大切なのは「国民の生活」でなく「議員たちの生活」?~経済失政民主党の代表選挙に思う

2010-8-24

菅政権は一体何をしたいのか・辻立ちでの訴え

現在、永田町の政局は、9月1日告示、9月14日投開票の民主党の代表選挙を軸に動いており、連日の報道も、小沢前民主党幹事長の出馬観測などを巡り、何かとかまびすしい。
ただ、永田町こそお祭り騒ぎの様相を呈しているが、国民生活に直結する日本経済の方は、その先行きは極めて混沌としている。
8月24日の日経平均株価は、年初来最安値を更新、平均株価も遂に9000円を割り込んでしまった。
また、1ドル70円台への突入も囁かれる超円高で、昨年来唯一GDPを押し上げてきた輸出産業も大打撃だ。
しかも、本年後半にはエコカー補助金など、麻生(前・前)政権が打った景気対策も終了し国内自動車販売の前年比3割減が予測されるなど、国民生活の先行きに明るい話題がほとんどない。
このような中、民主党代表選は、国民生活第1の政策で戦われるのかと思ったが、どうもそうではなく、「誰が代表になれば、衆院解散を先送りできるのか」ということが焦点になっているようだ。8月23日午前、菅総理は、民主党当選1回生議員との懇談会を開き、「衆院選挙は、3年後の衆参ダブル選挙でやればいい」などと述べたという。
これは、民主党議員の中には、選挙基盤の脆弱な1回生議員を中心に、早期解散を忌避する空気が強いため、代表選挙での支持を拡大するための思惑からの発言と報じられており、さらに、菅陣営からは、閣僚らから、「総理を換えたら早期に総選挙になる」といった1回生議員への「ブラフ」的な発言も行われているということだ。

さて、対抗する反菅陣営。
候補者を出すことができるかどうかはなお流動的だが、8月23日、山岡民主党副代表がやはり民主党の1回生議員と懇談した後、「今回の参院選で多数を獲得し、菅政権にレッドカードを突きつけた野党は、菅さんとは組めない。早期解散に追い込まれることとなる。」などと述べ、小沢氏を担げば、野党の中でも、特に公明党・みんなの党との連携を模索することで衆院選先延ばしを図ることができるという展望をにじませたと報道された。

しかし、民主党が政権にしがみつきたいという気持ちは良く分かるが、これだけ日本経済をおかしくしておいて、本当に彼らで良いのだろうか。

平成20年のリーマンショック後、全世界は「100年に1度」と言われた同時不況に陥った。
世界各国は、臨時的な財政出動による景気刺激策を行い、昨年秋口、世界的には、景気は底を打ったかに見えた。
わが国も、臨時の政府支出(国際競争力向上などのための政府による投資)やエコカー補助金・エコポイントなどの施策を実施することで、景気の下支えを行ったわけだ。
そして、世界の中でもいち早く好調な経済を回復した中国に対する輸出増などに支えられ、平成21年後半から、GDP成長率もようやくプラスに転じることとなった。

ところが、本年4月以降の日本のGDP成長率は一気に減速、しかも昨今の超株安、超円高で、世界の中でわが国だけが不況の中に取り残される危険性も、現実のものとなってきた。
だからこそ私たちは、最近のわが国政府が、間違った政策を行ってこなかったのかどうか、しっかりと検証することこそが必要だ。

結論から言えば、昨今の経済危機は、民主党政権の誤った政策による人為的な危機という側面が大きい。

具体的論点については、今後折に触れて書いていきたいが、現政権の経済政策は、経済理論を無視し、選挙理論だけを重視しており、さらに、機動性にも欠け、将来的な展望もないという印象だ。

昨年秋、麻生内閣が編成した景気対策のための補正予算のうち、執行未済の3兆円を丸々執行停止にし、景気対策としては効果の薄いバラマキ支出の財源としたあたりから、私はおかしいと思っていた。
これでは政府自らが景気回復を遅らせようと考えているとしか思えない。

平成22年度予算でも、公共事業などの政府投資を大幅に減らし、「こども手当」てなどに充てたが、「こども手当」ての6割くらいは消費に回るから経済効果もあるという甘い目論見は見事にはずれ、現実には7割が貯蓄に回り、以前よりもお金が世の中に回らないことになってしまった。

私などは、民主党は、バラマキ政策は誤りでした、財源の見通しもウソをついてごめんなさいと国民に土下座して謝るべきと思う。
しかし、民主党の1部には、バラマキ政策をそのままにして、さらに赤字国債を発行することで景気対策を行うべきなどという極めて無責任な主張もあるようで、常識を疑わざるを得ない。

そんなことをすれば、毎年の税収30数兆円に対し、50兆円以上の赤字国債を発行し続けなければならなくなる。
そんなことをしたら、詳しくはまた別の機会で述べたいが、外国から日本政府が持ちこたえると見られているうちは円高、日本政府が破綻すると見られた途端に金利高(国債暴落)で、危機の克服にはつながらない。
いずれにせよ、国民生活は壊滅的な打撃を受けるだろう。

昨年の総選挙で、民主党は、「景気安定実現のため政権交代」と訴えていたが、この1年を見ると、「政権安定実現のため景気後退」の方が正しかったということではないかと勘ぐりたくなる。
約束したことと実行していることがこれほど乖離していては、民間企業なら辞職・馘首ものだ。

それでも、1日でも長く議員でいたいという議員心理をついて戦われる今回の民主党代表選挙。
彼らにとって大切なのは「国民の生活」でなく「議員たちの生活」ということか。