モンゴルで各国議員と北朝鮮問題を議論(2)~わが国の立場を明らかに

2006-8-19

総会を終えて参加議員と

モンゴル・ウランバートルでの「北朝鮮人権・難民問題国際議員連盟」は、8月7日に総会が開催され、翌8日には、わが国議員団と、モンゴル側議員団との懇談会が持たれた。
総会への参加国は、日本、韓国のほか、EUから英国、アフリカからアンゴラとブルンジ。
参加者も30名弱、総会の途中で、通訳の不具合が発生するなど、まさに手作りの会議といったおもむき。
会議の目的は、もとより、北朝鮮当局による人権侵害問題に対処するため、国際的な世論を盛り上げていこうというものだ。
ただ、今回は、わが国与党として、初の公式参加。

だから、各国の議員に対して、わが国としての立場を明らかにし、正確な理解を求めていくことも重要な任務。
このような観点から、私は、主に、「脱北者支援のあり方」、「与野党連携のあり方」及び「人身売買問題への対処の重要性」という、3点について、積極的に発言をさせていただいた。まず、「脱北者支援のあり方」。
この会議に出席したわが国民主党の出席者は、どちらかというと右よりの方が多かったようで、「北朝鮮問題の根本解決のためには、金正日体制の崩壊しか方途はなく、そのために、あらゆる努力をすべき」といった発言をされていた。
勿論私も、個人的には共感できる。だから、「そのラインで民主党内をまとめて下さいよ」と言ったら、即座に、「まとまらない」と返されてしまった。
さて、その「あらゆる努力」の中に、「脱北者支援」がある。
確かに、ベルリンの壁崩壊前、多くの難民が、旧共産圏を脱出し、これがソ連・東欧の民主化の引き金となったことは記憶に新しい。
その意味で、現在中国国内に3~5万人が潜伏し、今も北朝鮮からの脱出を企てている、いわゆる「脱北者」に、国際社会が、人道的見地から支援の手をさしのべることは、極めて大切だ。
しかし、日本として何ができるかという問題がある。
すなわち、現在の国内法上、わが国が、脱北者を無制限に受け入れるのは極めて難しい。
わが自民党でも、北朝鮮人権侵害問題対処法の成立を受け、「脱北者に関する検討チーム」を発足させ、私がその事務局長に就いたが、やはり当面は、北朝鮮に在留する約7千人の日本人妻及びその家族の問題を優先的に考えて行かざるを得ないと考えている。
このようなわが国における施策の検討状況を説明した上、難民認定について、国際ルールに則って行っていく必要があることや、脱北者問題ついて、より一層、国際的連携を強めていくことが重要であることを述べさせていただいた。

2つ目は、「与野党連携のあり方」。
北朝鮮の人権問題への対処は、各国とも、与野党を巻き込んでいくべきということだ。
私は、わが国における「北朝鮮人権侵害問題対処法」立案の責任者として、拉致問題の解決を求める国民世論を背景に、この法律が、最終的には、与野党が合意し、成立に至ったことを報告した。
実は、昨年の東京会議には、韓国からは、与党であるウリ党議員の参加もあったとのことだが、モンゴル会議への参加は、韓国最大野党のハンナラ党議員のみ。
もっとも、現在の韓国・廬政権は、(過剰な?)対北融和政策をとっており、野党のみ参加という韓国側の事情も分からぬではない。
だから、会議でも、わが国の民主党議員からは、韓国による北朝鮮への人道経済支援を非難する発言がなされた。
私も同感できるところはあるが、まあ、ハンナラ党の議員相手に、韓国政府の非難をしていても始まらない。
でも、議員レベルであれば、ウリ党の中にも、心ある議員はいるはずだ。
そういった議員の自由な発言が、政策を変えることもあり得る。
だからこそ私は、今回、わが国自民党から、初の正式参加があったことを引き合いに、特に韓国の議員団に対して、是非、現在の政権与党であるウリ党の有志議員が参加しやすい環境を作っていくことをお願いした。

3つ目は、「児童や女性の人身売買問題」。
この問題は、脱北者問題についても、より先鋭に取り上げていかなければならないと思う。
先にも述べたように、脱北者についての難民認定は、国際ルールに則って行われるべきだ。
でも、当たり前とはいえ、その国際ルールというのは、以外とややこしく、単純な経済難民が、自動的に保護されるわけではない。
だから、国際法上、脱北者=難民(保護対象)とは一概に言えないこととなる。
ただそれは法律上の話、たとえ「難民」とは認定されなくても、人間である以上、日常的な人権侵害を受けて良い理由はない。
実は、中国国内に潜伏する3~5万人とも言われる脱北者の多くが、売春宿への人身売買・奴隷取引・児童買春などの被害に遭っている。これは大問題だ。
だからこそ私は、特に中国を念頭に、この議連として、各国政府に、北朝鮮からの脱出者が、人身売買などの犯罪行為の被害者とならぬよう、必要な措置を講ずることを要請すべきであると訴えたわけだ。

以上にような訴えは、最終的に、総会の共同宣言案にも反映されたが、このような議員同士の手作りの会議は、私にとっても初めてで、大いに得るものがあった。
これからも、こういった地道な活動を続けていきたいものだ。