「縮む日本」を無批判に受容する野田政権~政治は未来を変革する努力を怠るな

2012-3-14

政治は変革への覚悟を持つべきと訴える

本年1月、国立社会保障・人口問題研究所が発表した推計によれば、2050年には、わが国の総人口は現在よりも3千万人少ない9千7百万人に、うち65歳以上の高齢者の占める比率は、38.8%と、4割に近づくという。
野田首相の講演での口癖も、「1960年代は1人のお年寄りを働く世代9人が支える『野球チームの胴上げ型』、今は現役3人で支える『騎馬戦型』、2050年には1人が1人を支える『肩車型』の社会になる」というもので、だからこそ今、消費税増税が必要というわけだ。
ただ、ちょっと待てよと思う。
長期的な趨勢として、少子高齢化が進むことはその通りだろうし、ある程度の増税が必要な場面はあろう。
しかし、「政治」は、本来、国民の幸福のため、社会システムのあり方を能動的に変革するという大切な機能を持っているはずだ。

だとすれば、野田首相はじめ為政者は、冒頭記したような「縮む日本」の推計値を、無批判に受け入れるだけで、未来を変えていこうという努力を放棄して良いのだろうか。(推計を鵜呑みにすることの危険)
冒頭の「国立社会保障・人口問題研究所」の推計による、 百年後の日本の姿は次の通りだ。
2110年、わが国の総人口は、現在の3分の1の約4200万人、65歳以上の高齢者の人口割合は、41.3%(75歳以上は27.3%)、平均年齢は55.2歳云々。
「随分減っちゃうもんだなあ」というのが、正直な感想だ。
勿論、このような推計があることを念頭に、最悪事態対応の諸施策を巡らしておくことは必要と思うが、国政の舵取りを担う為政者が、推計を鵜呑みにしてしまうのは、実は危険なことだ。
そもそも、トップリーダーが、あと百年後には自分の国の人口が3分の1になると信じ切って国政を運営しているような国に、外国の方々が、積極的な投資を行うことがあり得ようか。
トップリーダーが、あと百年後には、全国の人口構成が、現在最も高齢化比率の高い北海道夕張市と同等になることを前提に国政を運営しているような国に、先進的な起業を行っていこうという有為な人材が育つ見込みはあるだろうか。
為政者たるもの、このような将来像を吹き飛ばすだけの、少子化克服政策に真剣に取り組む覚悟を持つことが、絶対に必要だ。
消費増税も大切かも知れないが、為政者は、将来への希望の種を播く仕事を、決して怠ってはならない。

(少子化対策は全省庁にまたがる取り組み)
さて、わが国の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の平均数。2.08以下になると人口動態は、自然減となる。)は、2005年には1.26にまで落ち込み、現在も低水準で推移している(2010年は1.39)。
このように、わが国にとって、少子化克服の取り組みが、まさに喫緊の課題であることは論をまたない。
そして、この取り組みは、厚生労働省(医療、児童福祉及び雇用を所管)だけが頑張れば良いというものではなく、総務省(地方自治、統計等)、法務省(婚姻法、少年保護、入国管理等)、財務省(税制予算等)、文部科学省(教育等)、農林水産省(食育、食品等)、国家公安委員会(少年被害対策等)等々ほぼ全ての省庁の仕事に関連し、事実、官邸に置かれる「少子化対策会議」は、全ての府省(一府十二省)の閣僚を構成員としている。
だからこそ、2007年、内閣府に、「少子化担当特命大臣」が設けられ、政府挙げての取り組みを強化することとなった。

(少子化対策失格の民主党政権)
初代の少子化担当大臣は、安倍・福田内閣の上川陽子大臣(在任期間11か月)、その後、福田改造内閣の中山恭子大臣(在任期間2か月の後拉致問題担当大臣に配置替え)、麻生内閣の小渕優子大臣(在任期間1年)にバトンが引き継がれた。
各大臣の在任期間の短さは、自民党政権末期の短命内閣の故とはいえ、極めて残念なことで、少子化克服のためには、本来、じっくりと腰を据えた取り組みが求めらると思う。
ただ、その後の民主党政権は、少子化担当大臣を数あわせのためだけの、明らかな腰掛けポストとしてしまった。
これはもはや論評に値しない。
具体的には、民主党政権発足後現在まで2年7か月、総理大臣は3人を数えるが、少子化担当大臣に至っては、任命順に、福島瑞穂氏(在任期間8か月半)、平野博文氏(在任期間2週間)、玄馬光一郎氏(在任期間3か月)、岡崎トミ子氏(在任期間4か月)、与謝野馨氏(在任期間7か月半)、蓮舫氏(在任期間4か月半)、岡田克也氏(在任期間1か月)、中川正春氏(現在まで在任期間1か月)と、8人もめまぐるしく取り替えられた。
この中で在任期間が最も長かったのが、「所管事項よりも沖縄問題に熱心」と揶揄された社民党の福島瑞穂党首だが、氏は、「産まない選択子どもを持たない楽しさ」(亜紀書房)などの著作があることでも知られている。
民主党政権が、少子化克服への取り組みをなおざりにしてきたことは、以上のことからも明らかと思う。

(日本立て直しのためのまともな議論の再開を)
かつて自民党政権時代、私も、同じ政策グループに属した上川陽子大臣などの薫陶を受け、少子化問題について、1994年の合計特殊出生率1.65を、2003年には1.89まで回復させたフランスの取り組みなども勉強しつつ、真剣な議論をさせていただいた。
具体的には、日本の「子ども手当」と大きく異なり、第1子には支給せず、第2子から支給し、第3子ではさらに手厚くなるフランスの「家族手当政策」、あるいは、「控除から手当へ」を標榜する日本の民主党政権下で議論がストップしてしまった「子供数に応じた税額控除政策」(諸外国で既に導入)などだ。
ただ、このような議論の再開は、明るい未来を作るための少子化克服政策に重きを置かず、「縮む日本」の推計値を無批判に受容して増税にひた走る今の野田・民主党政権には、到底無理だ。
一刻も早く、国民の負託を得た強い政権を作り、私自身も、地道な活動により国政復帰を果たし、日本立て直しのためのまともな議論に参画したいと思う。
そして、「政治」が、「よりよい未来を作る」という機能を取り戻していきたいと思う。