仕分けられるべきは民主党政権そのものだ~失政による財政悪化の責任を誰がとるのか

2011-11-21

誰も責任をとらない民主党政権こそ仕分けられるべきと訴える

11月20日、民主党政権による「事業仕分け」(今回は「提言型仕分け」とのこと)が再開された。
ただ、「行政の無駄をバッタバッタと切り捨てる判定を連発した過去の仕分け。しかし今回は、民主党政権の政策を拘束したくないという配慮から、提言にとどめた。」「仕分け劇場にかつての熱気は感じられない。」(いずれも産経新聞)との報道にもあるように、民主党政権のかつての金看板は、とっくに色あせた感がある。
もっとも、仕分け人たちがいかに汗をかいたとしても、「意図的又は無意識の失政で問題をこじらせる。」→「これを解決するために多額の税金を投入する。」という、民主党政権の高コスト構造が続く限り、財政再建など夢のまた夢だ。
このような観点から、鳩山・菅・野田3政権を振り返ってみよう。

○沖縄問題をこじらせ多額の交付金の上積みへ(鳩山政権)

鳩山政権で想起されるのは、やはり、沖縄(普天間)問題だ。米軍普天間基地の移転先を「最低でも沖縄県外」、「私には腹案がある。」と、自民党政権時代に決まっていた辺野古移転を反故にし、沖縄県民に大きな期待を抱かせた鳩山総理(当時)が、「腹案」(具体的にどのような案だったのか一切明らかになっていない。)を断念し、もとの辺野古移転を内容とする日米共同宣言を行ったのは、政権交代後わずか8か月の平成22年5月だった。
これでは沖縄県民が怒るのは当然だ。
民主党政権は、その後、辺野古移転の同意を沖縄県からとりつけるため、なりふり構わぬ「沖縄振興交付金」の増額に乗り出す。
具体的な金額はまだ確定していないが、その後の野田政権になって、1年間当たり700億円の増額(10年間継続、総額7000億円の税金投入)という県の増額要求をベースに交渉が行われているらしい。
もっとも、それだけのお金を積んでも、沖縄県民が普天間基地の辺野古移転に同意する見通しは立っていない。
そして、多額の交付金を支出しても問題解決の見通しすら立たないという閉塞状況を作った当の鳩山氏本人は、6月2日の内閣不信任案騒ぎでは菅首相(当時)と覚書を交わしてみたり、TPP慎重派の会合に顔を出してみたりと、まことに意気軒昂で、全く責任を感じる風ではない。

○原発被害を拡大させ補償金額を膨らませる(菅政権)

菅政権で想起されるのは、首相自体が「歩く風評被害」と評された原発被害の問題だ。
3月に暫定基準値超えの野菜等が発見されたとき、官房長官が「直ちに健康に被害はない」と発表しているそばから、菅首相(当時)が「出荷禁止」を指示。その後、直接の被害だけでなく、風評被害も拡大の一途をたどった。
原発問題に関する情報と意思決定が官邸という密室に限定され、統一的司令塔もない中、官邸は、肉牛に対し、一旦雨に濡れた稲わらを給餌しないよう通達し忘れるというチョンボを犯す。
3月21日の降雨で、東日本の広範囲で放射性物質を含む飲料水が検出され、大問題となっていたにもかかわらずだ。
その後7月になり、セシウムに汚染された肉牛が問題となり、結局、畜産農家保護のため、国が、「セシウム汚染牛」を全頭買い取ることとなった。
その数3600頭、その費用総額は約860億円だ。
この費用は、まず国が税金から立替払いし、後に東京電力に請求するらしいが、セシウム汚染牛問題を起こした大きな原因が官邸・農水省のチョンボであるだけに、東京電力がすんなり国の請求に応じるとは考えがたく、そのつけは国民に回るおそれが高い。
意思決定の混乱により肉牛への原発被害を拡大させ、税金で穴埋めせざるを得ない状況を作った当時の官邸の主、菅氏本人は、首相退陣後、前総理としては異例の週刊誌からの単独インタビューに応じ、原発事故対応の正当性をとくとくと語るなど、これまた意気軒昂で、全く責任を感じる風ではない。

○勝手な国際公約で円高昂進、対策予算を膨らませる(野田政権)

野田政権は、現在進行形だが、今のところ、増税以外何をしたいのかが見えず、むしろその弊害が気になるところだ。
民主党政権の首脳は、国会での国民向け説明には不熱心なのに、国際会議の場では、べらべらと勝手な公約をしてくる癖がある。
「温室効果ガス25%削減」(鳩山氏)、「ソーラーパネル千万戸」(菅氏)などが挙げられるが、野田首相も早速、「2010年代半ばに消費税10%」と国際公約してしまった。
今、ほとんどの先進国が、財政への不安を抱えている。
夏には、民主・共和両党の対立で米国の財政再建の見通しが不透明化、ドル安が急速に進んだ。
秋に入り、ギリシャ・イタリアの財政悪化で歴史的ユーロ安に振れた。
そして10月には、日本が財政再建に本腰という国際公約を行った途端、案の定、1ドル75円台という超円高をもたらした。
もしも野田首相が国民や国会に対して誠実ならば、「我々は、先の総選挙では消費税上げに反対して政権についた。そして今、参議院では少数与党で、実行力は限定されている。しかし、政権につき、野党時代とは違い、財政再建の必要性に目覚め、何とかしなければと決意するに至った。だからこそ、早期の総選挙を行い、国民の意見を聞いた上、消費税上げに乗り出したい。」と、「正心誠意」諸外国に説明すれば良かった。
諸外国の首脳から拍手喝采は得られないかも知れないが、誠実な姿勢と決意は伝わるだろうし、ストレートな公約でないので、超円高も招かなくてすむ。
しかし、野田首相はそうしなかった。
その結果、10月31日には、外為特別会計から7兆円規模の円売りドル買い介入を実施せざるを得なくなったが、11月21日現在でも1ドルは76円台、全く効果が現れていない。
そして、11月21日に成立した第3次補正予算で、産業空洞化対策として、約5000億円の対策予算を組まざるを得なくなってしまった。
勝手な国際公約で歴史的な円高を自ら招いておいて、対策予算を税金からまかなう、言ってみればマッチポンプではないか。

以上、過去2年数ヶ月の民主党政権について概観してきたが、「意図的又は無意識の失政で問題をこじらせる」→「これを解決するため多額の税金を投入する」という、民主党政権の高コスト構造は、残念ながら、どの政権にも共通しているようだ。
ここまでくると、首相個人の問題と言うよりも民主党という政権党の本質の問題だ。
小手先の「事業仕分け」などよりも、仕分けられるべきは、高コスト構造の民主党政権そのものだ。
それにしても、彼らの失政による財政悪化の責任は、誰がとってくれるのだろう。