「つなぎ法案」騒動~議長あっせんを促し、国民生活の混乱を回避して実質審議を確保

2008-2-10

「つなぎ法案」答弁、左端は増田総務大臣

1月29日の衆議院総務委員会。
私は、「国民生活等の混乱を回避し、地方団体における予算の円滑な執行等に資するための地方税法の一部を改正する法律案」の提案者として、答弁に立った。
この法律案は、巷間、「セフティネット法案」とも、「つなぎ法案」とも言われるものだ。
今年の通常国会は、俗に「ガソリン国会」と言われるが、「衆参ねじれ現象」の中で、民主党の国会戦略次第では、ガソリン・軽油税等の歳入関係法案が、年度内に議了しない事態が考えられる。
そうなると、4月になって、ガソリンや軽油の税率がいったん下がり、法案が議了する数週間後にまた上がるという可能性が出てくるわけで、国民生活に、大混乱をもたらしかねない。
そこで、自公両党は、議員立法により、3月末で期限切れを迎えるガソリン・軽油の税率を、歳入関係法案が成立するまでの間、暫時現行税率を適用し、税率の乱高下を回避する、いわゆる「つなぎ法案」を提出、私が、その軽油税分の提案者になった。
ガソリン税等の是非については別の機会に譲るとして、今日は、「つなぎ法案」の経緯を書く。国の収入である税(歳入)に関する法律が決まらなければ、当然、国にはお金が入ってこない。

だからこそ、これまで、歳入関係法案は、2月から3月の通常国会で集中的な審議が行われ、例外なく、前年度内に議了・成立、4月1日から施行されてきた。
しかし、野党が多数を占める参議院で、従来の常識が通じるとは限らない。
例えば、先の臨時国会のテロ特措新法では、民主党は、週2日の定例日以外の審議に応じず、結果、参議院での議了は、衆院通過後59日目だったが、歳入関係法案でこれをやられたらたまらない。
でも、民主党の有力幹部の中には、国会審議をする前から、「(歳入関係の)租税特別措置法案は3月末までに断じて成立させない。(与党が)一度下げた税率を再び上げるなどと言うならば、私どもは解散に持ち込む。」(山岡賢次国会対策委員長)と公言し、国民生活の混乱を利用して解散総選挙を目指すことを公言する向きも出る始末だ。

憲法では、衆議院を通過した法案について、参議院が態度を決めない場合、60日を経過した時点で否決とみなし、衆議院が3分の2の賛成で再可決すれば、法律として成立する旨が定められている。
このため、年初来、主に参議院自民党幹部から、歳入関係法案の年度内成立を確実にするため、1月中に衆議院を通過させて参議院に送って欲しいという強硬な意見があった。
ただこれでは、歳入関係法案について、衆議院で、数日の審議しかできず、多いに問題だ。
私は、早くから、大島自民党国会対策委員長に対し、「衆議院で十分な審議を尽くさなければ、そんな衆議院は要らないということになる。それこそ衆議院の自殺行為だ。」旨の意見を述べてきた。

でも、与党の国会対策として、衆議院での十分な審議時間も確保しつつ、年度内に、歳入関係法案を議了・成立させることが至上命題であることには変わりない。
そんな中、1つの知恵というか、窮余の一策として出てきたのが、この「つなぎ法案」という手段だ。
もっとも、当初は、私自身、この案には消極で、野党に対し、もっと粘り強く年度内議了を呼びかけていくべきという意見だった。

しかし、1月28日から29日にかけて断続的に行われた与野党国会対策委員長会談、幹事長会談を通じ、民主党の、国民生活を無視した政局一辺倒の姿勢を見るにつけ、私は、この「つなぎ法案」を、事態打開の切り札にすべきという考えに変わっていった。

与野党折衝の過程で、自民党は、民主党のこれまでの主張を大幅に取り入れ、次の提案を行った。
①税制関連法案を、民主党かねてからの主張に沿い、民主党が反対している「ガソリン・軽油等関係法案」と、それ以外の法案とに、議員立法により分割しても良い。
②そのかわり、民主党は、歳出関係の予算案の議了と同時に、歳入関係法案についての賛否を明らかにし、議了に応じて欲しい。
③与野党合意できるのであれば、必要な修正にも応じる。
④以上の合意ができれば、「つなぎ法案」は提出しない。
これらについては、国会対策委員長レベルでは、ほぼ合意に達し、「党内(首?)を説得してみる」ということになったらしいが、結局、民主党の小沢代表が首をタテに振らず、「(テレビの場でならまだしも、国会の場で)法案についての賛否を明らかにするなど約束できない」ということで、協議は不調に終わった。

この段階で、我々が「つなぎ法案」を提出しなければ、与党として、歳入関係法案をいつまで店晒しにしても良いということを容認したことと同義だ。
これでは、全国民の代表者であるはずの国会議員が、国民生活の混乱を歓迎することとなってしまう。
これでは、まさに民主主義の死。

だからこそ私は、「つなぎ法案」の提案者としての答弁の中で、衆参両院における充実した審議の確保と国民生活の混乱回避の必要性を、強く訴えさせていただいた。

その心意気が、多分、民主党出身の参院議長にも通じたのだろう。
1月30日、異例の衆参両院議長のあっせんが行われた。
内容は、「つなぎ法案」を撤回するかわりに、歳入関係法案についても、「年度内に一定の結論(両院議長共同記者会見によれば、「採決」を意味する。)を得る。」というものだった。
まあ、ひとまずやれやれではあるが、本当のところは、これからの長丁場の審議こそが大変だ。