憲法へ姿勢を参院選の判断材料に~「普通の政党」か「モラトリアム政党」かの選択

2007-6-11

「モラトリアム政党」か「普通の政党」かを訴える

6月8日の自民党憲法審議会(中山太郎会長)初会合。
私は、この審議会の事務局次長として、また、憲法改正国民投票法の提出者として、「憲法問題」を、「参院選の争点」としなければならない旨、発言させていただいた。
実は、5月18日公布の「憲法改正国民投票法」は、併せて「国会法」を改正、次の臨時国会から、衆参両院に、憲法改正原案の発議等を担う「憲法審査会」を設置することとしている。
今回の参議院選挙は、参議院憲法審査会の構成を決める、極めて重要な選挙となる。
だからこそ、各政党は、国民に対し、憲法審査会でどのような立場から議論を行おうとするのか、その立場を明らかにし、国民の審判を仰ぐ姿勢が大切ではないか。
参議院で憲法審査会が発足する以上、例えば、「改憲」を目論む政党が、「護憲派」の国民の票を得たいがために、憲法改正に全く触れない公約を作ったとしたら、それはまさに、国民に対する詐欺行為だと思う。また、党内事情で、憲法への立場を明確にできない政党があったとしたら、その政党は、政党を名乗る資格のない「モラトリアム政党」と言われても仕方あるまい。○憲法改正について衆・参両院は全く平等
まず、現行憲法が、憲法改正原案の発議について、衆・参両院に全く平等の権限を与えているということは極めて重要なポイントだ(総理の指名、予算・法律の成立、条約の批准は衆院が優越)。
だからこそ、向こう3年間における「参議院憲法審査会」の運営、すなわち、憲法見直しの方向か、議論先送りの方向かということは、まさに今回の参院選の結果次第だ。
もとより、「参院憲法審査会」では、法施行後3年間は、憲法改正原案の審議が凍結される。しかしその間、現行憲法の各種条項を改正すべきかどうか、必要な調査が行われ、あらあらの合意形成が図られる場面もあろう(法律上は、国民投票法の施行されて3年間を経過した後、憲法審査会における憲法改正原案発議が可能になる)。
もっとも、私自身、国民投票法案の立案過程に加わり、提出者として審議の中で野党の方の攻撃にさらされてきた実感からすると、これはなかなか大変な作業という実感は持ってはいるが、3年間憲法改正原案の発議ができないからといっても、現行憲法を見直す方向から議論するのか、全く変えない方向から議論するのか、議論の方向性は大きくその異なってくるのは、自明の理だ。
私は、だからこそ、この参議院選挙で、各政党は、臨時国会において設置される参議院憲法審査会で、どのような立場をとるのか、国民に判断材料を提供することが、政党としての最低限の良心ではないかと考えている。

○自民党の立場は明確
まず、わが党の立場は明確だ。党綱領にもあるとおり、「改憲」。
一昨年には、現行憲法の基本理念を評価・継承しつつ、必要な改正を施すという、具体的な「新憲法草案」を公にした。
もとより今後の合意形成の過程で、その草案も変わり得るもので、個人的には、「集団的自衛権」などといった具体的な規定の仕振りが、今回の参院選の争点となるとは考えにくいが、いずれにせよ、わが党は、国民投票法案を提案、「憲法を時代に即して改める」立場から、参議院憲法審査会の審議に臨むこととなる。

○公明党の立場も明確
次に、公明党の立場も明確だ。
公明党は、現行憲法の意義を積極的に評価し、これを堅持しつつ、時代の変化に即した新たな条項を付け加える「加憲」という立場をとっている。
家にたとえれば「増築」という説明で、公明党は、「憲法を時代に即して見直す」という立場から、参議院憲法審査会の審議に臨むこととなる。
だからこそ、公明党は、自民党とともに、国民投票法案を共同で提案してきたわけだ。

○共産・社民党の立場も明確
さらに、共産・社民両党の立場も明確だ。
彼らは、現行憲法の「すばらしさ」を強調する「護憲」の立場(もっとも、改憲論者である私も、現行憲法は、おおむね「すばらしい」と思っていることは申し上げておきたい)。
私は、両党の考え方も、1つの見識だと思う。
そして、私どもが提出した国民投票法案に徹底的な論戦を挑み、当初から反対を貫いた両党の態度は、天晴れだったと思う。
だから、共産・社民両党は、「憲法は一言一句いじるべきでない」という立場から、参議院憲法審査会に臨むこととなる。

○良く分からない「モラトリアム政党」?「民主党」
そして民主党、私は、参議院選挙前に、改憲・護憲のどちらでもいいから、国民の前に態度をはっきりさせるべきではないかと思う。
国民投票法案に対する民主党の態度は、この1年間迷走した。
まず、昨年5月、民主党の小沢代表は、自公民3党提案を目指す従来の方針を転換、与党案と民主党の両案が衆議院に提出された。
その後昨年の臨時国会中、憲法調査特別委員会では、民主党の枝野憲法調査会長と我々の間で調整が続けられ、12月には、大筋の合意ができたが、この過程で、小沢代表からは、何の意見もなかったという。
が、突如、今年1月、小沢代表から、例えば皇室典範改正など国政の重要事項について、国民投票ができる法律でなければダメとケチがつく(私は、女系天皇問題等は、人気投票的な国民投票にかける案件というよりも、有識者がしっかり議論すべき問題ではないかと思うが。)。
それでも、4月までに、ギリギリの調整を尽くし、担当者レベルでは合意寸前に至ったが、折衝過程における妥協はまかりならぬと小沢代表が却下。
そして民主党は、国民投票法案への反対を党議決定、顔をつぶされた枝野憲法調査会長は、衆院憲法特の理事を辞任、「しばらく憲法から離れる」と明言する事態となってしまった。
だから今、民主党には、憲法問題の責任者がいない。
しかも、党利党略専門の小沢代表が、憲法についてどう考えているのか、これも全く明らかになっていない。
党内には改憲を目指したい方もいるが、一方で、護憲を掲げる社民・共産の選挙協力を仰ぎたいという希望も分かる。
ただ、だから「あいまい」にしてもいいでは、「責任政党」でなく「モラトリアム政党」だ。
民主党も、少なくとも参議院選挙前に、憲法改正についての民主党の考え方を、公約なりの形で明らかにすることが、国民に対する最低限の礼儀ではないだろうか。