第169国会が閉幕~「今の民主党が政権につけば国が滅びる」ことを実感

2008-6-21

河野洋平衆議院議長の所感

6月20日、第169通常国会が、事実上閉幕した。
今国会は、昨年の8月からの臨時国会の閉幕直後に召集されたため、国会対策副委員長である私も、約300日間、ぶっ通しで国会に缶詰になってきた。
国会対策の最前線にいて、改めて疑問に思ったことは、今の民主党が、どこまで国民のことを考えているのかということだ。
私は、わが国がこれからも輝かしい歴史を創りつづけるためには、「健全な政権交代」は、むしろ必要なことと考えてきた。
だからこそ、衆議院憲法調査会・憲法調査特別委員会の場でも、

○「自民党が未来永劫政権の座にあるとは考えていない」
○「健全な政権交代のためには、国の姿の根幹は変わらないという共通認識が必要」
などの趣旨の発言を敢えて繰り返してきた。
しかし、今私は、「(まともにできないかも知れないけど)1度やらせてみたら」といった甘言に騙されて、「今の民主党に政権を委ねること」は、決して健全な政権交代ではなく、それこそ「日本国民の自殺行為」だと確信している。
国会運営と政策の両面から、2つほど実例を挙げてみたい。(「腹いせ」?で約20億円の税金のムダ使い)

「刑事被告人尋問TV中継」も強行採決

今国会は、最終盤になり、6月21日まで、6日間の会期延長を行った。
理由は、「日本とアセアン(東南アジア諸国連合)の経済連携協定」等の条約を自然成立(自然成立のためには衆院可決後30日の時点で国会が開会されている必要があり、これが6月21日に当たる。)させるためだ。
でも、そもそもこれらの条約、衆議院段階では民主党も賛成していたもので、参議院で議了するのは簡単なことなのに、何故店晒しにされ、会期延長までせざるを得なかったのだろうか。

理由は簡単。
5月中旬以降、参議院の外交防衛委員会が、民主党の北沢委員長の意向で、法案、条約を含め、一切の審議を止めてしまったからだ。
そして、何故審議が止まったか?
理由は良く分からない。民主党の北沢委員長の「腹いせ」ではないかと疑いたくなる位だ。

実は、5月14日、現在汚職事件の刑事裁判にかけられている宮崎元伸被告(元山田洋行専務)の証人喚問が実施された。
この証人喚問自体には、自民・公明も賛成していたが、ここで北沢委員長、突如、「TV中継をしたい。」と言い出した。
ところが相手は刑事被告人、「被告人の人権」などの観点から、裁判所の法廷では、規定上、TV中継どころか写真撮影もできない。
強制力のある証人喚問の場で、刑事被告人への尋問のTV中継を行うことについては(勿論前例もない)、裁判の公開の問題と併せて判断すべきで、軽々に決められるはずもない問題だ。
自公両党は、与党である前に人間の常識の問題として、そんな急に言われても、TV中継には慎重にならざるを得ないと回答した。
そこで民主党、それなら「強行採決」をしてやろうということで、自公両党が退席する中、委員会で、「TV中継許可」を強行議決。
ただ、TV中継を求められたNHKも、その良識に基づき、委員会の議決に唯々諾々と応ずることはせず、5月14日は、いわくつきの「証人喚問」を中継せず、別の番組を放送することとした。

ただ、TV中継がなかったことに、民主党の北沢委員長が何故か立腹、その後「委員会(委員長の間違いではと言う方もいる)が不正常」との理由で、委員長自身が、一切の委員会開会を拒否、今回の6日間の会期延長となってしまった。
2007年9月19日放送のTV朝日「スーパーモーニング」によれば、国会開会中は1日当たり3億円の税金がかかるということ。
その試算に基づけば、今回の会期延長で18億円の血税が消えた。これは、今、「居酒屋タクシー」で批判を浴びている財務省の役人が、1年間を通じて使うタクシー券代のおよそ3倍という、とてつもない金額が、ムダに支出されたことになる。。
他の実例を挙げれば枚挙にいとまないが、民主党の国会運営はことほど左様、昨年からの10カ月、怒りを通り越して、驚き、呆れ、同じ政治家として、悲しくなることの連続だった。

(「枯葉を金に変える詐術」で20兆円を捻出?)

国会運営だけでなく、民主党、やはり政策面も怪しい。
昨年の参院選後、民主党が国民に提示した政策は、まあ、例外なく「アメ玉作戦」だ。
私も、ガソリンは安くなって欲しい、年金は多く貰いたい、税金は少ない方がいい。でもそれでは国民生活は破綻する。
民主党の「アメ玉政策」とその必要額を列挙すると、
・満額の基礎年金(月6.6万)を全員に支給6.3兆円
・中学修了まで月2.6万の子ども手当を支給5.6兆円
・高校・大学等を無償化3.5兆円
・農業の「戸別」補償制度を創設1兆円
・中小企業対策1.4兆円
・高速道路を無料化1.5兆円
・ガソリン税等の暫定税率撤廃2.6兆円
・その他の緊急経済対策3.5兆円
と、計25.4兆円の「アメ玉」が並んでいる。
しかも、これらの支出は、毎年の支出を伴う「アメ玉」だから、例えば10年間のスパンでは、254兆円の支出増を伴う。
これを、民主党は、
○現在数十兆円あるはずの「霞ヶ関埋蔵金」
○税金のムダ使いの排除
で賄うと言っているが、これは明かな「詐欺」、国民を欺く主張だ。

まず、「霞ヶ関埋蔵金」については、これはいわばヘソクリの類。私たちも精査したが、確かに10兆円程度のヘソクリがあり、その有効活用を行わせることとしているが、とても10年で254兆円の支出増を賄えるものではない。

さらに、「税金のムダ使い排除」で、いくら捻出できるか。
もとより、「税金のムダ使い」は、絶対に撲滅すべきだ。ただ、それで毎年25兆円強(税収の半分)が節約できるというのは、明らかに国民を欺く甘言だ。
「税金のムダ」をなくす究極の方法は、公務員(旧特殊法人の役職員を含む。)を全てをクビにすればよい。それなら彼らはタクシーも使わないし、天下りも官製談合もしないはずだ。
ただし、これで浮くのは、年間5.4兆円、まあ、これが上限だろう。

とすると、民主党の「アメ玉政策」を実行するには、どう考えても、年間20兆円程度をどこからか持ってこなければならない。
まあ、小沢さんもゼネコン・福田組の姻戚だし、鳩山さんも大金持ちで、私財を投じてなんとかされか、民主党は、「枯葉をお金に変える詐術」を持っているのかも知れないが、いずれにせよ、私のような電車通勤代議士とは感覚が違うようだ。
そして、やはり、毎年20兆円というお金が、増税もせず、あたかも天から降ってくるような主張をする(結局はお札を刷るか国債を増発するしかない)政党が政権を担ってしまったら、わが国の国民は、財務省印刷がはお札を増刷してハイパーインフレ、物価は暴騰、円は暴落、国債も暴落、金融資産に頼るお年寄りは希望を失うという、最悪のシナリオを覚悟せざるを得ないのではなかろうか。
与野党含め、政治家である以上、「アメ玉」と偽って、国民に「毒饅頭」を食わせてはならない。

(自民党がしっかりしなければならない)

最近、民主党の前原前代表が、今の民主党の政策の「ひどさ」を告発しているが、このことは、前原代議士自身の政治的良心のなせるわざだと思う。
ただ、自民党が、民主党のことを批判するだけではダメだ。
民主党の「ひどさ」を国民に理解して頂いた上で、私は、やはり、自民党自身がしっかりしなければならないと考えている。
6月19日、首相官邸で、我々当選2期生と福田総理との懇談会が開催された折、私は、福田総理に対し、次のように申し上げた。
「民主党の無責任には、怒りを通れ越して呆れかえっています。
ただ、現在、食料の高騰、燃油の高騰等、全世界的に人々の生活は苦しくなり、フラストレーションがたまっています。
もとより民主党のような『幻想のアメ玉』はバラマケません。
でも、改革の旗を降ろすことなく、自民党として、政府として、最大限の丁寧さをもって、『今の苦しみは分かるよ、何とかするよ』というメッセージを発し、国民の不安感を解消していかなければなりません。」

「刑事被告人尋問TV中継」も強行採決