第15回アジア・太平洋議員フォーラム(2)~北朝鮮問題が大きなテーマ

2007-1-31

会議での発言の模様

さて、第15回アジア・太平洋議員フォーラム(APPF)モスクワ総会で、私が担当した事項について述べてみよう。
主な任務は2つあった。
1つは、わが国代表団の提案に係る、北朝鮮の核実験・拉致問題の非難決議を仕上げてくること。
もう1つは、毎年提起される「北朝鮮の参加資格問題」(現在、北朝鮮はメンバーではない)について、「時期尚早」とするわが国の考え方を明らかにすることだ。
その他、共同コミュニケ起草委員会での討議への参加、APPF執行委員選任方法についての総会での発言など、丸々4日間拘束されることになった。まず、北朝鮮の核実験・拉致問題の非難決議。
決議案は、日、露、中、韓の4カ国からなるワーキンググループで討議されることになった。
本来なら、加、豪、NZなど、いつも人権問題に熱心な国にも入ってもらうと助かったのだが、議長国ロシアの仕切りなので仕方がない。

さて、本年1月の韓国の廬大統領の発言にもみられるように、現在、韓国のウリ党政権は、核問題に先に取り組み、日朝の拉致問題はその次にして欲しいというのが本音だ。
しかも、国内に400人に上る被害者がいるにもかかわらず、ウリ党として、彼らが北朝鮮に拉致されたことを、公式には認めていない(この点について、最大野党のハンナラ党は全く逆の立場。「拉北者」の存在を認めようとしないウリ党の姿勢には、実は、韓国国内でも批判が強い。)。
昨年のAPPFでもそうだったらしいが、今年も、ウリ党主体の韓国代表団は、「北朝鮮を刺激し過ぎ、核問題の解決を遅らすことになる」との理由で、拉致問題を明示的に決議に盛り込むことに難色を示した。
理屈の上からは、議員外交の枠組みにおける決議が、「北朝鮮を刺激し過ぎる」ことなどあり得ないのだが、これは、必ずしも理屈の問題でなく、韓国の国内事情もあっての主張と見て取れた。
そして、昨年は、決議自体は「朝鮮半島の非核化」に特化し、共同コミュニケの中で、「日本代表団が拉致問題を提起した」という一行が盛り込まれたが、やはり決議の中で、拉致問題が読み見込めるようにしておく方がベターではある。
「刺激しすぎる」、「そんなことはない」といった不毛な議論をしていても仕方がない。
そこで、決議の文言自体は、昨年10月の国連安保理決議、本年1月の日中韓共同声明などと同様の表現を用い、「北朝鮮は、人権上の問題に真摯に対応しなければならない」という文言を入れることで決着させることにした。
そして、一般論として、「人権上の問題」と言った場合、飢餓問題などのほか、「拉致問題」を指すのは明らかと思うが、より明確にしておく必要がある。
このため、この決議案を承認する起草委員会の場で、その承認前に、議長国ロシアの指名で、わが国に発言の機会を与え、人権上の問題の改善が盛り込まれたこの決議が、「拉致問題」の解決のためにも極めて有効である旨のプレゼンテーションを行うこととした。
起草委員会の場における私の発言の後、中国の代表団もこれに同調する発言を行い、韓国の代表団からも、特に異論はなかった。
結果的には、良い形でまとまったと思う。

次に、北朝鮮の参加資格問題。
韓国は、ウリ党政権になってから、ずっと、北朝鮮も、APPFのメンバーにし、対話を行うべきという主張をしている。
ただ、昨年、北朝鮮による核実験も行われ、国際社会の北朝鮮に対する目も厳しくなっているという事情もあり、今年はさすがに、「正式参加」という主張は行わなかった。
しかし、総会の場で、韓国の代表団長(国会の議長が参加)から、「北朝鮮にオブザーバーとしての招請状を出し、この会議の場で、北朝鮮の代表団に圧力をかけるべきである」との提案がなされ、一時、参加国から、相当の支持を受けそうな雰囲気になった。
このため、私から、コメントという形で発言を求め、次のように申し上げた。
「私は、昨年のIPUジュネーブ総会に出席し、ロシア、中国、韓国などの代表団と協力して、北朝鮮の非難決議を起草してきた。
IPUは、従来から、北朝鮮を正式メンバーとしているが、このような非難決議を採択する会議においても、自らの主張を強弁するのみで、会議をプロパガンダに使っていたとしか思えない。
オブザーバーとはいえ、北朝鮮をこの会議に招請することは、圧力を加えることとならないばかりでなく、むしろ、北朝鮮に対して、誤ったメッセージを与えることとなるのを懸念する。
このような点も踏まえ、執行委員会(全会一致、わが国もメンバー)の討議により対処して頂きたい。」
こうして、会議の雰囲気もかなり変わり、その後、北朝鮮の参加資格問題が討議されることはなかった。

私は、APPFには、初めての参加だったが、過去の韓国訪問やIPUでの経験が、結構役に立った。
私自身も、このような機会を、しかも連続して与えていただいたわけで、島村宜伸団長には、心から感謝申し上げたい。
そして、これからも、戦略的議員外交をどう構築すべきか、真剣に考えていきたいと思う。