第15回アジア・太平洋議員フォーラム(1)~大切にしたいわが国主導の議員外交の枠組み

2007-1-31

代表団の島村宜伸団長と

本年1月21日から27日まで、衆議院の派遣で、モスクワに出張してきた。
目的は、第15回アジア・太平洋議員フォーラム(APPF)の総会に出席するためだ。
APPFは、アジア・太平洋地域の29カ国の国会議員によって構成され、毎年1月に、総会が開催される。
本年は、23カ国からの参加があり、議員本人が百数十人、事務方も入れると、約400人が参加するという一大会議だった。
そして、この会議では、毎年約20本ほどの決議が採択される。
その内容については次回のコラムでも触れたいが、私が特筆すべきと思うのは、このような議員外交の枠組みが、わが国の中曽根康弘・元総理大臣の提唱で発足し、さらに、同氏のリーダーシップで、ここまで大きなものになってきたということだ。実は、議員外交の舞台となる枠組みには、いくつかのものがある。
そのうち、国際連盟よりも古く、最も多くの国々(146カ国)議会が参加しているのが、IPU(列国議会同盟、本部ジュネーブ)だ。
私も、IPUのジュネーブ総会には、2004年及び2006年の計2回参加してきた。
もっとも、IPU総会での決議には、国の数の多いアフリカやイスラム諸国の声が反映されやすいことや、かつて、北朝鮮のピョンヤンで総会が開催されたことも影響してか、現在、米国は、分担金を支払わず、参加資格を停止されている。

また、アジア地域を含むものとしては、ASEM(アジア・欧州会議)の議員バージョンであるASEP(アジア・欧州議員会議)、アセアン(東南アジア諸国連合)の議会版であり、わが国も代表団を派遣しているアセアン議員機構(AIPO、現在は名称が変わってAIPA)などがある。

もっとも、アジア地域におけるマルチの連携の枠組みを考えた場合、従来、どちらかというと、アセアンが、このような枠組みの構築に熱心だったという印象がある。
北東アジアには、わが国のほか、中国及び韓国といった有力な国があるにはあるが、率直に言って、今のところ、これらの諸国が共同歩調をとるなどして、マルチの連携の枠組みを作っていこうという動きにはなっていないのが実情ではないか。

その意味で、今回のモスクワ会合に参加して、APEC(アジア太平洋経済協力会議)の議員版ともいうべきAPPFは、わが国にとって、極めて重要な存在であるということを改めて認識した。
まず、APECと同様、この議員フォーラムには、米国が、積極的に参加しているということが大きい(本年は、大統領の一般教書と時期が重なってしまい、ほとんど参加はなかったが、例年は熱心に参加するらしい。)。
これは、中曽根元総理がこのフォーラムを提唱した折り、米国のシュルツ元国務長官の協力をとりつけたことによるところが大きいとのことだ。
IPUは、格こそ非常に高いが、米国の参加が得られていないことが、その影響力のネックになっているのも事実だ。
さらに、ASEPにも、AIPAにも、米国議員団の姿はない。
APPFが、世界の民主主義のリーダーでもある超大国・米国を巻き込んでいることの意義は大きい。

次に、APPFは、発足以来ずっと、中曽根元総理が会長を務められ(現在は総会開催国の持ち回り)、国会議員を引退されてからも、終身名誉会長を務められていることだ。
このような経緯もあり、わが国代表団は、APPFの執行委員に選任され続けている。
先にも述べたように、このような議員外交の枠組み作りの段階から、わが国がイニシアチブを発揮している例は、必ずしも多くはない。
そして、APPFにおけるわが国の位置づけは、わが国議員外交にとっても、大きな財産であることは言うまでもない。

これまでのコラムでも述べたように、議員外交は、国際世論の形成の上で、極めて有効だ。
改めて、中曽根元総理のされた仕事の意義を認識するとともに、わが国の議員として、このAPPFを大事にしながら、さらに日本のイニシアチブを発揮できる仕掛けを考えていくことの必要性を痛感した。