財務省の思惑通りの税外収入(埋蔵金)~15兆円を主張した亀井金融相こそマニフェストに忠実

2009-12-30

平成22年度政府予算案は、税収の大幅な落ち込みにもかかわらず、政権が、来年の参議院選挙前に、子ども手当や高校無償化といった給付型の政策を実行することにこだわったため、92兆円を超える過去最大の大型予算となった。
そして、国の借金である国債発行額も、44兆円を超える空前の規模で、国・地方合わせた借金の残高が、初めて900兆円を上回ることになった。
債務残高が今後1000兆円に近づくと、「日本国の破産」が現実のものになりかねないのだが、このことは後のコラムで書く。
さて、毎年の予算編成では、国債発行額をできるだけ抑えるため、「税外収入の活用」、世に言う「埋蔵金の活用」が行われてきた。
22年度予算案では、その額は、10兆6千億円。
これで、民主党政権は、「埋蔵金を探し当てた」と言えるのだろうか。
答えは否だ。

「税外収入」には、例えば、日本郵政株式会社からの国庫納付金などがあり、この数年の例でいうと、毎年おおむね4兆円程度が計上されてきている。
もっとも、一部の特別会計の中には、剰余金を貯えているものがあるため、これまでも、このたまり金が、景気対策などの財源として活用されてきた。
その典型的なものが、「財政投融資特別会計」だ。

これは、国が、かつて地方公共団体などに、高い金利で貸し付けた「財政投融資」の償還金が貯まったもので、現在超低金利であるため、多額の剰余金、運用益が発生している。
ただ、この剰余金、全て使い切ってしまうわけにもいかない。
市場金利は当然変動するし、将来の高金利時代に備え、準備金を置いておくことも大切だ。
また、本来このような貯えがあったとしても、国債の償還に充てるのが筋ではある。
それでも、平成20年、21年とも、合理的な範囲内で、準備金を取り崩したり、国債の償還に回すお金を融通することで、「税外収入」を捻出してきた。
「埋蔵金」というと、何か無尽蔵な印象を受けるが、この特別会計について言えば、実状は、まあ「貯金」か「へそくり」ののようなものだ。

これらの特別会計剰余金をとり崩すなどして、これまでの政権でも、予算編成時に、税外収入を計上してきた。
その額(補正を含む)が、
平成20年は8兆6千億円
平成21年は12兆3千億円
だったわけだ。

さて、本年の総選挙における民主党のマニフェストは、このような平年度ベースの「税外収入(埋蔵金)」以外に、新たな支出に対応するため、「税金などをため込んだ『埋蔵金』を探し出し」、4.3兆円の税外収入(埋蔵金)を上乗せし、新たな財源とするというものだった。

そして、年末、ふたを開けてみれば、税外収入(埋蔵金)は10兆6千億円、総選挙前に、麻生政権(当時)が活用した税外収入(埋蔵金)よりも少ないものだった。

平成22年度が、民主党マニフェスト実行の初年度だといっても、マニフェストには4.3兆円の新たな財源(埋蔵金)を政治主導で捻出すると書いてあるのだから、その半分位の金額でもいいから、新規政策に対応した新たな埋蔵金を探し出して欲しかった。
その意味で印象に残るのが、国民新党の亀井金融相、他の閣僚が黙り込む中孤軍奮闘し、「税外収入(埋蔵金)は、最低でも15兆円が必要。そうしなきゃ主計局長はクビだ。」と盛んに主張されていたことだ。
私なりに15兆円の根拠を推察すると次のようになる。
12.6(前政権時の税外収入)+(4.3(民主党が探し出すとしている新たな埋蔵金)÷2(初年度だから約半分))=14.75(兆円)≒15兆円
これでは、他の民主党閣僚よりも、国民新党の亀井大臣の方が、よほど民主党のマニフェストに忠実ではないか。

いずれにせよ今回の予算案、税外収入(埋蔵金)の積み上げも、政治主導でなく、余りに財務省任せにしてしまった印象だ。

来年のコラムでは、農政、外交、公共事業、事業仕分け、公務員制度改革等々、民主党政権が打ち出した個別の政策について検証するとともに、自民党として、どのような政策・ビジョンの提示が必要か、私なりの考え方を述べていきたい。