モンゴルで各国議員と北朝鮮問題を議論(1)~国際議連総会の意義

2006-8-17

8月7日の会議開催前のスナップ

8月6日から8月9日まで、私はモンゴルに出張、「北朝鮮人権・難民問題国際議員連盟」総会に参加してきた。
この国際議員連盟は、2003年、日本の民主党と韓国のハンナラ党という、日韓の最大野党の議員が中心となって発足し、わが国側の代表は、民主党の中川正春衆議院議員が務めている。
これまで、第1回のソウルでの総会には、わが国自民党からの参加はゼロ(当時、党として、議連の存在を認知していなかったようだ)、第2回東京会議は、わが党の小林温参議院議員が、たまたま個人の資格で参加したという。
しかしながら、北朝鮮の人権問題は、拉致問題を抱えるわが国として、当然、与野党問わず積極的に取り組むべき課題だ。
6月13日、私達自民党拉致対策本部メンバーが訪韓した折、会談したハンナラ党の黄議員から、この議連の存在と、モンゴルでの会議の予定を聞いた。
そこで、民主党の中川議員の了承も得、自民党として、前回会議にも参加した小林温参議院議員と私の2人を、正規の党の代表として、モンゴルに派遣することになったわけだ。この議連の共同代表は、韓国ハンラナ党の黄議員、わが国民主党の中川議員が務めており、事務局は韓国にある。

そして、私は、率直に言って、今回モンゴルで、議連総会を開催したという選択を、大いに評価している。
本年モンゴルでは、チンギスハン即位800年祭という国家的行事が挙行され、政府も、各国との友好議員連盟の活動強化に努めている。
実際、今年だけで、日本の国会議員約80人、韓国の国会議員約100人が、モンゴルを訪れるという。

ただ、いわゆるお祭り的な興味ではなく、私は、第1に、モンゴルの地政学的位置付けが、今回の会議を極めて意義深いものにしていると考えている。
すなわち、モンゴル国は、当時のソ連の指導で、世界でも第2番目、アジアでは歴史上初の社会主義国として建国し、かつ、中華帝国の冊封体制に組み込まれた少数民族(他に、チベット族、ウィグル族などがある)の中で、他国の植民地になることなく独立を勝ち取ることができた唯一の国だ。
そして、冷戦後の現在も、中露のバランスに腐心し、北朝鮮とも良好な関係を有しているという事情がある。

そのモンゴルの国会議員が、拉致問題のみならず、強制収容所などの北朝鮮の人権問題全般を議題とする会議を主催することは、北朝鮮の反発を招くことは明らかだ。
実際、8月8日には早速、北朝鮮大使館の総領事が、会議を主催したモンゴル民主党(現在は野党)のバダムダムディン議員を呼び、1時間にわたって抗議を行ったという。

しかも、対中国との関係でも、私は、会議を主催したモンゴルの国会議員の英断に拍手を送りたい。
すなわち、北朝鮮からの難民、すなわち脱北者の問題は、勿論、北朝鮮国内の劣悪な人権状況によるものではあるが、脱北者の脱出先である中国国内において、彼らが極めて悲惨な状況に置かれていることが、問題をさらに複雑化している。
すなわち、現在、中国国内には、3万人から5万人と言われる北朝鮮からの脱北者が、当局の監視の目を逃れて生活している。
彼らは、在留資格上は不法滞在とされているが、それでも、毎年1~2千人程度は、韓国への入国に成功するという。
しかし、その一方、中国政府当局の手により、毎年5千人程度が、北朝鮮に強制送還(本国に帰れば重罪)され、これが大きな社会問題となっている。
これに加えて、中国国内に潜む脱北者及びその子供達は、日常的に、人身売買・児童買春などの被害に遭っていると指摘されており、その面からの人権侵害問題も深刻だ。

だから、隣国モンゴルでこのような会議が開催されることについて、脱北者問題だけでなく、国内に少数民族問題を抱える中国側も、複雑な感情を抱くことは想像に難くない。

勿論、政府主催でなく、国際議員連盟というゆるい組織だったからモンゴルでの開催が実現したわけだが、私は、モンゴルさえもが北朝鮮包囲網に加わったという印象を与える意味で、相当なインパクトがある会議だったと思う。

第2に、やはり、タイミングの良さが、会議の意義をより大きなものにしたと思う。

すなわち、会議開催直後の8月10日には、小泉純一郎総理がモンゴルを公式訪問、エンフボルド首相(旧共産党を前身とする人民革命党党首)に対し、直接、拉致・ミサイルといった北朝鮮問題に関し、是非わが国と共同歩調をとって欲しいとの要請を行う。

国際議連総会の時期と、小泉総理の訪問時期とは、たまたま重なったものとはいえ、私は、今回の会議は、政府の外交と、議員外交との連携が見られた好事例ではなかったかと考えている。
その意味でも、わが国から、民主党だけでなく、与党である自民党が、今までの経緯やメンツにこだわることなく、自然な形で参加できたことは、大きなプラスであったと思う。

次回は、具体的な会議の内容や、私達の発言について書いてみよう。