ガソリン値下げせず!!~想定内の「税収不足」は公約違反の理由にならない

2009-12-26

教育上問題な嘘つき奨励ポスター

12月22日、政府は、来年度の税制改正大綱を閣議決定、民主党が政権公約に掲げた「ガソリンの暫定税率廃止」は実施されず、衣を換えて維持されることになった。
昨年の1月、小沢代表・鳩山幹事長(当時)が率いる民主党は、「ガソリン値下げ隊」を組織し、国民生活のため、ガソリンの25円値下げを国民に訴え、その「ブレない」主張が、今年8月の総選挙でも国民の広汎な指示を得、「政権交代」が実現したわけだ。
しかし、鳩山政権は、政権交代後3ヶ月で、「税収不足」を理由に、「ガソリン税2.5兆円の減税」という「公約」を、いとも簡単に捨て去ろうとしている。
また、別のコラムでも述べるが、「公約違反」は「ガソリン値下げ」に止まらない。
私の選挙区でも、通学路などに、「総選挙マニフェスト公約実行」と大書した民主党のポスターが、ガードレールに多数貼られているが、子どもの教育に極めて悪い影響を与えないか心配だ。
しかも、民主党政権が、公約違反の理由として、「想定外の税収欠損」を挙げているのは、支離滅裂というしかない。
何故なら、この点は、彼らにとって、総選挙前から折り込み済みだったはずだ。わが国の税体系の下では、税収は、景気が悪くなると、GDPのマイナス成長率以上に低下する。

これは、国の税収の中で、法人税が占める割合が高いことが大きな原因だ。
例えばサラリーマンの給与所得の場合、赤字・黒字と言う概念はないため、不況の影響で、年収が2%下がったとしても、税収自体は、2%前後少なくなるだけだ。
しかし、法人税は、黒字部分について課税される(低率40%)ため、前年1千万円の利益を得ていた企業(納税額400万円)が、不況の影響で赤字に転落すれば、納税額はゼロになってしまう。

さて、これまでの政権は、まじめにやっている企業が利益を得られるような経済をつくるための景気対策を予算に盛り込んだ上で、法人税の税収も税収見積もりの中に盛り込んできた。
でも、現在のような大不況下、「このような税収見積もりは甘い」と主張したのが、ほかならぬ民主党だった。

本年2月20日及び23日の予算委員会、民主党の仙谷由人・予算委員(現行政刷新担当大臣)は、自民党政権が、平成21年度の税収見通しを約46兆円としたのは「大甘」と大論陣を張った。
仙谷氏の主張は、「赤字となる企業の法人税収は見込めない」ため、「6兆円程度の税収見積もりは水増し」というものだ。
当時の与謝野財務大臣は、「だからこそ景気対策をしっかりやって、税収を上げたい」といった答弁をしていたと記憶しているが、私も予算委員会室で聴いていて、正直、仙谷氏の方に分のある議論だった。
委員会での仙谷氏の席は私の席の目の前、私は、質問を終わって、仙谷氏が、「(政府の)こんな甘い見通しはいかん。これじゃダメなんだ。」と言いながら自席に戻った姿を鮮明に憶えている。

さて、現在政府の一員である仙谷大臣の主張を了とすれば、民主党政権は、平成21年度の税収見通しすら40兆円程度と見積もっていたということだ。
全世界不況下だ。マイナス5%位は仕方ないとしよう。
21年が40兆円なら、22年は38兆円位。民主党にとっては、当然の想定内のはずだ。
私には今、平成22年度の税収見通しの38兆円を、「想定外の税収減」と言い張る神経が信じられない。

いずれにせよ、公約を勝手に破られては困る。
民主党は、税金などには頼らない財源があると、ずっと主張してきたはずだ。

本年1月28日の衆議院予算委員会、民主党の細野豪志・政調会長代理が、「利用可能な霞ヶ関埋蔵金は98兆円」とブチ上げていた。
このお金をガソリン値下げに使えばいいじゃないか。

民主党のある衆議院議員候補者は、本年8月、取手市での公開討論会で、「天下り・世襲・官僚が食い物にしてきた無駄なカネ、天下り法人への補助金が(毎年)13兆円もあるんですよ。これは全部別の使途に回せるんです。皆さん。」と主張していた。
このおカネをガソリン値下げに使えばいいじゃないか。

権力は、往々にして自分の都合の良い方向に暴走する。
私は、権力の理不尽な公約違反を、このコラムで、徹底的に監視していきたいと思う。