同情されるべきは民主党内の良識派だ~国民投票法案が衆院を通過

2007-4-15

憲法調査特委での答弁

ある町内会に、会長のAさんのほか、B、C、Dさんの3人の役員がいた。
木造の町内会館は、なかなか良くできてはいたが、築後60年を経過、耐震基準を満たしているかも怪しく、事実相当ガタがきていた。
会長のAさんは改築しようとの意見、Bさんは補修増築しようという意見、Cさんも、少なくとも現在の建物に不満を持ってはいた。
そこで、規約に従い、建物の点検・見直しのやり方等を決めることとなり、3人の間で、その内容につきほぼ合意に達していた。
ところが、強面で次期町内会長を狙うCさん、雨漏りしようが地震で倒れようが、今の建物を守るべきと主張するDさんに配慮したのか、もともとのCさんの持論とはいえ、町内会館の隣地を公園として整備すべきと強硬に主張、その約束がなければ建物の点検・見直しを行ってはならないと言い出した。
町内会館のエントランス付近の園地化の検討ならまだしも、公園となると、本当にそれが必要なのか、もっと議論が必要だ。
そこで、A・B両人は、Cさんに対し、公園の件は、今後話し合っていきましょうと持ちかけたが、Cさんは、今約束できなければダメと譲らず、結局、話し合いは決裂してしまった。この場合、常識的に、Cさんは、耐震基準を満たしているかどうかも怪しい町内会館の建物の点検・見直しに消極的だったと言わざるを得ない。
ところが、この後日談では、次期町内会長選挙で、Cさんは、AさんやBさんが、公園の整備の約束をしてくれなかったのが問題で自分は建物の点検・見直しに積極的だったなどという、トンチンカンな主張を言いふらして回ったという。
ただ、このような例は、政治の世界では良くあることのようだ。
実例ではないが、頭の体操として、2つほど例を挙げてみる。

例12つの異なる問題を抱き合わせたサボタージュ

政治家Eは、郵政民営化改革に反対した。
政治家Eに言わせると、「私は郵政民営化に反対ではない。従来から私は、郵政とNHKの同時並行民営化を主張してきた。今回の法案では、NHKの民営化の担保がない。私は、それ故、郵政民営化法案に反対したが、実は私こそが究極の改革派だ。」とのこと。
政治家Eは、本当に郵政改革に賛成なのだろうか。

例2今全部決めろという無理難題のサボタージュ

政治家Fは、米軍移転に関し、これから数年間にわたり、日本政府が一定の負担を行う法案に反対した。
政治家Fは、「私はこの方向性には反対でないが、毎年の負担額が現時点で決まっておらず、今後検討するというのでは、話にならない。そもそも政府与党のいう『検討』は、いつも逃げだ。」という。しかし、次年度以降の負担額を、どうして今決められるのだろう。今は検討するとしか言えないのではないか。しかも、その具体の金額は、毎年の予算委員会でFさん自身が質問してチェックすれば良いだけではないのか。
政治家Fは、本当に、この方向性に賛成なのだろうか。

4月13日、与党提出の憲法改正国民投票法案が、衆議院を通過した。
私も、与党案提出者の1人として、自民・公明・民主3党の幅広い合意が得られなかったことを、大変残念に思うとともに、民主党の小沢代表の、まさに党利党略としか思えない姿勢に、大きな憤りを覚えている。
委員会での採決(12日)前日深夜までの与野党実務者協議では、憲法改正に係る国民投票の手続法については、ほぼ民主党の顔を立て、表現のし振りも含め、合意に達していたという事実がある。
ただし、憲法改正の問題とは全く別の、統治機構や生命倫理などの問題を、直接民主制的国民投票に付すことまで現時点で約束しろと言われても、今後検討するとは言えても、党内の合意も得ていないし議論もしていないのに、制度を必ず作るなどと、言えるはずもないし、そもそも、これらの国民投票は、憲法違反の可能性が強い。
だからこそ、民主党の実務担当者も、法律段階では、町内会館エントランスの園地整備とでもいうべき憲法改正にかかわる一般的国民投票についてのみ書き込むことに同意、他の事項については、今後議論し、検討していこうということになった。

そして、これを翌朝、両党執行部に上げ、最後まで合意を模索したが、民主党執行部の、(私自身は、法案の内容を分かっての発言とは思えないのだが、)「民主党案を一言一句変えてはならない」との一言で、あえなくお釈迦、我々も、相手の党首がああではお付き合いできないと、採決に臨むことを決断したわけだ。

でも、同情されるべきは、民主党内の良識派だ。
国会にも出てこない党首を戴き、実務担当者の国を想う真摯な議論を無視する人を党の代表者とすることを、民主党の心ある方は、どう思っているのだろうか。

4月13日の衆議院本会議、登壇した民主党の枝野憲法調査会長(私は、彼を良識派に属するものと評価している。)は、安倍総理の発言及び今回の採決で、「憲法論議は、15年遅れた」と発言されていたが、私はそうは思っていない。
そもそも、民主党の代表が反対された理由は参議院選挙も睨んだ党利党略。大した定見はないわけで、民主党の体質(独裁?)が変わればすぐに話し合いはできる。
私は、民主党のこの体たらくを、国民の皆様に、しっかりと理解して頂いた上、その体質を変えるためにも、来る参議院選挙で、是非、今の民主党に鉄槌を下して頂くことをお願いしたい。
選挙で民主党の議席を減らすというショック療法を講じて頂くことで、私は、民主党が、今の古い体質から脱皮し、本当に政権を狙うことができる新しい政党に成長されることを期待している。

冒頭の町内会館の話。
町内会長選挙で、Cさんは敗北・引退。
代わりにCさんの奥さんがA・Bさんと話し合い、Dさんにも説明し、約10年後には、もともとの木造建築をベースにした立派な会館が完成する運びとなった。
新しい建物の集会室には、60年前の町内会館建設当時、ある高名な方に揮毫して頂いた、「平和・人権・民主主義」という額が、今でも掲げられているという。