中小企業の労使交渉が妥結に向かうことになるが、今年のトレンドとしては、

○各企業とも、賃金体系の維持に腐心し、基本給下げには慎重
○ボーナスについては、業績の悪化に連動し大幅にカット
といったことが指摘できる。
このように、民間のボーナスが、最終的にどれ位の下げ幅になるのか、にわかには判断しかねるが、1割以上の減額は避けられないような雲行きだ。
民間のボーナスカットが、例えば13.9%減という、現行水準のままで推移したとしよう。
この場合、仮に例年通り8月に人事院勧告がなされると、夏の国家公務員のボーナスは減額ゼロで既に支給されているため、民間との格差を是正するためには、ボーナスが夏冬同額の場合、冬のボーナスを27.8%もカットしなければならないという内容になることも予想される。
そして、これほど大幅なボーナスカットを含む給与法案は、官公労を中心にいろいろな議論を呼ぶだろうし、総選挙後にどのような国会情勢になっているか不透明ではあるが、いずれにせよ、本年11月末(12月1日が冬のボーナスの算定基準日で、減額のためには、それまでに改正法が施行されている必要がある。)までにすんなり国会で成立する保証はない。
「夏のボーナスの減額ゼロ」自体が国民のおしかりを受けかねないのに、政府与党が例年通りの作業をして、11月末までに法律が成立しませんでしたでは、結果として、給与面での国家公務員優遇を是正できないという、国民に対し、大変に申し訳ない事態も生じかねない。

このように考えると、政治家の責任として、国家公務員の夏季のボーナスから、給与の官民格差の是正を図ることができるようにしていくことが重要だ。
4月2日のプロジェクトチームでは、夏季のボーナスの減額幅を空欄にした一般職国家公務員の給与に関する法律の改正条文案を提示、今後の民間における労使交渉の推移を見極め、幅広く情報を収集し、いつでも法案を提出できる準備をしておくことを確認した。

これに加えて、今日のコラムでは、さらに2つのポイントについて述べてみたい。

1つは、議員立法の準備は準備として進めるとしても、政府の対応も促さなければならないということだ。
すなわち、一般職国家公務員の給与法を改正すれば、その影響は、約30万人の一般職国家公務員だけでなく、特別職国家公務員、地方公務員、独立行政法人職員など、数百万人(世帯)の財布に影響してくる。
だから、できれば、しっかりした調査に基づく人事院勧告を前倒しで行い、政府の責任で、夏季のボーナスからの減額措置ができるようにしてもらうことが、個人的には望ましいと考えている。
このため、本年2月に設置された自民党のPT(これも私が座長)では、私から、人事院に対し、早急な調査と前倒しの対応の必要性を述べてきた経緯もある。
4月3日の報道で、人事院が、毎年5~6月に行ってきた民間のボーナス調査を、4月に前倒しで行うことが報じられたが、これもこのような経緯を受けてのことと思う。
アトは時間との戦いで、5月末までの給与法の成立のためには(夏のボーナス算定の基準日は6月1日で、減額のためには、それまでに改正法が施行されている費用がある。)、遅くとも連休明けには法律が提出されている必要があり、そのための人事院勧告は、4月下旬にはなされなければならない。
個人的には、このようなウルトラCを期待したいが、精緻な勧告にしようとすればするほど、事務量は増え、日程はタイトになる。
だからこそ、並行して我々の議員立法の準備をしておくことが必要だし、さらに、このような準備を進めることにより、私は、政府の早期の対応を促すことにつながるものと考えている。

2つは、先のコラムにも書いたが、一般職の国家公務員のボーナスを減額すれば、自動的に、国会議員のボーナスも、同率が減額されることになるが、本当にそれで足りるのかという問題だ。
実際、冒頭述べたトヨタ自動車は、一般職員のボーナスは26.5%減だが、管理職は、その2倍の約5割の減となっている。
私は、異例の措置として、今回、国家公務員の夏季のボーナス減額を進める以上、国会議員自身も、痛みを共有しなければならないのは、当然のことと思っている。
この点についても、私たちは、国民の目線に立って、さらに議論をつめていく必要があろう。

もともと私は、公務員の給与水準自体を見直すべきという論者だ。
そして、昨年冬の民間のボーナスが4%弱減額となったことを踏まえ、「最低限でも官民給与格差を早急に是正するための受け皿を作っておかなくてどうする」と主張してきたことが、自民党PT、与党PTの立ち上げにつながり、最近政府にも動きが見えてきた。
勿論、「何だ、国家公務員のボーナスだけか」と言う方もおられようが、地方公務員も加えれば、現業を除く一般職の公務員のボーナス支給総額は、2008年夏だけで約2兆円(第一生命経済研究所レポートより)と、それはそれで結構バカにならない。
まずはこの仕事をきっちりと仕上げ、中期的には、公務員の給与水準のあり方についても、さらに検討を深めていきたいと思う。