北朝鮮への新たな圧力~「人権侵害」からのアプローチ

2006-2-16

2月16日の自民党拉致対策本部。

拉致対策本部で法案骨子を説明

かねてから「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」において、私が主査として検討してきた「北朝鮮人権法案(仮称)」の骨子を説明、条文化作業に入ることの了承を得た。
さらに、その日の夕刻には、シミュレーションチームの山本座長とともに安倍晋三官房長官を訪れ、法案の検討状況を報告した。
いよいよ具体的な作業に入ることになる。
ご案内のように、2月8日閉幕の日朝協議では、北朝鮮側が不誠実な対応に終始、拉致問題の解決に向けた進展は見られなかった。
そして、今、北朝鮮に向けた新たな圧力、強いメッセージの発信を求める世論は、大きな高まりを見せている。
だからこそ、我々国会議員としても、従来よりもさらに一歩踏み出した制度的な対応を模索していかなければならない。
「北朝鮮人権法案(仮称)」は、このような問題意識から、昨年秋以降検討を進めてきたものだ。実は、「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」では、昨年春にも、同名の「北朝鮮人権法案」をとりまとめた。
このときは、どちらかというと、「脱北者支援法」的な色彩が強く、入管法などの国内法との関係の調整が難しかったため、日の目を見なかった経緯がある。

昨年秋以来私が提唱したのは、全く別のアプローチだ。
すなわち、国連において、拉致などの北朝鮮の人権侵害状況の改善を求める決議案が準備されていたことを受け(この決議案は、昨年12月16日、正式の総会決議となった。)、北朝鮮当局による日本国民に対する人権侵害(その最たるものが「拉致」。)に焦点を当て、立法になじむ施策を提示しようということだ。

2月16日に了承を得た北朝鮮人権法案(仮称)の骨子は、次の4つの柱からなる。

第1は、法律の目的。
私たちは、法律のレベルで、北朝鮮による国家的犯罪行為である拉致問題をはじめとした、人権侵害の問題について、広く国民の認識を深め、その実態を解明し、人権侵害の抑止を図ることを明記していきたいと考えている。

第2は、拉致問題などについて国民に啓発することを国及び地方自治体の責務とすること。
その手段として、私は、例えば、12月16日(国連総会決議のあった日)を、「北朝鮮による人権侵害について考える日」として、国民運動を展開し、「絶対に拉致問題を風化させない」という、強いメッセージを発信してはどうかと考えている。
このような施策は、例えば、地方自治体が、朝鮮総連系施設に対する税の優遇問題について考えていく契機にもなろう。

第3は、北朝鮮当局による人権侵害の実態解明と抑止のための施策。
勿論、個々の外交施策、捜査指揮は、立法府でなく、行政・司法に委ねられる。
ただ、私は、国会が、政府に対し、北朝鮮の人権侵害に係る年次報告書の作成と報告などを求めることにより、実態解明と抑止のための施策の推進を促すことが可能になると考えている。
加えて、関係国際機関・外国政府・民間団体との連携なども盛り込むことも、有意義なことではないか。

第4は、北朝鮮当局による人権侵害の改善が図られないと認められたときの措置。
この場合には、現在世論の声も盛り上がっているように、当然のことながら、「新たな圧力」を検討せざるを得ない。
もとより具体的方法の選択は、外交当局の専権事項としても、政府が、「速やかに」、「人権侵害抑止のために必要な措置」をとるべきことは、やはり国民の意思として明示していくべきだろう。
そしてその必要な措置として、当然のことながら、「経済制裁」が想定されることも、やはり明記すべきだ。

拉致問題をはじめとした人権侵害については、決して安易な妥協はあり得ない。
国会議員としての責任を自覚しつつ、粛々と、作業を進めていきたい。