今「日本らしさ=『底力』」をいかすとき~「力強く日本を再生する会」緊急提言を執筆

2009-4-7

麻生総理(手前)に緊急提言を説明

4月7日の自民党本部、「力強く日本を再生する会」総会が開催され、私が作成した「緊急提言」案が了承され、その日のうちに、麻生総理、細田幹事長、保利政調会長に対し提言を行った。
この議員連盟、一部マスコミに、「親麻生」の集まりなどと書かれることがあるが、私自身は、「政策は政策」、「政局は政局」と割り切っており、政局絡みの思惑は一切ない。
会長を務める今津寛衆議院議員から、「経済危機突破のための政策提言取りまとめに、是非葉梨さんの知恵を貸して欲しい」とのたっての依頼があり参加したのだが、汗をかく以上、私なりの哲学、考え方を、提言の中に盛り込んで貰わねば困ると申し上げてきた。
そして、とりまとめの最終段階で、緊急提言本文の全文を執筆して欲しいということになり、自らキーボードをたたくことになった。
さて、麻生総理が「10兆円超」と指示した今回の緊急経済対策は、理念のないバラマキであってはならない。
顧みれば、わが国は、これまで幾多の危機を乗り越えてきた。
私は、現下の危機に当たっては、まさにその「日本の強さ」の原点に立ち返り、「日本らしさ=『底力』」を最大限に引き出すことにより、未来を創造するという視点が必要と考えている。私は提言で、「日本らしさ」を形作る次の4つの要素を提示した。

①家族の絆・連帯
②地域の絆・連帯
③雇用を守る社会・経済活動
④未来を先取りする社会・経済活動
ただ、残念ながら、これら「日本の強さ」を創ってきた「日本らしさ」が、今、著しく劣化しつつある。
だからこそ、私は、「家族の絆」、「地域の絆」、「雇用を守る社会」、「未来を先取りする社会」を緊急に再構築することで、日本を力強く再生させることを提言した。以下、緊急提言の骨子を紹介する。

(「家族の絆」の再構築により日本を再生)
家族の絆・連帯の強固さは、有為の人材を育て、共助の精神を養うなど、わが国の大きな強みであった。
しかし、現在、その紐帯の崩壊が急速なスピードで進んでいる。
このため、私は、「家族の絆を再構築するための経済政策・社会保障政策」を緊急に講ずべきことを、「緊急提言」に盛り込むこととした。

まず経済政策の面では、年度途中の税制改正と新たな住宅政策等の展開だ。
今、1500兆円と言われる個人金融資産の7割を60歳以上の方が保有しているが、高齢の方には、住宅・自動車等取得のインセンティブが余りなく、これらのお金がなかなか消費に回らない。
ところが、子の世代は、住宅・自動車・教育費等の需要はあるが、金欠で、資産がない。
これを解消するためには、親が子供を応援してあげるスキームをつくることが大切で、これには、住宅、自動車、教育等向け消費のための生前贈与の無税枠拡大政策が極めて有効だ。
大変な経済危機の時代だ。今まで例のない年度途中の税制改正も、今はやるべきときと思う。
しかもこの施策は、家族内の助け合いで、決して金持ち優遇ではないし、子も、親から贈与を受けて家を買えば、近所に家を求めたり、2世帯住宅にする方も増え、社会保障費の縮減にもつながろう。

次に、家族の絆を強める社会保障政策の展開も重要だ。
例えば、現行制度では、今まで子である世帯主が納めていた保険料を、親が75歳になった途端に親が年金から払わなければならなくなるが、本当にそれでいいのかという問題、さらに、産科医療・難病対策などへの不安が、お母さん達に、子供を生むことを躊躇させてはいないかという問題だ。
このような観点から、私は、例えば75歳以上の保険料を無料にするなど、家族の絆を強化する方向で、社会保障政策を緊急に見直すべきことを提言させていただいた。

(「地域の絆」の再構築により日本を再生)
美しい農・山・漁村の存在は、日本人の心のよりどころであるとともに、例えば昭和恐慌時には、失業者を吸収する重要なセフティネットとして機能するなど、わが国の大きな強みであった。
しかしながら今、地方自治体や農・山・漁村の疲弊は著しい。
このため私は、「地域の絆を再構築するための政策の総動員」を「緊急提言」の中に盛り込むこととした。

政策を総動員して元気にすべきは、まずは「地方」だ。
現在、「地域の絆」の担い手が失われ、「ご近所力」も劣化、さらに、いわゆる「限界集落」の問題も顕在化している。
加えて、地方行財政の面でも、財政の疲弊が地域の疲弊を加速させているほか、必要な災害対策など当たり前の生活インフラすら整備できない自治体が続出、これがさらに集落の崩壊を促すという、ゆゆしき自体に直面している。
これを打開するためには、まずは、先立つもの、すなわち、財政的なテコ入れを行い、地方自治体の財政を救うとともに、整備が滞っている生活インフラ(防災や橋の維持補修等)を追加的に緊急に整備してあげることが必要だ。
その上で、私が進めている「コミュニティ活動基本法案」などを早期に制定し、住民による主体的な組織である町内会・自治会等に対するモラルサポートを行うことも必要だろう。

政策を総動員して賑わいを取り戻すべきは、農・山・漁村だ。
現在、農・山・漁村の疲弊は特に著しく、田園はまさに蕪れようとしている。
そして、帰るべきふるさとを持たない日本人は、「根無し草(デラシネ)」化し、将来への不安をつのらせている。
私は今、自民党の農業基本政策委員会の主査として、具体的な農業政策づくりをすすめているが、これらの打開のためには、「コストのみ補償」の「民主党案」では、つくづくダメダと思う。
我々は、「儲かる農林水産業」を実現するための施策メニューを示すことにより、農・山・漁村の賑わいを取り戻していきたい。

(「雇用を守る社会」の再構築により日本を再生)
宮澤元首相は、かつて、戦後の日米独の経済・金融政策の目標について、「ドイツ=(ハイパーインフレの経験から)インフレ阻止、米国=(大恐慌の経験から)株価暴落阻止、日本=雇用不安の阻止」と評した。
わが国では、最近、一部大企業を中心に雇用カットの動きが見られているが、多くの中小企業は、雇用維持のため、まだまだ歯を食いしばって頑張っている。
ところが、経済・経営環境の悪化で、「頑張りも限界」という切実な声が聞こえてきている。
このため、私は、
・特に大企業に対し、痛みを分かち合い、雇用の維持に全力を尽すよう要請すること。
・雇用を守る担い手である中小企業を、緊急に支援すること。
・経済構造の急激な変化に対応、職業能力訓練に対する補助等を抜本的に拡充するなど、緊急に雇用のミスマッチを解消する。
などのポイントを、政府への緊急提言に盛り込むこととした。

(「未来を先取りする社会」の再構築により日本を再生)
日本資本主義の父渋沢栄一氏が特に重視した「進取の気性」、すなわち、「未来を先取りする力」は、わが国発展の原動力であり、実際、わが国の企業は、バブル崩壊以前は、単年度業績重視の米国企業に比し、未来への投資を重視する傾向があると言われてきた。
しかし、グローバル化の進展等により、外国人がわが国企業の大株主となる時代が到来、日本企業も、単年度業績を重視せざるを得なくなってきている。
このような中、未来を先取りするわが国の経済社会を再構築するためには、一時的にせよ、緊急に、パブリックセクター(財政出動)の役割を拡大させることが、不可欠というか、やむをえないことのように思う。
このため私は、未来のための公共投資である1兆円規模の「未来創生事業」創設を提言に盛り込むとともに、できるだけ民間の活力・創造力の発揮を誘導するような施策を展開すべきこともあわせて提言させていただいた。

具体的な施策を説明していったら、紙数がいくらあつても足りなくなってしまうので割愛するが、私は、緊急経済対策の考え方を哲学的に整理する今回の作業は、予算の重点配分に資するとともに、無定見なバラマキを阻止するため、極めて有効と考えている。
今後、この緊急提言をもとに、大いに議論が深まり、実際に強力な政策が展開されることを期待したい。