歳出改革プロジェクトチーム~自民党はやっぱり大きく変わった

2006-6-30

歳出改革PT合同会議の模様

6月26日の党・歳出改革プロジェクトチーム合同会議。
2011年までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指すための歳出削減案を了承した。
具体的には、2011年度に見込まれる16兆5000億円の不足額のうち、7割強程度は、歳入改革(増税)でなく、歳出削減(予算のカット)により対応するというもの。
実は、歳出改革に関しては、この4月来、政務調査会に、「社会保障」、「地方財政」、「公務員人件費等」、「公共事業」及び「その他予算」の5分野ごとに、歳出改革プロジェクトチームが置かれ、歳出削減の見通しを積み上げてきた。
私は、公共事業・歳出改革PTの副主査として、公共事業及び農林水産予算の歳出改革を担当、都合13回の討議に参画し、PTの意見を、「今後5年間は、これまでの小泉改革の改革努力を、基本的に継続する」というラインでとりまとめることができた。
「実効性が疑問視される」といった記事はあるものの、私は、今回の「歳出改革」とりまとめの意義は、実は極めて大きい。まず、2011年度までに、何故「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」の黒字化が必要かということを書く。

本年3月末の国債発行残高は約670兆円(税収は約50兆円)、年収500万円の個人が、6700万円の借金を抱える計算で、普通の個人なら自己破産ものだ。
ただ、政府の場合は、一般の個人とは違い、従来は、政府の信用力をバックに、返済期限がきた借金を償還するため、「借換債」という国債を発行して資金を調達、元利払いをすることができた。
しかし、将来、その「借換債」の買い手がつかなくなり、あたかも個人がサラ金に手を出すかのように、高利でなければ「借換債」がはけなくなってしまったら、それこそ借金は雪だるま式にふくれ、政府といえども、やはり「破産」の危機だ。
これを避けるためには、当面の目標として、この「借換債」の信用力を維持し、安定的な買い手の確保を図らねばならない。
そして、「借換債」の買い手の安心感を得るためには、「これ以上国の借金残高(GDP比)は増えません。むしろ減っていくから大丈夫ですよ。」という、市場に対するメッセージが必要だ。
そのメッセージは、口先だけではなく、毎年の税収で毎年の支出をまかない、ある程度の利払いをしていくこと(基礎的財政収支の黒字化)の達成により、初めて信用されるものとなろう。
このように、基礎的財政収支の黒字化により、初めて、わが国は、「国債暴落の悪夢」、「国家破産の悪夢」から解放され、将来への展望を描くことができることになる。

さて、平成18年度予算でも11兆円の赤字となっている基礎的財政収支の黒字化は、決して容易なことではない。
これを何故、2011年度を目標に行わねばならないのか。
これは、2012年、年齢層別で最大の人口を持つ団塊の世代が、65歳の年金受給年齢を迎えることと無縁ではない。
私は、それまでの期間に、財政収支の改革を断行し、特に社会保障分野について、歳出のスリム化と併せ、歳入面の改革(保険料・税源確保等)を完遂しなければ大変なことになると考えている。
もしもこのような改革を怠り、現行制度のまま2012年を迎えることとなると、多分、社会保障費の当然増は膨大な金額に上り、基礎的財政収支も大赤字のままで、「国家と国民の破産」というシナリオが、現実味を帯びてくるからだ。

次に、本題に戻って、特に、私が担当した「公共事業・歳出改革PT」におけるとりまとめの意義について書く。
かつての公共事業費は、ムダも多く、水ぶくれの面もあった。
しかし、平成10年度以降、予算額は厳しく削減され、今や、ギリギリに近いラインまでカットされていると言って良い。
すなわち、平成10年度は、補正予算も含め、国費で約14兆円の予算規模だったものが、平成18年度には約7兆円と、ピーク時と比べ、すでに半減、バブル崩壊前の水準に落ち込んでいる。
小泉構造改革の中、最も切り込まれた分野だ。
だから、更なる公共事業費の削減について、地方からは今、怨嗟の声すら上がりつつある。
しかも、今回の「公共事業・歳出改革PT」のメンバー。
政府側から、国土交通省の副大臣・政務官、農林水産省の副大臣・政務官、党側から、国土交通部会の部会長・専任部会長・部会長代理、農林部会の部会長・部会長代理と、かつてであれば、「族議員」、「抵抗勢力」と言われたポストを網羅した構成だ。
当初は、私自身、その先行きを懸念していた。

PTの議論は合計13回にわたった。
内容的には、今述べたような地方経済への影響を勘案しつつも、「談合・天下りを批判する国民の声」を、わが党も、真摯に受け止めるべきといった議論など、まさに、侃々諤々の意見が戦わされた。
その結果、これらのメンバーが、単なる数合わせの議論でなく、基礎的財政収支の黒字化のため、公共事業分野において、今後5年間、更なる歳出抑制に最大限努力するという合意に至ったわけだ。
一昔前の自民党の、しかも、このメンバーだったら、間違いなく、「一円たりとも削らせない」という強硬論一色となったはず。
つくづく、自民党は、やっぱり本当に変わったと思うし、この合意は重い。

もっとも、今回は大枠の結論で、例えば、歳入改革(増税)の問題、真に必要な社会資本とは、ギリギリのところどの程度に設定するかといった問題については、さらなる議論が必要となる。
私たちは、これからも、数合わせだけでなく、できるだけ丁寧な論議を積み重ねていかなければならないと思う。