まちを洪水から守る~消防団等のコミュニティ政策を強化せねば

2007-9-18

古戸の排水ポンプ場に出動

今、マスコミは自民党総裁選挙の話題で持ち切りで、私自身も、安倍首相の突然の辞意表明後、バタバタした毎日を送っている
ただ、今日は、その話でなく、9月6日から7日にかけて首都圏に猛威を振るった台風9号のもたらした大雨による利根川の増水に、私が所属する取手市消防団第6分団がどう対応したか書きながら、消防団等を支援する政策の必要性について書いてみたい。
私の分団では、団員への連絡は、携帯メールが利用される。そのメールで、消防署から、排水機(排水ポンプ)場への出動・泊まり込みが必要になるかも知れないので、待機して欲しい旨の連絡があったのは、台風が上陸する数時間前の9月6日18:02。
国会対策委員会の会合が夕刻まで延び、まだ私が、東京にいる時間帯だった。利根川は、日本を代表する河川で、その堤防は極めて堅牢、決壊の可能性は非常に低い。
それなのに、利根川が増水すると、何故「排水機(排水ポンプ)場」というところに、消防団員が泊まり込まなければならないのか。
これは、「内水」の問題があるからだ。

取手市の雨水や生活排水は、利根川が通常の水位の場合、堤防の下に設置された樋管という管により、利根川に排水される。
しかし、利根川が増水すると、この樋管を通じて川の水が市内に逆流、洪水の可能性があるため、水門を閉めることになる(図)。

市民生活を守る排水ポンプのメカニズム

そうすると、雨水や生活排水は、堤防直近にある貯水池に、排水されないまま貯まるだけになってしまい、これが溢れると、いわゆる「内水による洪水」を引き起こすことになる。
このため、水門が閉まっている間は、貯水池に貯まった「内水」を、水位を見ながら、数時間おきに、ポンプにより、強制的に利根川側に排出(排水)することが必要になってくる。
これには、当然、24時間体制での監視が要求される。

我が取手市消防団第6分団は、その排水ポンプ場の1つ、取手市中央タウンにある「古戸排水機場」の管理を任されている。
だから、利根川増水時には、24時間体制での監視のため、団員が分担して監視に当たり、交替で泊まり込まなければならない(タイルの床に臨時で畳を敷き、何人かでザコ寝する。)。
しかも、「内水」が溢れた場合に被害に遭う可能性のある取手市中央タウンは、1500戸の大所帯、雨が降らなくても、生活排水が結構多く、ポンプの稼働回数も頻繁だ。

私の水防活動への対応は次の通り。
9月7日9:00、前日からの増水により水門閉鎖。
私は、午前中に地元行事が入っており、これを切り上げて13:00過ぎに機場へ。機場での待機の時間等を打ち合わせた後、夜まで地元での会合、その後機場に戻り22:00頃まで待機。
9月8日は、朝から取手市内各中学校の運動会。14:00頃まで地元予定をこなした後、前日の打ち合わせの通り、夕刻から23:00頃まで機場で待機(途中、操法大会訓練)。
9月9日は、やはり地元行事の後、16:00頃機場へ。利根川の水位が下がりつつあったため、夜の撤収に向け、掃除・片づけを行う。その後21:30頃まで待機・操法大会訓練。
この日、水門閉鎖の解除・撤収は、22:00頃だった。

6年前の大増水のときは、私も何泊かした。
しかし今は、土日も早朝から行事が入ることが多くなり、他の団員に申し訳ないが、団員としては、夕刻から深夜近くまでの待機(この時間は、泊まり込み要員が夕食に出るため、その留守を守ることになる。)しかできず、本当に心苦しく思っている。

最後に、消防団について、2つのことを書く。
1つは、今述べたような活動が、当の取手市の住民にも、余り認知されていないということだ。これでは消防(水防)団員、ガクッときてしまう。
住民からすれば無理もないことだが、団服を着て外で警戒していると、消防署員や市の職員と間違われて、苦情や要望が寄せられることも多い。説明すれば分かるが、多くの人は、民間人であり、仕事も持っている消防団員がここにいることを知らない。
そして、何故消防団員が古戸の排水ポンプ場にザコ寝しているのか、それがなければ洪水になってしまうということも、ほとんどの人は理解していない。

2つは、圧倒的な団員の不足だ。
私も、ヒラ団員として、国会開会中の平日は無理でも、土日は、水防出動、操法大会訓練、さらには夜回り、そして宴会にはできるだけ出るようにしているが(宴会以外は団服)、緊急時に対応できず、機場への泊まり込みができないなど、他の団員には本当に申し訳なく思っている。
それでも、「団を辞めないで欲しい」と言われているのは、私の人徳(?)の故でなく、団員の不足によるところが大きい。
取手市消防団第6分団は、取手市白山・中央タウン・関鉄ニュータウンを受け持ち、その戸数は4000戸超に達する。
それなのに、実員は、私を含めて12人しかいない(定員15)。新入団員がいなさすぎる。そして、私もなかなか辞められない。
でも私は、今の日本人が、公益的な活動に全く興味を失ってしまったとは思えない。誘えば理解してくれる若者も多いはずだ。
実際上のネックは、団員を勧誘しようにも、学校も、市役所も、個人情報保護法とかで、適齢期の若者がどこに住んでいるか全然教えてくれないことも大きいようだ。これでは勧誘のしようがない。

消防団は今、その活動を国民に知ってもらえず、しかも、個人情報保護法といった壁で、何の情報も知ることができないという、危機的な状況にある。全国の団員数も、ピーク時の200万人から、90万人に減ってしまった。

現在私は、自民党地方行政調査会事務局長として、この危機的状況を打破するため、消防団などの地域に根ざしたコミュニティと行政との連携を本来業務と位置づけるなどの「コミュニティ基本法(仮称)」の策定作業を進めているが、今回の経験は、まさにその必要性を肌で感じ取る貴重なものだった。