姉歯事件の真相解明のために~元請け設計会社等に質疑

2006-1-19

1月19日の衆議院国土交通委員会の閉会中審査。

1月19日の国土交通委員会

私は、耐震強度偽装問題に関し、(本事件の「黒幕」とも報道されることのある)総合経営研究所の四カ所チーフコンサルタント、姉歯元建築士(以下敬称略)に構造設計を下請けに出した平成設計の山口社長、スペースワンの井上代表らに対する参考人質疑に立った。
自民党の質問者は4名で、私はアンカーマン。
おおむねの役割分担は、まず3人が各参考人に事実関係等を詰め、私が、元請け設計事務所の責任などを質し、併せて、自民党としての真相解明への決意を明らかにしようというものだ。
その模様は、「姉歯発注は小嶋社長の指示」といった見出しで、夜のニュースにも大きく取り上げられた。
ここでは、私の質問のねらいについて書いてみよう。参考人質疑は、議院証言法に基づく証人喚問とは異なり、「偽証罪」などを問うことができない。
今日の参考人に、刑事事件の嫌疑がかけられているというわけではないが、参考人にとって不利な事柄については、どうしても、「言った」、「言わない」になり勝ちだ。
そこで、元請け設計会社に本当のことを言ってもらうためにも、私は、「元請け責任」が免れないことから質疑を始めた。
一連の耐震強度偽装事件では、建築確認申請時に提出される構造詳細図と構造計算書が、姉歯によって偽装されたことが問題となっている。
ところが、国土交通省の調べでは、作成者の署名捺印を必要とする構造詳細図の作成者は、多くの場合、元請けの設計会社だ。
だから、もとは姉歯が作ったものとはいえ、「建築士が見れば明らかにおかしいと思える構造詳細図(『10階と1階の柱の太さが同じ』など。)」に、作成者として署名捺印し、建築確認を申請した元請け設計会社の責任は重い。
私はまずこの点を議論、元請け設計会社には、最低でも、民事(損害賠償)、行政(免許取消等の行政処分)上の責任が免れないことを指摘した。

また、もしも元請け設計事務所が、建築確認申請時、姉歯の偽装を全く知らなかったならば、下請けの姉歯の行為は、構造設計を発注した元請け設計会社に対する詐欺罪(人を欺いて不当な利益を得ること。)を構成する。
だから、元請け設計会社に対し、「姉歯の共犯でないことを明らかにするためには、姉歯を『詐欺罪』で告訴すべき。」と諭した。
質疑の中では皆まで申し上げなかったが、これには3つの意味がある。
1つには、元請け設計会社に、刑事法の面でもしっかりとした当事者意識を持たせることで、真相解明を促進しようということだ。
2つには、捜査面からのこの事件の解明に資するためにも、より重い罪の適用の可能性を広げていこうということだ。
すなわち、「詐欺罪」は、姉歯が現在告発されている建築基準法違反(50万円以下の罰金)に比べ、「10年以下の懲役」と極めて重く、時効も長い。
3つには、元請け設計会社に姉歯の刑事告訴を真剣に考えてもらうことで、姉歯や、姉歯を使うように指示した者をかばい立てしようという意識を捨ててもらうことだ。

いささか玄人的な質問ではあるが、この部分は、今後以外と意味を持ってくるような気がする。

私の質問に対し、スペースワンの井上代表は「(刑事告訴を)前向きに考えたい」、平成設計(木村建設の子会社)の山口社長は、「弁護士と相談したい」と、答えていた。

その上で私は、残りの質問、すなわち、元請け設計会社と、ヒューザーや木村建設との関わりについてのそれに入っていった。

以上のやりとりのなかで、スペースワンの井上代表から、「ヒューザーの小嶋社長から、直接、木村建設にいる優秀な設計士(姉歯)を使えと指示された」という陳述が出てきたのは報道の通りだ。

時間の関係もあり、もっといろいろ聞きたいこともあったが、その一方で、個々の問に、必ずしも納得のいく回答を得られたわけではなく、率直に言って、強制捜査権限のない国政調査権の限界を感じた質疑でもあった。
私自身、今後国会として、しっかり真相解明の努力をしなければならないと考えるが、やはり本件については、司直による全体像の究明が欠かすことができないことを痛感した1日だった。